夜桜凶一郎R夢まとめ
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「夜桜大将、書類の方確認お願いします!!!」
部下から書類を渡された凶一郎は後で見る、と部下に下がるように手だけで合図を送った。
「…………!はっ!了解いたしました!!」
目線だけで凶一郎の机に置かれた大量の書類を見て部下は背筋を正しビシッ!と敬礼をして部屋を出ていった。
出ていったのを確認し、凶一郎は机にまた書類を追加した。
大量の部下を持つ凶一郎は日々あらゆる作戦の実行権を持ち多忙である。
今日だけでどれだけの書類を捌いてきたか。
だが、まだ終わりではない。
しかし、凶一郎という男はあまりにも仕事が出来る男であった。
ものの一時間で机の上を綺麗にして軍の施設から町に出る。
そしていつもの安寧の地へと向かった。
すれ違う軍の者は凶一郎がまっすぐとある場所に向かうのを見て姿が見えなくなったのを確認し、ヒソヒソと話す。
また、いつものお嬢さんにぞっこんみたいだな、と。
完璧に自分の気持ちを隠し通せていると思っている凶一郎はきい、と戸を開けて喫茶店に入店する。
「あっ!凶一郎くん、いらっしゃい!」
くるり、と入口の方向に振り返った彼女が頬を綻ばせて自分が来てくれたことを喜んだ。
ととと、と小走りに駆け寄ってきていつもの場所空けてるよ、とにこやかに微笑む。
喫茶店の店員の証の給仕服を着て接客する彼女はあきらという。
ここの基地で仕事するようになってから一年、凶一郎は彼女が働く喫茶店にほぼ毎日通い詰めていた。
最初はこの喫茶店の紅茶の味が気に入ったからだったが、彼女の優しい笑みに次第に惹かれいつの間にか彼女に会いに来るのが目的と化してしまった。
いつもの、と注文をして接客をするあきらを見やすい位置の席に座って新聞を取る。
あきらは慌ただしく動き回りつつ他の人にも笑顔で接客している。
看板娘といっても過言ではないようで自分の他複数の男が彼女に視線を向けていた。
………………だが、正直自分の勝ち!だと思う。
何故ならあきらは自分が来た時が一番輝いているからだーーーと凶一郎は届いた紅茶を手に取りふっと笑う。
口に含み、やはりここの紅茶はいいと思った。
……だが、それももう来週までだ。
別の基地に移動することになり、来週にはこことおさらばすることになる。
この紅茶とも、…………あきらとも。
「………………………………」
静かにたゆたう紅茶を眺め凶一郎は思いを吐露すべきか迷った。
出来るなら自分についてきてほしい、と言いたい。
けれど自分と彼女はあくまでも従業員と客の関係性。
先ほどは自分の時が一番輝いていると言ったがいざとなると意気地なしとなってしまう。
言おうとして言えずずるずると延期した結果この様だ。
飲み干さない凶一郎にあきらは不安そうに見つめた。
「凶一郎くん、紅茶…………口に合わなかった……?」
「!いや、そんなことはない」
「…………何か悩み事?私に出来ることならなんでも相談して、凶一郎くんの力になりたいの…………いつもお店に来てくれるから……」
真っ直ぐに見つめてくるあきらに鼓動が高鳴る。
……期待してはいけない、俺はただの客だ、それ以外でもそれ以上でも、ないんだ………………
凶一郎は帽子の唾を被り紅茶を飲み干して立ち上がった。
「…………美味かった、釣りはいらん」
その日以降凶一郎は喫茶店を訪れることはなかった。
基地を離れる当日。
荷物を整理し、宿舎から出ると何とあきらが待っていた。
「なっ!?!」
「あ!凶一郎くん!」
白い息をはいて嬉しそうにあきらが駆け寄ってくる。
いつから待っていたのか鼻を赤くして風邪でも引いてしまいそうなほど頬を染めている。
「今日…………ここ出ていくんだよね……?」
「……!なんでそれを…………」
「えへへ……常連さんの……えっと……綺麗な女性の人がこっそり…………」
