短編夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一体何がどうなってこうなったのか。
目の前にいるのは同級生のあきら。
だが、ここは狭いロッカー内。
自ずと柔らかい触感を感じつつ千空は心を無にしていきさつを
思い出した。
遡ること、数十分前。
千空は同級生であるあきらに呼び出されていたのだが、何故か部活の更衣室だった。
「で、何で更衣室なんだ」
女子が普段使っている更衣室に男である自分がいる事がバレたら
とんでもない事になるに違いない。
だが、更衣室じゃないと駄目と言われやむなく承諾したのだ。
(今日は部活休みだから絶対誰も来ないから!!と言われたのもある)
(ほんとに誰も来ないだろうな……)
「あ、えーーと、更衣室なら周りから見えないしいいかなって」
「………………ナニする気だ、おい」
「は、話するだけだから!!!」
そう言うとあきらはぶつぶつ、大丈夫、練習してきた通りに……と
言っているのを見て千空はめんどくさそうな顔をした。
(まぁ、そんな予感はしてたけどよ)
はあ、とため息をつき早くしてくれと急かす。
「あ、あの、せ、千空っ、」
「っ、」
思わず息を呑んだ。
何を動揺してんだ、これまでと同じ様にするだけだ、と言い聞かせつも
あるワンフレーズも期待している自分がいた。
「わ、私、千空の事……!」
カツカツ。
「!?」
「あ?」
複数の歩く音が聞こえる、しかも、この更衣室に向かって、だ。
「ねえ、ほんとにいいの?
更衣室なんか使ってさあ」
「休みだから使っていいでしょ
バレないって」
まずい、男子である自分がいるのを見られるのは絶対にまずい。
入ってくるまで、あと数十秒ーーー。
(窓からーー、駄目だ、狭すぎる)
窓を除けばーー。
(あれしかねえ!!!!)
急いでロッカー内に入ると、何故かあきらも一緒に入ってきた。
『バッカ、何で入ってくんだ……!』
『いや、だって私も何て言われるか』
一人で何をしてるかなんて聞かれたら誤魔化せる気がしない。
『だったら、別のロッカーでいいだろうがっ』
はよ別のとこいけ、と言ったが時既に遅し。
ドアが開く音がした。
『チッ』
やむを得ない、とりあえず千空はロッカーの扉を閉めた。
「あれ?なんか音しなかった?」
「気のせいでしょ、それよりもゲームしよ、ここなら先生に怒られないからね~」
何と入ってきた女子二人組はそのまま、
ゲームをし始めてしまった。
(くそ、出るタイミングがねぇ)
そして、千空とあきらは女子組が更衣室から出るまでロッカーから出れなくなってしまったのだ。
(はあ、どうすっか…………)
女子二人組はなかなか出る気配がなく既に30分ほど経ってしまった。
流石にずっとこのままというわけにもいくまい。
下校時間になれば帰るだろうが、そんな悠長も待ってられない。
何か、策はないかと練ろうとしたが……。
(何も思い浮かばねえ……)
さっきから当たっているあきらの胸が気になり何も思い浮かばない。
こうも長く当てられると流石の千空も気が散るようだ。
(んな考え事をしてる場合じゃねえ
策を……、柔らけえ……、じゃねぇだろ!)
一方、あきらも内心ずっとパニックだった。
(どうしよう、千空とこんな密着する事になるなんて…………!
近い近い近い近い近い近い近い)
お互い、視線を合わせないようにしていたが、突然それは崩れた。
「そういえばさあ、あきら先輩
告白するらしいよ、例の科学部長に」
「「…………!!!!」」
入ってきた女子組はどうやらあきらの後輩らしい。
「えーーーどうせまた未遂でしょ?
早く好きって言いばいいのにね」
(どうしよう、ば、ば、バレちゃった?!)
何て言えばいいのか。
元々告白するつもりだったのに、また訂正しようとしている。
いや、こんな事を繰り返しているからずっと思いを伝えられないのだ。
『せ、千空』
ふいに千空を見上げると千空もこちらを見ていた。
『………………』
千空は何も言わない。
が、同じくあきらと同じ瞳をしていた。
見つめあう事数秒。
『好き…………』
唇から溢れた言葉を聞いた。
気づけば千空はあきらに口づけをしていた。
そんな事をすれば、音が漏れる事は分かっていた。
現に女子二人組は何となく察したようだ。
「え、何?うっそ」
「誰か分かんないけど、どうする?」
「いや、こっちも何て言われるか分かんないしさっさと出ようよ」
ロッカー内に誰が潜んでいるかよりも駄弁っていた事がバレるのが嫌なのか、あっさりと出ていった。
足音が更衣室から遠ざかるのを見て千空とあきらはそっとロッカーから脱出した。
「……とりあえず脱出する事には成功したな」
あきらの方を見ると顔を真っ赤にしてふるふる震えていた。
「ふぁ、ファーストキスだったんだけど」
突然キスされるとは思ってもいなかったあきらは少しムッとしているようだ。
「悪かったな、彼氏との初めてのキスがロッカー内でよ」
そう言うと千空は更衣室から出ていってしまった。
「か、彼氏??」
あきらはいまいち言葉の意味が掴みとれなかったが、自身がさっき告白した事を思い出す。
「せ、千空!!」
あきらは慌てて更衣室から飛び出しぶっきらぼうな恋人を追うべく走り出した。