「何してんだ」
千空は大樹を見て眉を上げた。
「何って……杠の肩に雪が載ってたからな
払ってたんだ、寒そうだからな」
季節は冬。関東地方では珍しいほど雪が積もっている。
当然木々にはたくさん雪が積もり石像にもだ。
「あのなあ、それ意味あんのか？」
石像には冷たいって感覚ねぇだろと突っ込む千空に大樹は弁論した。
「しかしだな、千空
それは分かってるんだが……何というか……
何となくなんだが、払ってやらないとと思うんだ」
はーんと千空は間延びした返事をした。
「ま、テメーがしたいならいいんじゃねぇか？
雪積もりすぎて見失ったらいけねぇしな」

そういちいち雪を払ってやる必要はない。
労力をそんな事に割いてはいられないとこの時は思ったが。
硝酸を採るさいに彼女を見た時千空は思った。
(………そういや、あいつ寒がりだったな)
石化前は冬になると手袋やらマフラーを巻き更にカイロがないと生きられない人間だった。
というか常備してても震えていた。
「しゃあねぇなぁ」
千空は手で頭等に載っかった雪を払うと手が雪の冷たさでかじかんだ。
「…と、こんくらいでいいか」
するとちょうど大樹もやってきた。
「何だ、千空もか」
ツンツン肘でつつかれたがあまり反論する気は起こらなかった。
「そうだな、寒そう、だったからついな」
大樹は千空の反応を見て高らかに笑う。
「そうだな、きっと寒くないって喜んでるぞ」
「あ“あ、だといいな」