白い髪の女が脳裏によぎり凶一郎はいらないお世話を……!!!とぐちる。
「きっと凶一郎くんのことだから私が寂しくならないように隠してくれたんだよね、凶一郎くん……優しいから」
「……………………」
「でも、お店に来てくれなかったのは……寂しいよ
お別れも言えないなんて……」
「………………すまない」
謝るとあきらはいいの、と首を横に降り三つ編みが揺れた。
「………………だから」
あきらの声が震える。
気づけば白い雪が待っていた。
「げん、き、でね、凶一郎、くん」
「!」
悲しませないように無理やり笑顔を作るあきらだが声は震え涙が溢れた。
「あ、あれ?おかしいな、ごめんね、目にゴミが入ったみたい、やだな、ちゃんと笑顔で見送るって決めてー」
と言うあきらを凶一郎は抱きしめた。
「きょう、いちろう、くん」
「あきら、俺と結婚してくれ、一緒についてきてほしい」
「………………っ、はい……」
凶一郎に抱きしめられたあきらは堰が切れたように涙をぽろぽろと流した。
それから着任した先で毎朝元給仕の奥さんに紅茶を淹れてもらっているベタ惚れ旦那がいるとまた新しい噂が流れたのだった。
[モブ目線]
「いつもご来店ありがとうございます!◯◯さん!」
喫茶店に入りにこやかに挨拶をしてくれるあきらさんに俺は思わず頬を緩めてしまう。
ここに通うようになって数年、1年ほど前に新しく入った新人のあきらさんに俺は心を奪われていた。
軍隊という厳しい職場の中、彼女の笑顔が俺の心を慰めてくれる。
彼女の笑顔があればどんな怖い上司だろうとなんだろうと乗り切れる気がした。
そんな中基地にとある男が赴任してきた。
異例の若さでの昇進、周りの女子達がカッコいいと囃し立てるそんな年下の上司の男に俺は思わず自分の存在意義を見失ってしまったがそんな事はどうでもいい。
俺にはあきらさんがいるのだから…………!
と思っていたのだが。
(何で上司まで喫茶店の常連になってるんだ!!!)
しかもあきらさんと良い感じになっているし!!!!!
いや、落ち着け、俺。
あきらさんはどの人でも笑顔で接する人だ、決してあの男の事が好きなわけではない!!!!!
何か最近あきらさんがいつもあの男が訪れる時間になるとそわそわし始めるのは関係ないんだ、そうに決まってる…………
そしていつも通り喫茶店を訪れた忌々しい上司が退店していくとすすす、となんとあきらさんが俺に近寄ってきてこっそり耳打してきたではないか。
「あの…………◯◯さん閉店後にまた来てくれますか?」
「え?………………えっ!?!?」
浮つく心を抑えて閉店後の喫茶店を訪れるとあきらさんが待ってました、と笑う。
「実は…………最近紅茶の淹れ方を勉強してまして……
昔からの常連の◯◯さんに飲んでいただきたいんです」
「そうだったんですか……」
逢引のお誘いではなかったことに少し残念に思いつつあきらさんが紅茶を淹れるのを眺める。
ともあれ俺が一番最初に彼女の紅茶を飲める事はとても嬉しい。
「でもどうして自分で紅茶を淹れようと思ったんですか?」
そう聞くとあきらさんの顔が徐々に真っ赤に染まった。
すると店の奥からマスターが出てきてニヤニヤとあきらさんを囃し立てる。
「こいつな、最近店にやってくる軍人の大将とやらが好きらしいんだよ
紅茶が好きらしくてな、頑張って美味しい紅茶を飲んでもらいたいんだとさ」
「ま、マスター!!しー!!しー!」
あきらさんは黙っててください……!と困った様子で人差し指を口に当てる。
ことん、と机にティーカップが置かれる。
「お口に合わないかもしれませんが……どうぞ」
差し出された紅茶を飲み、感想を聞かれた俺は。
「………………渋いです」
ぽろりと涙を流しつつ恋に別れを告げた。
[軍パロその後]
軍隊を辞めて凶一郎とあきらはひっそりと喫茶店を開いた。
一階が店になっていて昼は喫茶店で夜になるとバーになる。
