短編夢
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金狼が齢9つくらいの年に村にはある噂が広まっていた。
海の方から小さい女の子の声がすると。
大人は聴こえず、子供も聴こえる者と聴こえない者がいてそれが更に
子どもの恐怖心を煽った。
村の外には人間はいない。
そう伝わっている以上この声は何なのか。
金狼の弟である銀狼は聴こえないものの正体が分からない者に恐怖していた。
「っ、グスッ、やだよぉ~~
海に様子見に行くなんてさあ~~!!」
鼻水と涙諸々流し汚いぞ銀狼と一喝したが、銀狼は橋の上から一歩も動こうとしなかった。
「ど、どうすんだよ!!もしも……幽霊だったらさあ!!」
「幽霊、だと?」
巫女であるルリから百物語の内の怖い話の一つとして死んだ人間が化けて出てくる話を聞いた。
「実在するとは思えん」
生まれてこの方そんな物体は見たことがない。
「も、もしさあ!!
幽霊に何かされたら怖いじゃん!!」
はあ、と金狼はため息をついた。
しょうがなく金狼は門番を銀狼に任せ海へと向かった。
海に近づくと噂の声が聴こえてきた。
確かに小さい女の声だ。
しかし、これは。
村には伝わっておらず金狼は知らなかったが、単なる声ではなく歌という。
海岸に着き声の元へとたどり着くとそこには。
海にぷかぷか浮かぶ小さな女の子がいた。
「おい」
後ろから声をかけると女の子はびっくりしてしまった。
「きゃっ!」
ちゃぷんと、音がして海に潜ったかと思うと水面から顔をひょっこりと出した。
「お前のその声で村の者が怖がっている」
「ごめんなさい!
そ、その、悪気は無かったんです……
ここで歌うと気持ちがよくて……つい……」
びっくりしましたよね……と謝られた。
「歌う……」
「はい、海の中でもいいんですけどやっぱり上で大きく歌うと気持ちがいいですよ」
嬉しそうに笑う姿を見て金狼は感じたことのない衝動にかられた。
「でも、迷惑なんですよね……」
しゅんと落ち込む女の子を見て金狼は慌てて付け足した。
「歌うだけなのか」
それ意外には何もしないのかと問われ女の子は頷く。
「なら、俺が特に危害はないと伝えてくるから、歌ってもいいだろう」
そう伝えると女の子は顔を明るくして喜んだ。
「ありがとうございます、えっと……」
「金狼だ、お前は?」
女の子は少し考えた後こう伝えた。
あきら、と。
「あきらか、いい名だ」
そして金狼は村長に例の声の事で、特に危険性はないと伝えた。
「ねえ、結局その声の女の子はなんだったの?」
銀狼に聞かれた金狼は思案した後答えた。
「幽霊じゃないのか
危害は無さそうだし、攻撃する必要もないだろう」
「えっ、やっぱり幽霊なの!?
もしかして……可愛い??
僕も見たい!見たい!」
「だ、駄目だ!!」
金狼は何故だか自分意外の者には見られたくないと思った。
実際銀狼がこそっと海に見に行ったが、例の女の子は見られなかった。
数日後金狼が海に様子を見に行くとやはりあきらがいた。
「あ、金狼さん、こんにちは」
「ああ」
あきらは決して海の中から出てこようとはしなかった。
「あの……金狼さん、私の事怖くないんですか??」
「怖がるだと??男が怖がるわけにはいかんだろう」
未知の物だろうと幽霊だろうと怖がるわけにはいかない。
「それに……前から存在は聞いていたからな、幽霊として」
しかし、あきらは少しきょとんとしていた。
「ゆうれい?」
「?幽霊とは、お前のような物だろう」
村の言い伝えでは、幽霊とは。
足がなく浮いていると言い伝えられていると言うとあきらは、そうでした、私幽霊でした!と慌てて弁解をした。
実際にはあきらは人間でもなく幽霊でもなかったのだが、実態を知られる事で金狼に怖がられるのを恐れた。
「しかし……日がな海ばかりいて退屈しないのか?」
陸には上がらない(浮いているから違和感があるが)と聞くとあきら
は困った顔をした。
「その……私陸には上がれないんです
そういう幽霊なので……」
「そうなのか」
あきらははい、と言うと申し訳ないと謝った。
まぁしかし、陸に上がれたとはいえ村に入れるわけにもいかないのだが。
「ならしょうがないな」
それから時々金狼は手が空いた時に海岸にやってきてはあきらの歌を聞いたり村の出来事を話すようになった。
あきらは陸の事が珍しいのか、毎度目をキラキラと輝かせて楽しそうに聞く。
そして、小さく、いいなあと呟くのだ。
「どうしても陸には上がれないのか」
「えっと……その、決まりがあって……
陸には上がっちゃ駄目だって」
ほんとは人間とは話してはいけない決まりもあるけれど。
「ルールか」
金狼もルールには従う方針なので破れとは容易には言えなかった。
「もう、夕暮れか
また今度だな」
あきらは手を振りながら心の中で呟く。
(今度っていつだろう?)
