夜桜凶一郎R夢まとめ
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穏やかな光が降り注ぐとある日の午後、まだ住み慣れぬ屋敷の廊下を歩いていると。
ほのかに遠くから音がうっすらと聞こえる、これはピアノだろうか?
音がする方向へ歩くと……とある一室からその音は響いていた。
ここは……凶一郎さんの部屋だ。
初めて訪れた時には部屋中に敷き詰められた妹さんの写真に驚いたが彼は妹さんの事をそれはとても大層大切にしているらしく、見られるのに抵抗はありつつも妹に対する愛は譲れないと言われた。
でもそんな妹の事を大事に思っている彼の気持ちを無下には出来ないし何よりやはりその表情が私にとっては愛おしく感じてしまうのだ。
部屋の奥からは引き続きピアノの音が聞こえる、クラシックに詳しくないがこれはそういう系統のものだろうか……?
っと、あまり立ち聞きしてはなんだか盗聴しているようで彼に申し訳ない、立ち去ろうとするとピタリとピアノの音が止んだ。
そしてコンマ0秒も経たずに音も無く部屋のドアが空くのだからか彼は忍者だろうか?いやスパイだった。
「何か用か?」
「あっ、いえ……その、ピアノの音が聞こえまして……
凶一郎さんが演奏を……?」
「ああ、そうだが」
「すごい……!ピアノ弾けるんですね!」
あまり音楽について心得がなくすごいすごいと褒めると凶一郎さんは照れくさそうに顔を背けた。
「………………弾いてみるか?」
「えっ?」
彼に手を引かれ部屋の奥に招かれるとそれはもう豪華なグラウンドピアノがそびえたっていた。
とても………………高そう、ピアノはだいたい高価な物だがこれはおいくらくらいするのだろうか…………?
弾いてみるかと言われたもののこんな立派な、いやピアノの優劣などわからないけれどこんな立派なお屋敷に住んでるんだ、きっと高いものに違いない……!
ああ、間違ってどこか壊してしまったらどうしよう……!と震えている私を凶一郎さんは優しく肩に手を添えた。
「そんなに不安がることはない
辛三ならともかく……お前なら大丈夫だ
それに万が一の事があっても別に怒ることはないし、物はいつか壊れるものだ、今日もメンテナンスの調律を行なっていたからな」
「ちょ、調律…………」
「定期的にしないと部品が傷んでたりするからな、それでついでに弾いてたということだ、っと……肝心の楽譜がないな、リクエストはあるか?」
「あ…………あんまり詳しくなくて……お任せします」
凶一郎さんはピアノの横にある本棚を探りちょうどいい楽譜がないか吟味し一冊の本をとった。
ぱらりとページをめくり置いて私に座るよう促す。
椅子は二つあってどなたかご妹弟と連弾する機会でもあるのかな……?と首を傾げた。
でもそれにしては一つは使い慣らされた感じがあってもう一つは真新しくみえる…………錯覚かもしれないけど。
ちょこんと座り弾こう……と鍵盤に手を乗せたところで…………
「あの凶一郎さん、楽譜が読めません…………」
「………………そこからの初心者だったか…………
これでは連弾はかなり先に…………あ、いや何でもない
仕方がない、今日は俺が音階を書いていくから……」
「えっ!?で、でもこれ凶一郎さんのご本ですよね!?そんな申し訳ないです……!それに音が分かってもどこを押したらいいのかまずそこからで……」
「……………………」
ああ、どうしよう困らせてしまった。
やはり今からで悪いが断って……と鍵盤に手を乗せたまま引っ込めようとした私の手に黒い手袋の手が被さった。
相手は言うまでもなく凶一郎さん本人の手で。
驚いた瞬間凶一郎さんは手を乗せたまま私の指ごとピアノを一音だけ鳴らした。
唐突な行動に困惑する私に対し凶一郎さんは引き続き別の音を鳴らして……を続ける。
手を重ねているからかゆっくりとしたスピードだがその音を繋ぎ合わせると……ああ、これは単に音を鳴らしているのではない、演奏なんだ……と分かった。
手を重ねている状態なのであっちこっちに移動するわけではないが、その音域範囲内で弾ける曲なのだろう。
手を一緒に動かされてまるで彼の操り人形になったような錯覚がするが嫌気ではなくむしろドキドキとときめきを感じていた。
私とは違う男の人の手。
手を繋いだ時よりも直に節々の長さや手袋越しにゴツゴツしたのが分かり頬に熱が集中する。
真後ろからではなく真横からか身体もより近くなってピアノの演奏の緊張よりもいつの間にか別の意味で鼓動が止まなかった。
程なくして…………凶一郎さんの指が止まる、ここで曲は終わりにだろう。
役目は終わりだと凶一郎さんの指が離れていき私はそれを少し残念に思った。
それにしても彼は演奏を体験させようと思ってくれていたのに私はなんて恋愛脳なんだろう、彼に申し訳ないな……とせめてお礼を言うべく顔を向き合うと。
彼も私と同じ表情をしていて、心臓が跳ねた。
あれ呼吸ってどうしてたんだっけ、と忘れるくらい息を呑む。
ピアノの音がなく静寂と化した空間で私は凶一郎さんと顔を向き合ったまま停止していた。
凶一郎さんの手が再び動こうとしたその時。
さぁ…………と穏やかな風が吹いて半透明な白いカーテンが私と凶一郎さんの間に割って入った。
風の戯れはすぐに止みカーテンがすっと引いていく。
現れた凶一郎さんはいつもの表情に変わっていていつの間にか甘い空気は無くなっていた。
………………まだカーテンを開けるほどの勇気はまだない。
ほのかに遠くから音がうっすらと聞こえる、これはピアノだろうか?
