短編夢
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足りない。
何度計算しても足りない。
千空は数字を見て溜め息をついた。
「ラーメン削りゃ良かったか……?
いや、一杯削ったところでさして変わりはしねぇな」
急用の用事が出来て予想外な出費が痛い。
が、ロケットの方も諦める予定もない。
急遽小遣いを前借りとも考えたが、あまり百夜に負担はかけられないと考えた。
となれば思い付くのはバイト。
だが、短期バイトともなれば職種は限られてくる。
「しゃあねぇ、あいつに頼むか……」
顔見知りが多い悪友に事を頼むのが一番問題が解決に近いと思いLINEを開いた。
『何かいいバイトねぇか
1日で稼げるやつ
あ、なるべく簡単のな』
『千空ちゃん、さらっとドイヒーな事言うねーー
ところが!あるよ!運がいいね!
かんたーんなお仕事してくれる人ちょうど探してた人知ってる!』
ゲンが提示した金額を見て千空は速攻で決めた。
『じゃあ、頼むわ』
『OK、あ、簡単な接客はあるからね』
接客……まぁ、飲食店は羽振りがいいだろう。
適当にやればいいかと千空は呑気に考えていた。
「君が石神千空くんだね
うん、ゲンくんが言ってた通り客受けがよさそうだ」
当日頷く店主を他所に千空は顔をひきつらせていた。
「あ、こら、執事なんだから
もっと愛想良くしないと
いや、クールな執事もありか……」
てっきりファミレスやファーストフード店だと思っていた千空はたちまち帰りたくなった。
あろうことか自分がいるのは執事喫茶だった。
店に着くないなやいきなり制服を渡され着替えるように指示されたのだ。
制服は執事の服の燕尾服で千空はこの辺りでゲンに嵌められたと気付いた。
チッと思わず舌打ちした千空に店主は顔を曇らせた。
「ここは執事喫茶だからね
常に礼儀正しく!!」
「いらっしゃいませ、でいいのか」
「お客様じゃなくてお嬢様とお坊ちゃん向けだから、お帰りなさいませ、だよ」
それを見ず知らずの他人に言わなきゃならんのかと千空はますます眉間に皺を寄せた。
「君……給料欲しくないの」
「……!欲しい……デス」
それから千空は店が営業開始するまでに作業の説明を受けた。
そして営業時間となり千空は舌打ちしたくなる衝動を押さえた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
千空は心を殺して接客をした。
お嬢様と呼ばれた客は黄色い声を上げ千空は帰りたくなった。
が、更に千空にとって耐え難い事が起きた。
「千空!!バイト姿見にきたぞ!」
「お疲れ様、千空くん!」
幼馴染みの大樹、杠が訪れてしまった。
ここでバイトするなど誰にも言っていない。
誰が言いふらしたか等とうに検討はついていた。
「オカエリナサイマセ、オジョウサマ、オボッチャン」
「おおー!!ロボット執事というのもあるのか!!」
「大樹くん、あまり突っ込まない方が……」
千空はぎこちない動作で二人を案内し一旦注文を伝える為に奥に引っ込んだ。
帰りたい、今すぐに帰りたい。
あの二人が来てる以上他の知り合いが来る事など読めているからだ。
しかし、バイト時間はまだまだある。
それからクロムとルリ、コハクの三人やなどなど千空を冷やかしに来る者どもがちらほらいた。
そんな中に恋人のあきらもまじっていた。
あきらは燕尾服を着た千空をまじまじと見て頬を染めた。
(うっ、刺激が強すぎる……!)
