短編夢
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「男を惚れさす為にはまず胃袋を掴むべし……」
あきらは本を眺めふむふむと頷いた。
なるほど、胃袋を掴むと。
この本によれば手料理を披露しその美味足るご飯で胃袋を掴み好きな相手にアタックしろ、と要約するとそう書いてあった。
手料理を振る舞う事によってどう相手を振り向かせるかは正直分からないが、まぁこう書いてあるし不思議な力が働くのだろう。
となれば早速調理に取りかかろうと思いまずは材料の調達へとスーパーへと向かったのだが偶然その道中にその相手と出会った。
「あれ、石神くん」
「五十嵐じゃねぇか」
同じクラスメイトである千空とは今年になって知り合った仲であり席が近い事から時折会話するようになった間柄だ。
「……買い物か?」
買い物袋を見た千空にきかれあきらは肯定した。
「そう、ちょうどお昼ごはんの材料を買おうと思ってー」
とそこであきらははっ、と気づいた。
ここでさりげなく好物を聞いとけば更に効果は高まるのでは?
「あ、あのさ、石神くんって好きな料理とかある?」
「は??」
突然質問を投げられた千空は急になんだと片眉を上げた。
「え、えっと、私はハンバーグが好きなんだけどね、その……きょ、今日はハンバーグにしようかな!なんて……」
我ながら雑な誤魔化し方だなと冷や汗をかく。
「……ラーメン」
「ラーメン……ら、ラーメンも美味しいけど
他に好きなやつとかないの?」
「別にねぇな、まぁ、何でも食えるっちゃあ食えるけどな」
ラーメンって言えば家で作れるのなんてインスタントラーメンくらいしか思い付かない。
多少アレンジは利くと思うけどそれを自信満々に出せるかと言ったら否だ。
困った、と思案していると千空が声をかけてきた。
「この近くに通ってるラーメン店があるんだが……
昼飯まだだったよな、食いに行くか?」
あきらはちらりと腕時計の針を確認した。
今から材料を買って作るとなるとだいぶお昼の時間をすぎてしまうだろう。
「そのお店のラーメン美味しい?」
「“ああ、名店中の名店だ
昔から親父と通ってた店でな
味はお墨付きだ」
あれだけ自信満々に言われたら味が気になるところだ。
作る料理をラーメンにするかはともかく彼のおすすめするラーメンを食べるのもいいかと承諾した。
千空に着いていきラーメン店にたどり着くとあたりにはいい匂いが立ち込めていた。
空いていたカウンター席に座ると店員が千空に話しかけた。
「おっ、兄ちゃん、ついに彼女連れてくるようになったか!!!」
「は?ただのダチだ」
千空は、いつもの、とメニューも言わずにそっぽを向いてしまった。
店員はと言うとからかって悪かった、とへらへら笑って醤油ラーメン一丁!と声を大きく張って言った。
千空は通いつめていると言っていたが……
常連だから顔を覚えられてるのか。
「っと五十嵐は初めてだったな
さっき俺が頼んだのはシンプルな醤油ラーメンだ
他に塩ラーメン等もあるが……どうする?」
「うーーん、じゃあ石神くんと同じの頼む」
他のラーメンも気になったがまずは彼が食べなれていると言う醤油ラーメンを食べる事にした。
ほどなくして両者共に同じタイミングでラーメンが運ばれてきた。
ふわりと香る匂いが食欲を煽った。
「「いただきます」」
手を合わせてから割りばしをぱきりと割ってラーメンに滑らす。
あんな美味しそうなラーメンを前にしてはもう麺を冷ますという行為すらもどかしい、箸で麺をすくい一気に啜った。
「おいしい……」
ラーメン好きな彼がおすすめする理由が分かったがした。
スープが黒くくどいかと思いきやすっきりした味わいの中にコクがあって……
味に唸っていると千空がニヤニヤしていた。
「うめぇだろ」
「うん……!!めっちゃ美味しい!