音がする方向へ歩くと……とある一室からその音は響いていた。
ここは……凶一郎さんの部屋だ。
初めて訪れた時には部屋中に敷き詰められた妹さんの写真に驚いたが彼は妹さんの事をそれはとても大層大切にしているらしく、見られるのに抵抗はありつつも妹に対する愛は譲れないと言われた。
でもそんな妹の事を大事に思っている彼の気持ちを無下には出来ないし何よりやはりその表情が私にとっては愛おしく感じてしまうのだ。
部屋の奥からは引き続きピアノの音が聞こえる、クラシックに詳しくないがこれはそういう系統のものだろうか……?
っと、あまり立ち聞きしてはなんだか盗聴しているようで彼に申し訳ない、立ち去ろうとするとピタリとピアノの音が止んだ。
そしてコンマ0秒も経たずに音も無く部屋のドアが空くのだからか彼は忍者だろうか?いやスパイだった。
「何か用か?」
「あっ、いえ……その、ピアノの音が聞こえまして……
凶一郎さんが演奏を……?」
「ああ、そうだが」
「すごい……!ピアノ弾けるんですね!」
あまり音楽について心得がなくすごいすごいと褒めると凶一郎さんは照れくさそうに顔を背けた。
「………………弾いてみるか?」
「えっ?」
彼に手を引かれ部屋の奥に招かれるとそれはもう豪華なグラウンドピアノがそびえたっていた。
とても………………高そう、ピアノはだいたい高価な物だがこれはおいくらくらいするのだろうか…………?
弾いてみるかと言われたもののこんな立派な、いやピアノの優劣などわからないけれどこんな立派なお屋敷に住んでるんだ、きっと高いものに違いない……!
ああ、間違ってどこか壊してしまったらどうしよう……!と震えている私を凶一郎さんは優しく肩に手を添えた。
「そんなに不安がることはない
辛三ならともかく……お前なら大丈夫だ
それに万が一の事があっても別に怒ることはないし、物はいつか壊れるものだ、今日もメンテナンスの調律を行なっていたからな」
「ちょ、調律…………」
「定期的にしないと部品が傷んでたりするからな、それでついでに弾いてたということだ、っと……肝心の楽譜がないな、リクエストはあるか?」
「あ…………あんまり詳しくなくて……お任せします」
凶一郎さんはピアノの横にある本棚を探りちょうどいい楽譜がないか吟味し一冊の本をとった。
ぱらりとページをめくり置いて私に座るよう促す。
椅子は二つあってどなたかご妹弟と連弾する機会でもあるのかな……?と首を傾げた。
でもそれにしては一つは使い慣らされた感じがあってもう一つは真新しくみえる…………錯覚かもしれないけど。
ちょこんと座り弾こう……と鍵盤に手を乗せたところで…………
「あの凶一郎さん、楽譜が読めません…………」
「………………そこからの初心者だったか…………
これでは連弾はかなり先に…………あ、いや何でもない
仕方がない、今日は俺が音階を書いていくから……」
「えっ!?で、でもこれ凶一郎さんのご本ですよね!?そんな申し訳ないです……!それに音が分かってもどこを押したらいいのかまずそこからで……」
「……………………」
ああ、どうしよう困らせてしまった。
やはり今からで悪いが断って……と鍵盤に手を乗せたまま引っ込めようとした私の手に黒い手袋の手が被さった。
相手は言うまでもなく凶一郎さん本人の手で。
驚いた瞬間凶一郎さんは手を乗せたまま私の指ごとピアノを一音だけ鳴らした。
唐突な行動に困惑する私に対し凶一郎さんは引き続き別の音を鳴らして……を続ける。
手を重ねているからかゆっくりとしたスピードだがその音を繋ぎ合わせると……ああ、これは単に音を鳴らしているのではない、演奏なんだ……と分かった。
手を重ねている状態なのであっちこっちに移動するわけではないが、その音域範囲内で弾ける曲なのだろう。
手を一緒に動かされてまるで彼の操り人形になったような錯覚がするが嫌気ではなくむしろドキドキとときめきを感じていた。
私とは違う男の人の手。
手を繋いだ時よりも直に節々の長さや手袋越しにゴツゴツしたのが分かり頬に熱が集中する。
真後ろからではなく真横からか身体もより近くなってピアノの演奏の緊張よりもいつの間にか別の意味で鼓動が止まなかった。
程なくして…………凶一郎さんの指が止まる、ここで曲は終わりにだろう。
役目は終わりだと凶一郎さんの指が離れていき私はそれを少し残念に思った。
それにしても彼は演奏を体験させようと思ってくれていたのに私はなんて恋愛脳なんだろう、彼に申し訳ないな……とせめてお礼を言うべく顔を向き合うと。
彼も私と同じ表情をしていて、心臓が跳ねた。
あれ呼吸ってどうしてたんだっけ、と忘れるくらい息を呑む。
ピアノの音がなく静寂と化した空間で私は凶一郎さんと顔を向き合ったまま停止していた。
凶一郎さんの手が再び動こうとしたその時。
さぁ…………と穏やかな風が吹いて半透明な白いカーテンが私と凶一郎さんの間に割って入った。
風の戯れはすぐに止みカーテンがすっと引いていく。
現れた凶一郎さんはいつもの表情に変わっていていつの間にか甘い空気は無くなっていた。
………………まだカーテンを開けるほどの勇気はまだない。