こんな服を着た千空を見たらどうにかなってしまいそうだと行くかどうか悩んでいたが、結局好奇心のほうが勝ってしまった。
「……お帰りなさいませ、お嬢様」
「え、あっはい!」
あきらは席に案内されメニュー表を見たが値段を見て目を見開いた。
高校生で手を出すにはちょっと高い。
どれも千円などとうに越しハードルが高くあきらは冷や汗をかいた。
「お嬢様、食事は何になさいますか」
マニュアル通りの台詞を言うとあきらの肩がビクリと動いた。
「え、えっと……」
どれにしようと目が右往左している。
千空は溜め息をついてあきらにちょいちょいと近づくようにサインを送った。
近づくと耳打ちをされた。
「……後で割り勘してやるから」
早く決めろと無言の圧力をかけられたがあきらは申し訳ないのと同時に少し嬉しくなった。
「……じゃあ、アフタヌーンティーを」
「かしこまりました」
それから千空はやけに客に指名される回数が多く時折顔をしかめていた。
時々愛想が若干悪くなる千空だったが、むしろそれがギャップとなりウケたのだ。
それをあきらは横目で眺めていたが、ちょっと心境は複雑だ。
恋人が知らない人に色めきたたれている。
(千空は格好いいからなあ)
ただでさえ顔がいいのに。
燕尾服など来たら寄るに決まっている。
チリンチリンと時折鳴らして千空を呼びつけたが千空は嫌な雰囲気をただよわせていた。
元々嫌なのに加えて数時間これを続けないのは苦痛なのだろう。
そろそろ退店時間が迫ってきていると気付くと千空が寄ってきた。
「お嬢様、そろそろ舞踏会の時間でこざいます」
舞踏会と聞いて思わず吹き出しそうになった。
「しゃあねぇだろ、これがマニュアルなんだよ」
ボソッと小声で呟いた。
「ねぇ、千空
またこれ着てよ」
店から見送りする際にあきらが千空に言った。
見慣れてきたか最初ほど動揺しなくなってきたのであきらは思いきった発言をした。
「“あ?」
「ねぇ、いいでしょ??
減るもんじゃあるまいし」
色々心をすりつぶして着ているというのにこいつはーーと千空は顔をひきつらせた。
「あ、また顔ひきつってる
接客がなっていないなあ、千空は」
やれやれとあきらが調子に乗り始めた辺りで千空の堪忍袋がキレた。
「条件満たしたらな」
「何の条件?」
千空はニヤリと執事にはあるまじき悪どい表情をした。
「今度はお前がメイドな」
「えっ」
拒否しようとしたが時既に遅し。
「割り勘って言ったのは誰だっけな……?」
「う、うう……ご主人様です……」
千空は次の休日が楽しみだと笑った。
何度計算しても足りない。
千空は数字を見て溜め息をついた。
「ラーメン削りゃ良かったか……?
いや、一杯削ったところでさして変わりはしねぇな」
急用の用事が出来て予想外な出費が痛い。
が、ロケットの方も諦める予定もない。
急遽小遣いを前借りとも考えたが、あまり百夜に負担はかけられないと考えた。
となれば思い付くのはバイト。
だが、短期バイトともなれば職種は限られてくる。
「しゃあねぇ、あいつに頼むか……」
顔見知りが多い悪友に事を頼むのが一番問題が解決に近いと思いLINEを開いた。
『何かいいバイトねぇか
1日で稼げるやつ
あ、なるべく簡単のな』
『千空ちゃん、さらっとドイヒーな事言うねーー
ところが!あるよ!運がいいね!
かんたーんなお仕事してくれる人ちょうど探してた人知ってる!』
ゲンが提示した金額を見て千空は速攻で決めた。
『じゃあ、頼むわ』
『OK、あ、簡単な接客はあるからね』
接客……まぁ、飲食店は羽振りがいいだろう。
適当にやればいいかと千空は呑気に考えていた。
「君が石神千空くんだね
うん、ゲンくんが言ってた通り客受けがよさそうだ」
当日頷く店主を他所に千空は顔をひきつらせていた。
「あ、こら、執事なんだから
もっと愛想良くしないと
いや、クールな執事もありか……」
てっきりファミレスやファーストフード店だと思っていた千空はたちまち帰りたくなった。
あろうことか自分がいるのは執事喫茶だった。
店に着くないなやいきなり制服を渡され着替えるように指示されたのだ。
制服は執事の服の燕尾服で千空はこの辺りでゲンに嵌められたと気付いた。
チッと思わず舌打ちした千空に店主は顔を曇らせた。
