翌週、退院した千空はいつも通り学校に通った。
科学部の部員からは心配されたがいつも通りの千空を見て安心したのかいつもの科学部に戻った、あきらに関する点を除けばだが。
クロムからだいたいの事を聞いていた他部員達はなるべく話題を出さないようにし、千空もそれに勘づくも気づかない振りをした。
そんなこんなで日常が繰り返されたが千空はとある事が引っ掛かっていた。
あきらだ。
初日以来見舞いに来ず学校で顔を合わそうになった途端踵を返してどこかに行ってしまう為まともに会話すら出来ていない。
まるで他人行儀だ、いや、千空は忘れているので他人扱いが正しいのかもしれないが。
とにかく避けられている。
原因は千空にあるのだが、当の本人は避けられる度に心が何故か痛みだした事に疑問を抱いた。


科学室から出ると視界の端に人影が映った。
その人影はあきらだった。
あきらは千空が科学室から出てくるのに気づくとまたもや走っていった。
おいかけようとしたが走って追い付けるわけでもなし千空はあきらがいた空間をただ見つめた。
「……何やってんだ、俺は」。
そもそも記憶を失って突き放したのは自分なのにこの行動は矛盾している、と自嘲するように呟いた。