チャーシューも美味しいし……
あ、あと、メンマも美味しい……」
メンマといえばトッピングのイメージがあってあくまでも付属品と思ってたんだけどこのメンマはそれに引けをとらないくらい美味だ。
あと形がよく見る形とは違うような……
「あーー、それな
たぶんここはメンマ作ってるからだな」
「え、じ、自作??」
「つか、そもそもメンマって何か知らねぇだろ」
千空によればメンマ、別名シナチクというのらしいのだがタケノコを乳酸発酵させた加工品らしい。
「へーーメンマってタケノコだったんだ……」
「まぁ、メンマ自作してない店もあるがな」
麺やスープだけではなくメンマも手作りするなんてラーメンの世界は奥深いなあと思いつつラーメンを啜っているとあっという間に完食してしまった。
ごちそうさまと再び手を合わすと既に千空は食べ終わっていた。
「って、石神くん、スープ全部飲んだの……!?」
「“あ?ああ、そうか、ふつーは全部飲まないもんな」
全部はさすがに体に悪いのでは……とちょっと心配だ。
「悪いっつーのは分かる
が、やっぱ飲み干しちまうんだな……」
千空はぶつぶつと癖が……とかスープが旨いから……と言っていた。
食べ終わったので会計をしようとしたところ、何と千空が二人分も支払うと言った。
流石に奢られるのは悪いと言ったのだが、こっちから誘ったから俺が払うと言って結局奢られる事になってしまった。
「ごめんね、石神くん」
「“あ?だからいいっつってんだろ」
千空は頑なにお金を受け取ろうとせずあきらは諦めその代わり手料理を振る舞おうと心に決めた。
「ねぇ、石神くん
やっぱりあの店のラーメンって思い入れある?」
「……まぁな、他にも旨い店はあるが
やっぱここが一番だな」
千空はくるりと振り返って先ほど出てきた店を眺めた。
何を思っているのかは分からないがたぶん父親との思い出を振り返っているのだろう。
千空はその理由を多くは語らなかった。
が、表情を見て気づいた。
味も理由の一つだろうけど、それよりも。
きっと父親との思い出もあるんだろうなと納得した。
ならば作る料理は決まった。
「石神くん、ちょっといいかな?頼みがあるんだけど……」
「なんだ、五十嵐」
化学室で実験をしていた千空は手を止めた。
五十嵐は千空を人気のない所に誘導し深呼吸をした。
「単刀直入に言います」
「……あ、ああ」
こんな人気のないところに連れてきて何かあるとは予想してたが、まさかと千空は心臓を高鳴らせた。
「石神くんに私の手料理を食べてほしい!です!」
「は???」
予想していた答えとあまりにも食い違うので千空はすっとんきょうな声をあげてしまった。
「手料理って……なんだ急に」
「え、えっと……さ、最近ある料理研究してて……
石神くんとは時々勉強見てもらってるから、そのお礼に……なんて駄目かな?」
「別に駄目なんて一言も言ってねぇ」
「……!!本当!?
じゃあ次の日曜日はどう??」
そう聞くと千空は軽くああと頷いた。
当日千空はあきらの住むマンションまで来ていた。
あの日から数日千空は脳内で議論を繰り広げていた。
(手料理……何が出てくる?
世間的には肉じゃが、ハンバーグ、カレー……
が候補に上がるか……
いや、待て、簡単なやつ以外の可能性もあるな)
あきらは普段から料理すると聞いていたが一体何を作るのか。
千空は意外にもこの状況に若干浮かれていたのだが本人はまだ気づいていない。
恐る恐るチャイムを押すとパタパタと足音がしてあきらが出てきた。
「いらっしゃい、石神くん」
「……おう」
調理中だったのかあきらはエプロンをつけていた。
その姿を見ると千空は何故だか胸がうずうずしてしまいエプロンから目線をそらした。
「ちょうど準備してたとこなの」
「そりゃいい」
リビングに着くととりあえず準備するから座って待っててとの事なので千空は椅子に座った。
さて、何が来るか、千空は期待を胸に抱いていた。
「はい!召し上がれ!」
おまちどおさま!と共に出てきたのは。
千空が好きな醤油ラーメンだった。
「……ラーメン」
まごうなきラーメン。
「あれ……?ラーメン好きって言ってたよね……?」
「いや、まぁ、一番好きだけどよ」
まさか手料理でラーメンが出てくるとは思わないだろう。
(まさか……インスタント……?)