金狼は門番をしていて中々手か空く時間がなくちょっとしか話せない。
時たまに彼がやってくるまであきらはずっと待ち続けていた。
ああ、自分に彼と同じような足があったらいいのにな。
海の中で泳ぐのにはいいけれど、これではまともに歩けやしない。
彼と一緒に歩きたい、走りたい。
その願いはいつしか大きく膨らんでいまにもはち切れそうになっていた。
「ちょっと、だけ……
ほんの少しだけだったらいいよね?」
あきらは決してやってはいけない禁断の行為を犯した。
波に乗って砂浜へと飛び乗った。
「これが、陸」
生まれて初めての感覚にあきらは頬を緩ませた。
歩けない問題はあるけれどそれはまた今度考えればいい、それよりも今は彼と話したいと思ったその時自身の体の異変に気付いた。
「えっ??」
体が砂に変わり始めていた。
サラサラと砂浜に自分の一部だった部分が砂に変わり落ちていく。
(名前)は意識が遠くなるのを感じて砂浜に倒れこんだ。
(金、狼)
砂浜と一体化しつつあるのを感じあきらは
最後の涙と共に彼の名前を呼んだ。
「どうしたの?金狼」
金狼は突如立ち上がって海岸の方を見た。
(今、一瞬あきらの声が??)
しかし、ここから海岸までは距離がある。
「いや、何でもない」
気のせいだと金狼は役目の門番に戻った。
あの日以来金狼は海岸を訪れてもあきらの姿を見る事は無くなった。
(ジョウブツ、したのか)
言い伝えによれば幽霊は未練?という物を持った人間がなるらしく未練が晴れれば居なくなるらしい。
あきらもきっと未練が無くなって去ったのだろうと。
(これでいいんだ、村の子どもたちも怖がる事はもう、ない)
立ち去る時、いないはずのあきらの声がした気がした。
振り返ってもそこには波と砂浜しかなかった。
(気のせいか)
あれからもう何年も経ち当時怖がっていた子どもたちも出来事さえ忘れている。
銀狼も全く記憶はないらしく、そんな事あったっけ?と首を傾げた。
かくいう金狼もぼんやりとしか覚えていない。
が、波のさざ波の音を聞く度にあの少女を思い出すのだ。
海の方から小さい女の子の声がすると。
大人は聴こえず、子供も聴こえる者と聴こえない者がいてそれが更に
子どもの恐怖心を煽った。
村の外には人間はいない。
そう伝わっている以上この声は何なのか。
金狼の弟である銀狼は聴こえないものの正体が分からない者に恐怖していた。
「っ、グスッ、やだよぉ~~
海に様子見に行くなんてさあ~~!!」
鼻水と涙諸々流し汚いぞ銀狼と一喝したが、銀狼は橋の上から一歩も動こうとしなかった。
「ど、どうすんだよ!!もしも……幽霊だったらさあ!!」
「幽霊、だと?」
巫女であるルリから百物語の内の怖い話の一つとして死んだ人間が化けて出てくる話を聞いた。
「実在するとは思えん」
生まれてこの方そんな物体は見たことがない。
「も、もしさあ!!
幽霊に何かされたら怖いじゃん!!」
はあ、と金狼はため息をついた。
しょうがなく金狼は門番を銀狼に任せ海へと向かった。
海に近づくと噂の声が聴こえてきた。
確かに小さい女の声だ。
しかし、これは。
村には伝わっておらず金狼は知らなかったが、単なる声ではなく歌という。
海岸に着き声の元へとたどり着くとそこには。
海にぷかぷか浮かぶ小さな女の子がいた。
「おい」
後ろから声をかけると女の子はびっくりしてしまった。
「きゃっ!」
ちゃぷんと、音がして海に潜ったかと思うと水面から顔をひょっこりと出した。
「お前のその声で村の者が怖がっている」
「ごめんなさい!
そ、その、悪気は無かったんです……
ここで歌うと気持ちがよくて……つい……」
びっくりしましたよね……と謝られた。
「歌う……」
「はい、海の中でもいいんですけどやっぱり上で大きく歌うと気持ちがいいですよ」
嬉しそうに笑う姿を見て金狼は感じたことのない衝動にかられた。
「でも、迷惑なんですよね……」
しゅんと落ち込む女の子を見て金狼は慌てて付け足した。
「歌うだけなのか」
それ意外には何もしないのかと問われ女の子は頷く。
「なら、俺が特に危害はないと伝えてくるから、歌ってもいいだろう」
そう伝えると女の子は顔を明るくして喜んだ。
「ありがとうございます、えっと……」
「金狼だ、お前は?」
女の子は少し考えた後こう伝えた。
あきら、と。
「あきらか、いい名だ」
そして金狼は村長に例の声の事で、特に危険性はないと伝えた。
「ねえ、結局その声の女の子はなんだったの?」
銀狼に聞かれた金狼は思案した後答えた。
「幽霊じゃないのか
危害は無さそうだし、攻撃する必要もないだろう」
「えっ、やっぱり幽霊なの!?
