留三郎たち上級生は天女への仕返しの計画を話し合っていた。

「……というわけで、今から天女にやる贈り物を買いにいくぞ」

「はぁ？何でだよ仙蔵？」

文次郎は怪訝な顔をした。

「今のところ天女は留三郎以外の男には興味を示していないようだが、どうせ我々にチヤホヤされたいのは目に見えている。贈り物でもすればすぐに本性を出すだろう。」

「なるほど……」


(作兵衛たちに今日委員会出れねぇって伝えなきゃな……)

そう思った留三郎は作兵衛たちの所に行った。

「えぇー！今日食満留三郎先輩委員会来られないんですかぁ？」

「そうなんだよ、今から町に行ってくるから、作兵衛しんべえたちの事よろしくな」

「分かりました」

そして留三郎たちは町に出掛けていった。

あきらは掃き掃除をしていると、塀の修補をしている用具委員会を
見かけた。
しかし用具委員会の中には委員長である留三郎だけが居なかった。
任務か何かで席を外しているのだろう。
(留三郎がいないけど、下級生だけじゃあの修補は少し危険だ……)

ちらちらと見ていたあきらだが心配だった為
ついしんべえたちに話し掛けてしまった。


「こんにちは、今から修補するの？」

あきらが話しかけると作兵衛は露骨にイヤな顔をし、しんべえたちは怯えた。

「……天女さまが何の御用でしょうか？食満先輩なら出掛けられたので、どっか行ってくれませんか？作業の邪魔です」

「そっか、留三郎が出掛けたとなると、修補も大変だね……じゃあ、留三郎の代わりにあたしが手伝うよ」

「はぁ？なに言ってるんですか、呑気に暮らしてた天女さまなんかが出来るわけないじゃないですか」

「こ、こう見えても私昔用具委員やってたから、修補とか出来るよ？」
あきらは胸を張って役に立つはずだと作兵衛に伝えた。

(ただし前世の事だけど……まぁ、嘘は言ってないし…)

作兵衛は疑っていたが、ため息をついた。
逆らう方が面倒だと思い折れたのだ。
「そんなに自信がお有りでしたら、どうぞお好きに。」

「ありがとう、作兵衛」

あきらはすぐに作業を開始した。
前世とはいえ長年用具委員をしていたからか苦労する事もなく
作業はすんなりとうまくいった。
作兵衛は後ろから見ていたが、みるみるうちに修補されていく塀を見て、目を見開く。

(こんなに天女さまが上手いんなんて思わなかった……)

「作兵衛、そこの道具取ってくれる？」

「あ、はい！先輩」

(あれ、何で俺天女のこと先輩って呼んだんだ？)

そう考えた作兵衛だったが、あきらが次は穴を埋めようと言ってきたため、何を思ったのか忘れてしまった。

作業を続けていくうちにあきらと作兵衛たちは打ち解けあっていった。

「もう、僕お腹ペコペコで動けないー」

そんなしんべえを見て、あきらは苦笑した。

「じゃあ、食堂のおばちゃんに何かお菓子作ってもらえるかどうか聞いてみよっか？」

そうしてあきらたちは食堂へと向かった。



その様子を遠くから見ていたシナ先生は他の先生に話しかけられた。

「シナ先生どうされましたか？一瞬ボーッとしていたように見えましたが……」

「いえ、何でもないんですが、一瞬……一瞬だけ天女さまが着ている服が忍び装束に見えたんです……」

シナ先生は不思議そうに生徒達を眺めた。