「ここは執事喫茶だからね
常に礼儀正しく!!」
「いらっしゃいませ、でいいのか」
「お客様じゃなくてお嬢様とお坊ちゃん向けだから、お帰りなさいませ、だよ」
それを見ず知らずの他人に言わなきゃならんのかと千空はますます眉間に皺を寄せた。
「君……給料欲しくないの」
「……!欲しい……デス」
それから千空は店が営業開始するまでに作業の説明を受けた。
そして営業時間となり千空は舌打ちしたくなる衝動を押さえた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
千空は心を殺して接客をした。
お嬢様と呼ばれた客は黄色い声を上げ千空は帰りたくなった。
が、更に千空にとって耐え難い事が起きた。
「千空!!バイト姿見にきたぞ!」
「お疲れ様、千空くん!」
幼馴染みの大樹、杠が訪れてしまった。
ここでバイトするなど誰にも言っていない。
誰が言いふらしたか等とうに検討はついていた。
「オカエリナサイマセ、オジョウサマ、オボッチャン」
「おおー!!ロボット執事というのもあるのか!!」
「大樹くん、あまり突っ込まない方が……」
千空はぎこちない動作で二人を案内し一旦注文を伝える為に奥に引っ込んだ。
帰りたい、今すぐに帰りたい。
あの二人が来てる以上他の知り合いが来る事など読めているからだ。
しかし、バイト時間はまだまだある。
それからクロムとルリ、コハクの三人やなどなど千空を冷やかしに来る者どもがちらほらいた。
そんな中に恋人のあきらもまじっていた。
あきらは燕尾服を着た千空をまじまじと見て頬を染めた。
(うっ、刺激が強すぎる……!)
こんな服を着た千空を見たらどうにかなってしまいそうだと行くかどうか悩んでいたが、結局好奇心のほうが勝ってしまった。
「……お帰りなさいませ、お嬢様」
「え、あっはい!」
あきらは席に案内されメニュー表を見たが値段を見て目を見開いた。
高校生で手を出すにはちょっと高い。
どれも千円などとうに越しハードルが高くあきらは冷や汗をかいた。
「お嬢様、食事は何になさいますか」
マニュアル通りの台詞を言うとあきらの肩がビクリと動いた。
「え、えっと……」
どれにしようと目が右往左している。
千空は溜め息をついてあきらにちょいちょいと近づくようにサインを送った。
近づくと耳打ちをされた。
「……後で割り勘してやるから」
早く決めろと無言の圧力をかけられたがあきらは申し訳ないのと同時に少し嬉しくなった。
「……じゃあ、アフタヌーンティーを」
「かしこまりました」
それから千空はやけに客に指名される回数が多く時折顔をしかめていた。
時々愛想が若干悪くなる千空だったが、むしろそれがギャップとなりウケたのだ。
それをあきらは横目で眺めていたが、ちょっと心境は複雑だ。
恋人が知らない人に色めきたたれている。
(千空は格好いいからなあ)
ただでさえ顔がいいのに。
燕尾服など来たら寄るに決まっている。
チリンチリンと時折鳴らして千空を呼びつけたが千空は嫌な雰囲気をただよわせていた。
元々嫌なのに加えて数時間これを続けないのは苦痛なのだろう。
そろそろ退店時間が迫ってきていると気付くと千空が寄ってきた。
「お嬢様、そろそろ舞踏会の時間でこざいます」
舞踏会と聞いて思わず吹き出しそうになった。
「しゃあねぇだろ、これがマニュアルなんだよ」
ボソッと小声で呟いた。
「ねぇ、千空
またこれ着てよ」
店から見送りする際にあきらが千空に言った。
見慣れてきたか最初ほど動揺しなくなってきたのであきらは思いきった発言をした。
「“あ?」
「ねぇ、いいでしょ??
減るもんじゃあるまいし」
色々心をすりつぶして着ているというのにこいつはーーと千空は顔をひきつらせた。
「あ、また顔ひきつってる
接客がなっていないなあ、千空は」
やれやれとあきらが調子に乗り始めた辺りで千空の堪忍袋がキレた。
「条件満たしたらな」
「何の条件?」
千空はニヤリと執事にはあるまじき悪どい表情をした。
「今度はお前がメイドな」
「えっ」
拒否しようとしたが時既に遅し。
「割り勘って言ったのは誰だっけな……?」
「う、うう……ご主人様です……」
千空は次の休日が楽しみだと笑った。