「アマリリス、その人たちだれ？」

(し、しまった！ほかの住民にバレた！
誰？顔が暗くて見えない……)

なるべく他に見られぬように動いてたつもりだが、ある女性に追跡されていたらしい。

「えっとね、こ、この人たちは……」


慌てて説明する。

最後に千空を「ラボ」と紹介したところでその女性が進んできて顔が見えた。

「あ！あんた！あきら！」

あきら、と聞いて千空が振り返る。

(………………)

「ラボじゃないでしょ、千空っていうんじゃない？」

周りは千空の名を知っている事に驚いた。

最初に出会った原住民のアマリリス以外知りようがない。

事のいきさつを話そう。

千空達科学王国は南米に行くべく途中必要なアイテム「プラチナ」を手に入れる為宝島に向かった。

その宝島に人がすんでいる可能性がある為少人数で潜入することになった。

千空、交渉役にゲン、護衛にコハク、案内役がソユーズの4人だ。

残りは船に残って待機、という形だった。

しかし、4人が出発してまもなく突如船にのっていた皆が石化してしまったのだ。

そこで千空達は原住民のアマリリスと接触し石化アイテムを手に入れる為協力することになったが、どうしても船内の科学アイテムがいる。

船には既に原住民が張っており、容易に近づく事が出来ない。

コハクが気配を殺して近づいたところ、キリサメという住民に気付かれ戦闘に。

武器を持っていないコハクは応戦する事が出来ず慌てて科学王国民だけに伝わるメッセージ「ラボが欲しい！！」と叫んだ。

それを察知したゲンが千空の背中を押し「ラボくん早く行ってあげなよ」と促す。

千空とコハクが恋人で逢瀬してると勘違いさせその場はなんとか乗り切った。

そのメッセージを聞いた、石化を免れた銀郎、スイカが協力してラボを持ち出す事に成功し今に至る。


「何故千空の名を知っておるのだ？」

コハクはゲンにひそひそ話す。

「俺に聞かれても～～～
千空ちゃん心当たりある？」

だが、千空は黙ったままだ。

「ひゃ、百物語で知ってるとか……？」

ソユーズの言葉をアマリリスは否定する。

「あきらは巫女じゃないわ」

何故原住民のあきらがあきらの名を知っているのか。

あきらが口を開く。

「ねえ、日本って知ってる？」


私には違う記憶がある。

幼い頃からよく見る夢。

他人の人生をなぞらうかのように私の成長に合わせて物語は進む。

その夢の中の人物は五十嵐あきらといった。

私の名前と一緒だ。

でも、五十嵐というのがよく分からない。

苗字……という物らしいが、他の住民には全くない。

それと、日本という国。

生まれてから見る世界と夢で見る世界はまるで違う世界だ。

幼い頃の私は夢で見たことを両親に聞くと妄言を吐いていると思われた。

次第に周りの住民にも変に思われてしまい、そこから夢の内容を話すことは無くなった。


島から出ることは許されていない。

元に今島から出ようとした同い年くらいの子供が石になってしまった。

あの海の向こう側には夢で見たあの光景が広がっているのだろうか。

ほどなくして、とある少年が夢に出てきた。

名は千空。妙な髪型をしている。

だけど、とても懐かしい……と思った。

他人の人生なはずなのに。

それと、大樹と杠。

よく4人で話している光景が見える。

そして、太陽が落ちる頃千空と話している光景が見られた。

夢の中の人物はとても悲しそうな顔をした後、走り去っていく。

それから、その人の夢を見ることは無くなった。

今に至るまで一切見ていない。

あの人は今どうしているのだろうーと。

5人に大まかに話した。

「えーと、これはどう反応したらいいのかな？」

ゲンは困惑している。

「その人物は一体どうなったのだ？
何故急に見られなくなったのだ？」

コハクはあきらが語る夢の続きが気になるらい。

「スイカも気になるんだよ！！」

すると、口を閉ざしていた千空が言った。

「そいつはな、その後に…………
死んだんだよ、トラックにひかれてな、」

千空はぎゅっと眉間を寄せた。