短編夢
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「何してんだ」
教室で窓の外を眺めていたあきらは振り返るとそこには同じクラスメイトの千空が立っていた。
「いや、雨止まないかなって」
外は雨が降っていて窓を通していても雨音が聞こえる。
ざーざー降る音は決して嫌ではない、むしろ心落ち着くのだが今日は状況が違った。
千空は何言ってんだ、と言わんばかりにため息をつく。
「天気予報見てねえのか、予報では夜まで降る予定だぞ」
「じゃあ……待っても無理かあ」
「無理だな」
今からでもテルテル坊主でも作ろうかと思ったが、千空に言われたのでは意味がないだろう。
「つーか、授業終わってんのに何で学校残ってんだ?補習か?」
お前、今日部活休みだろと言われあきらは補習じゃないと否定する。
「…なら何で……」
更に聞こうと思ったが最初の返答を思い出し、気づいた。
「まさか、傘持ってきてないからか?」
「うん」
「折り畳み傘常備しとけよ…」
千空はあきれている。
「だって今日雨の確率低かったから」
「あのな、確率低かったからっていって必ずしも降らないわけじゃねーぞ?」
「そうなの」
これからは折り畳み傘入れとかなきゃなーと思ったが、今日はどうしようか。
雨は結構降っていて無傷とはいかなさそうだ。
「ありがとう、今度から気を付けるよ」
千空に礼をいって教室から出ようとするとおい、と止められた。
「傘ないのに、どーすんだ
ずぶ濡れで帰る気か?」
「いや、その選択肢しかないでしょ」
すると千空はがしがし頭をかくと何かを言いかけ言葉を改めた。
「もう少しあるだろ、…誰かに傘借りるとかよ」
「誰かって…」
教室にはあきらと千空の二人しかいない。
「まさか、千空…傘貸してくれるの?」
「残念ながらこの一本しかねえな」
千空は鞄にいれてある黒い折り畳み傘を取り出した。
「てめえさえいいなら、共有を考えてもいいぜ」
千空は共有と言ったが、どう考えても相合傘だ。
「千空がいいなら…お願いします…」
「ああ」
千空が右手で傘を持ち左に立って歩く。
なんというかこの微妙な距離がむずかゆくてあまり千空の顔が見れないし何を話せばいいのか軽くパニックだ。
傘を貸してもらうわけではないので家まで送ってもらう事になったが、普通の下校ではこうはならなかっただろう。
ほぼほぼ生徒が下校していて人通りも少なく知られる事がないから、千空もしてくれたのだろうと思う。
ちらりと千空の様子を見るとあきらは目を見開いた。
「…!千空!肩!」
「あ??ああ。ちーと濡れてんな、しゃあねえ」
「いや、しゃあねえ、じゃなくて…!」
「気にすんな、これは俺のエゴだ」
ずるい、千空はずるい。
一緒に傘に入るときも自分が持つと言ったら断られたし。
それは身長差を考えろと言われたから納得したけど、さっきのは自分でも構わないはずだ。
「っじゃあ、車道側歩く」
「駄目だ」
ピシャリと間髪入れずに断られた。
結局千空の肩は少し濡れたまま自宅へと着いてしまった。
じゃあなと帰ろうとした千空をあきらは呼び止めた。
「ちょっと待ってて、数分で良いから」
あきらは玄関を開けて中に入って数分、出てきたあきらの手にはタオルが握られていた。
「はい、これで拭いて」
返されぬようあきらは送ってくれたことに礼を言ってさっさと家の中に入ってしまった。
「…しゃあねえな」
このままタオルを放置するわけにはいかないなと思い、素直に受け取る事にした千空は帰宅していった。
一方、あきらはある事に疑問を抱いていた。
「そういえば、大樹と杠はどうしたんだろう」
いつも三人で帰ってるはずなのに、なぜ千空は遅くまで学校に残っていたのか。
「明日聞くか…」