あきらが用具委員会に入ってからはや一週間が経った。
最初は何となくぎこちなかったが、作業して
いるうちに慣れてきたのか、段々と打ち解けるようになった。

「あきらあれとってくんねぇか」

留三郎は手が離せないらしくあきらに頼むと、あきらは言われた通りに渡した。

「はい」
「おっ、サンキュ」

引き続き、作業する二人を見ながら作兵衛は不思議に思った。
(今の…食満先輩は具体的に名称言わなかった
のに、あきらさんは何で分かったんだろう？
まぐれかな……)


そんな仲良く委員会活動している用具委員会を物陰から見ている者がいた。
観察していると思われる人物は一旦離れ、向かった先は6年長屋だった。
「どうだった」
仙蔵が帰ってくると文次郎が聞いた。
「あれは駄目だな、完全に心を許している、
天女にほだされたようだな」
留三郎が天女に落ちたと見解を述べると皆沈黙した。

「ところでお前達、天女のことをどう思う」
仙蔵が聞くと、小平太が答えた。
「それなんだけど、私的にはかわいくないと思う」
「いや、小平太そういう事ではなく」
仙蔵が制止しようとすると
「うーん、僕は普通に美人だと思うけどなあ」と伊作が反応した。
「それは私も思う、けど、タイプじゃないっていうか…文次郎はどう？」
「どうって…そういえば、最近あまり笑わないな、最初の頃はニコニコしてたのに」
文次郎が思い返すと仙蔵が答えた。
「それは多分愛想笑いだ。大方取り入る為に
してたのだろうな」
「でも、それってさ、普通続けない？
途中からやめたら意味ないと思うけど…」
伊作は疑問に思った。
「……もそ……おそらく笑うのに疲れたのではないか………」

長次の指摘通りあきらは少しでも警戒を解こうとなるべく笑顔でいたのだが、元からあまり笑う事が少なく気を抜くと真顔に戻ってしまう。
実際、用具委員会にいるとつい昔に戻った感じがして無表情になる事がしばしばあった。
決して冷たいというわけではないが感情の起伏が少なく周りと話していてもたびたび真顔になってしまい怒っているのかと聞かれる事があった。（本人は怒ってはいないのだが）
怒る時は怒るし笑う事が全くないわけでもないので感情がないという事ではないが勘違いされやすいのには変わらない。