インスタントを元にアレンジするのはありだが……
(つうか食べねぇと伸びちまうな)
ラーメンが出てきた事に驚いたが手をつけないわけにはいかないだろう。
麺を啜ると千空は目を見開いて気がつくとあっという間に完食していた。
「これ……本当にお前が作ったのか?」
「石神くん、ラーメン好きって言ってたから頑張ったの
お店の味とは程遠いと思うけど……」
「んな事気にすることねぇ
ラーメンうまかったわ、ありがとな五十嵐」
あきらは良かった、と嬉しそうに微笑んだ。
「ところで五十嵐」
皿を片付けようとしたあきらに千空が声をかけた。
「替え玉いいか?」
「……うん!替え玉一丁ね!」
あきらは本を眺めふむふむと頷いた。
なるほど、胃袋を掴むと。
この本によれば手料理を披露しその美味足るご飯で胃袋を掴み好きな相手にアタックしろ、と要約するとそう書いてあった。
手料理を振る舞う事によってどう相手を振り向かせるかは正直分からないが、まぁこう書いてあるし不思議な力が働くのだろう。
となれば早速調理に取りかかろうと思いまずは材料の調達へとスーパーへと向かったのだが偶然その道中にその相手と出会った。
「あれ、石神くん」
「五十嵐じゃねぇか」
同じクラスメイトである千空とは今年になって知り合った仲であり席が近い事から時折会話するようになった間柄だ。
「……買い物か?」
買い物袋を見た千空にきかれあきらは肯定した。
「そう、ちょうどお昼ごはんの材料を買おうと思ってー」
とそこであきらははっ、と気づいた。
ここでさりげなく好物を聞いとけば更に効果は高まるのでは?
「あ、あのさ、石神くんって好きな料理とかある?」
「は??」
突然質問を投げられた千空は急になんだと片眉を上げた。
「え、えっと、私はハンバーグが好きなんだけどね、その……きょ、今日はハンバーグにしようかな!なんて……」
我ながら雑な誤魔化し方だなと冷や汗をかく。
「……ラーメン」
「ラーメン……ら、ラーメンも美味しいけど
他に好きなやつとかないの?」
「別にねぇな、まぁ、何でも食えるっちゃあ食えるけどな」
ラーメンって言えば家で作れるのなんてインスタントラーメンくらいしか思い付かない。
多少アレンジは利くと思うけどそれを自信満々に出せるかと言ったら否だ。
困った、と思案していると千空が声をかけてきた。
「この近くに通ってるラーメン店があるんだが……
昼飯まだだったよな、食いに行くか?」
あきらはちらりと腕時計の針を確認した。
今から材料を買って作るとなるとだいぶお昼の時間をすぎてしまうだろう。
「そのお店のラーメン美味しい?」
「“ああ、名店中の名店だ
昔から親父と通ってた店でな
味はお墨付きだ」
あれだけ自信満々に言われたら味が気になるところだ。
作る料理をラーメンにするかはともかく彼のおすすめするラーメンを食べるのもいいかと承諾した。
千空に着いていきラーメン店にたどり着くとあたりにはいい匂いが立ち込めていた。
空いていたカウンター席に座ると店員が千空に話しかけた。
「おっ、兄ちゃん、ついに彼女連れてくるようになったか!!!」
「は?ただのダチだ」
千空は、いつもの、とメニューも言わずにそっぽを向いてしまった。
店員はと言うとからかって悪かった、とへらへら笑って醤油ラーメン一丁!と声を大きく張って言った。
千空は通いつめていると言っていたが……
常連だから顔を覚えられてるのか。
「っと五十嵐は初めてだったな
さっき俺が頼んだのはシンプルな醤油ラーメンだ
他に塩ラーメン等もあるが……どうする?」
「うーーん、じゃあ石神くんと同じの頼む」
他のラーメンも気になったがまずは彼が食べなれていると言う醤油ラーメンを食べる事にした。
ほどなくして両者共に同じタイミングでラーメンが運ばれてきた。
ふわりと香る匂いが食欲を煽った。
「「いただきます」」
手を合わせてから割りばしをぱきりと割ってラーメンに滑らす。
あんな美味しそうなラーメンを前にしてはもう麺を冷ますという行為すらもどかしい、箸で麺をすくい一気に啜った。
「おいしい……」
ラーメン好きな彼がおすすめする理由が分かったがした。
スープが黒くくどいかと思いきやすっきりした味わいの中にコクがあって……
味に唸っていると千空がニヤニヤしていた。
「うめぇだろ」
「うん……!!めっちゃ美味しい!