もしかして……可愛い??
僕も見たい!見たい!」
「だ、駄目だ!!」
金狼は何故だか自分意外の者には見られたくないと思った。
実際銀狼がこそっと海に見に行ったが、例の女の子は見られなかった。
数日後金狼が海に様子を見に行くとやはりあきらがいた。
「あ、金狼さん、こんにちは」
「ああ」
あきらは決して海の中から出てこようとはしなかった。
「あの……金狼さん、私の事怖くないんですか??」
「怖がるだと??男が怖がるわけにはいかんだろう」
未知の物だろうと幽霊だろうと怖がるわけにはいかない。
「それに……前から存在は聞いていたからな、幽霊として」
しかし、あきらは少しきょとんとしていた。
「ゆうれい?」
「?幽霊とは、お前のような物だろう」
村の言い伝えでは、幽霊とは。
足がなく浮いていると言い伝えられていると言うとあきらは、そうでした、私幽霊でした!と慌てて弁解をした。
実際にはあきらは人間でもなく幽霊でもなかったのだが、実態を知られる事で金狼に怖がられるのを恐れた。
「しかし……日がな海ばかりいて退屈しないのか?」
陸には上がらない(浮いているから違和感があるが)と聞くとあきら
は困った顔をした。
「その……私陸には上がれないんです
そういう幽霊なので……」
「そうなのか」
あきらははい、と言うと申し訳ないと謝った。
まぁしかし、陸に上がれたとはいえ村に入れるわけにもいかないのだが。
「ならしょうがないな」
それから時々金狼は手が空いた時に海岸にやってきてはあきらの歌を聞いたり村の出来事を話すようになった。
あきらは陸の事が珍しいのか、毎度目をキラキラと輝かせて楽しそうに聞く。
そして、小さく、いいなあと呟くのだ。
「どうしても陸には上がれないのか」
「えっと……その、決まりがあって……
陸には上がっちゃ駄目だって」
ほんとは人間とは話してはいけない決まりもあるけれど。
「ルールか」
金狼もルールには従う方針なので破れとは容易には言えなかった。
「もう、夕暮れか
また今度だな」
あきらは手を振りながら心の中で呟く。
(今度っていつだろう?)
金狼は門番をしていて中々手か空く時間がなくちょっとしか話せない。
時たまに彼がやってくるまであきらはずっと待ち続けていた。
ああ、自分に彼と同じような足があったらいいのにな。
海の中で泳ぐのにはいいけれど、これではまともに歩けやしない。
彼と一緒に歩きたい、走りたい。
その願いはいつしか大きく膨らんでいまにもはち切れそうになっていた。
「ちょっと、だけ……
ほんの少しだけだったらいいよね?」
あきらは決してやってはいけない禁断の行為を犯した。
波に乗って砂浜へと飛び乗った。
「これが、陸」
生まれて初めての感覚にあきらは頬を緩ませた。
歩けない問題はあるけれどそれはまた今度考えればいい、それよりも今は彼と話したいと思ったその時自身の体の異変に気付いた。
「えっ??」
体が砂に変わり始めていた。
サラサラと砂浜に自分の一部だった部分が砂に変わり落ちていく。
(名前)は意識が遠くなるのを感じて砂浜に倒れこんだ。
(金、狼)
砂浜と一体化しつつあるのを感じあきらは
最後の涙と共に彼の名前を呼んだ。
「どうしたの?金狼」
金狼は突如立ち上がって海岸の方を見た。
(今、一瞬あきらの声が??)
しかし、ここから海岸までは距離がある。
「いや、何でもない」
気のせいだと金狼は役目の門番に戻った。
あの日以来金狼は海岸を訪れてもあきらの姿を見る事は無くなった。
(ジョウブツ、したのか)
言い伝えによれば幽霊は未練?という物を持った人間がなるらしく未練が晴れれば居なくなるらしい。
あきらもきっと未練が無くなって去ったのだろうと。
(これでいいんだ、村の子どもたちも怖がる事はもう、ない)
立ち去る時、いないはずのあきらの声がした気がした。
振り返ってもそこには波と砂浜しかなかった。
(気のせいか)
あれからもう何年も経ち当時怖がっていた子どもたちも出来事さえ忘れている。
銀狼も全く記憶はないらしく、そんな事あったっけ?と首を傾げた。
かくいう金狼もぼんやりとしか覚えていない。
が、波のさざ波の音を聞く度にあの少女を思い出すのだ。