チャーシューも美味しいし……
あ、あと、メンマも美味しい……」
メンマといえばトッピングのイメージがあってあくまでも付属品と思ってたんだけどこのメンマはそれに引けをとらないくらい美味だ。
あと形がよく見る形とは違うような……
「あーー、それな
たぶんここはメンマ作ってるからだな」
「え、じ、自作??」
「つか、そもそもメンマって何か知らねぇだろ」
千空によればメンマ、別名シナチクというのらしいのだがタケノコを乳酸発酵させた加工品らしい。
「へーーメンマってタケノコだったんだ……」
「まぁ、メンマ自作してない店もあるがな」
麺やスープだけではなくメンマも手作りするなんてラーメンの世界は奥深いなあと思いつつラーメンを啜っているとあっという間に完食してしまった。
ごちそうさまと再び手を合わすと既に千空は食べ終わっていた。
「って、石神くん、スープ全部飲んだの……!?」
「“あ?ああ、そうか、ふつーは全部飲まないもんな」
全部はさすがに体に悪いのでは……とちょっと心配だ。
「悪いっつーのは分かる
が、やっぱ飲み干しちまうんだな……」
千空はぶつぶつと癖が……とかスープが旨いから……と言っていた。
食べ終わったので会計をしようとしたところ、何と千空が二人分も支払うと言った。
流石に奢られるのは悪いと言ったのだが、こっちから誘ったから俺が払うと言って結局奢られる事になってしまった。
「ごめんね、石神くん」
「“あ?だからいいっつってんだろ」
千空は頑なにお金を受け取ろうとせずあきらは諦めその代わり手料理を振る舞おうと心に決めた。
「ねぇ、石神くん
やっぱりあの店のラーメンって思い入れある?」
「……まぁな、他にも旨い店はあるが
やっぱここが一番だな」
千空はくるりと振り返って先ほど出てきた店を眺めた。
何を思っているのかは分からないがたぶん父親との思い出を振り返っているのだろう。
千空はその理由を多くは語らなかった。
が、表情を見て気づいた。
味も理由の一つだろうけど、それよりも。
きっと父親との思い出もあるんだろうなと納得した。
ならば作る料理は決まった。
「石神くん、ちょっといいかな?頼みがあるんだけど……」
「なんだ、五十嵐」
化学室で実験をしていた千空は手を止めた。
五十嵐は千空を人気のない所に誘導し深呼吸をした。
「単刀直入に言います」
「……あ、ああ」
こんな人気のないところに連れてきて何かあるとは予想してたが、まさかと千空は心臓を高鳴らせた。
「石神くんに私の手料理を食べてほしい!です!」
「は???」
予想していた答えとあまりにも食い違うので千空はすっとんきょうな声をあげてしまった。
「手料理って……なんだ急に」
「え、えっと……さ、最近ある料理研究してて……
石神くんとは時々勉強見てもらってるから、そのお礼に……なんて駄目かな?」
「別に駄目なんて一言も言ってねぇ」
「……!!本当!?
じゃあ次の日曜日はどう??」
そう聞くと千空は軽くああと頷いた。
当日千空はあきらの住むマンションまで来ていた。
あの日から数日千空は脳内で議論を繰り広げていた。
(手料理……何が出てくる?
世間的には肉じゃが、ハンバーグ、カレー……
が候補に上がるか……
いや、待て、簡単なやつ以外の可能性もあるな)
あきらは普段から料理すると聞いていたが一体何を作るのか。
千空は意外にもこの状況に若干浮かれていたのだが本人はまだ気づいていない。
恐る恐るチャイムを押すとパタパタと足音がしてあきらが出てきた。
「いらっしゃい、石神くん」
「……おう」
調理中だったのかあきらはエプロンをつけていた。
その姿を見ると千空は何故だか胸がうずうずしてしまいエプロンから目線をそらした。
「ちょうど準備してたとこなの」
「そりゃいい」
リビングに着くととりあえず準備するから座って待っててとの事なので千空は椅子に座った。
さて、何が来るか、千空は期待を胸に抱いていた。
「はい!召し上がれ!」
おまちどおさま!と共に出てきたのは。
千空が好きな醤油ラーメンだった。
「……ラーメン」
まごうなきラーメン。
「あれ……?ラーメン好きって言ってたよね……?」
「いや、まぁ、一番好きだけどよ」
まさか手料理でラーメンが出てくるとは思わないだろう。
(まさか……インスタント……?)
インスタントを元にアレンジするのはありだが……
(つうか食べねぇと伸びちまうな)
ラーメンが出てきた事に驚いたが手をつけないわけにはいかないだろう。
麺を啜ると千空は目を見開いて気がつくとあっという間に完食していた。
「これ……本当にお前が作ったのか?」
「石神くん、ラーメン好きって言ってたから頑張ったの
お店の味とは程遠いと思うけど……」
「んな事気にすることねぇ
ラーメンうまかったわ、ありがとな五十嵐」
あきらは良かった、と嬉しそうに微笑んだ。
「ところで五十嵐」
皿を片付けようとしたあきらに千空が声をかけた。
「替え玉いいか?」
「……うん!替え玉一丁ね!」