昼は賑わいを見せる親しみやすい喫茶店な一方夜は落ち着きのあるバーに変化し、幸運なことにどちらも一定層の人々に好かれている。
元々喫茶店で働いていたあきらはウェイトレスとして凶一郎は主にバーテンダーとして働いているが喫茶店の時はあきらが、バーの時は凶一郎に異性の目が集まりやすい為自ずと常に店にいる状態となってしまった。
「ねぇあきらちゃんサービスしてくれないかしら?」
「うーーん、ちょっと聞いてきますねー」
ととと、とカウンターに寄ってくるあきらに凶一郎は✕、と腕で合図を送る。
気前が良いと客の受けがいいものの、あまり頻繁にやっていては経営が傾いてしまう。
あの頃通っていた喫茶店のマスターが時折ため息をついていたのを思い出す。
「でもでも、あのお客さんは常連さんだし…………」
「こないだもやっていただろう」
「……………………マスター……駄目……?」
カウンター越しにじっと見つめられ凶一郎はうっ、顔をそらした。
この頃あきらは自分の武器を自覚したらしくおねだりで弱い所をついてくる。
自分がベタ惚れなのを利用しての行動に凶一郎は指でくいっ、とこっちに来るように促した。
てっきり許可を得たと喜んだあきらは上機嫌で凶一郎に近づくと凶一郎はあきらの腰に手を回して耳元で囁いた。
ぼふん、と湯気が立ちみるみる真っ赤になったあきらはとぼのぼと客の方に向かった。
「…………駄目でした……」
「あらあら、そんなに顔赤くして……!今度は何言われたの??」
「な、内緒です…………!」
「きゃー!!!」
バシバシと奥さんはうちもあんなこと言われたいわー!ときゃっきゃ、と旦那を叩いた。
これでしばらくは落ち着くだろう、と凶一郎はあきらお手製の紅茶を含みながら新聞を眺めた。
時間は過ぎ夜が更けた頃、店の雰囲気はガラリと変わる。
喫茶店とはうってかわってカウンターに座る客が多く、凶一郎は客に酒を提供するバーテンダーに姿を変える。
客のほとんどは男性が多いが凶一郎目当ての女性客も多く、その様子にあきらはちょっと嫌なようで少し拗ねているのが分かった。(あまり態度には出さないが)
その分たっぶりと愛情を注いでいるつもりなのだが……
が、こちらとしては普段から嫉妬しているのであきらも嫉妬してくれていると思うと少し嬉しくも思う。
では夜の経営を辞めるか?と聞くとバーテンダーをやっている姿がかっこよくて好きなので辞めないで欲しいと言われた、そう言われてしまっては仕方がない。
客から注文されたカクテルを差し出すと常連の男に奥さんは?と聞かれたので奥に居ると顎でさす。
最初は表に立っていたあきらだが、酔っ払い客に絡まれてついにはあきらに手を出そうとする輩まで出てきて凶一郎の堪忍袋がキレてしまい今は厨房でバー用のつまみ料理を作っている。
とはいえ完全に出てこないわけではなく、客が入ってこれないカウンター内には時折出没したりするのだが。
客側からはレアキャラだと何故か噂されている。
閉店時間になり店から客が居なくなると二人きりの時間がやってくる。
二階に上がろうとしたあきらを引き止めて少し飲まないか?と凶一郎は誘った。
「滅多にカウンター席に座らないから何だか新鮮だな」
「ふっ、そうだな、お客さん、ご注文は?」
「んーー凶一郎くんに任せる、好きなようにしていいよ」
凶一郎は手早くカクテルを作るとグラスを置きカウンターの座るあきらの髪をさらりと撫でる。
「そういう言い方だと違う意味に捉えてしまうが?」
「………………!」
あきらはカクテルを煽り、酒のせいか頬を赤くして目線をそらす。
「反論がないということは返事はイエスでいいな?」
「…………」
あきらは凶一郎の手を取り指で掌をなぞる。
三文字のアルファベットを順々に書いて返事を貰った凶一郎は笑みを浮かべて掌を重ねた。
部下から書類を渡された凶一郎は後で見る、と部下に下がるように手だけで合図を送った。
「…………!はっ!了解いたしました!!」
目線だけで凶一郎の机に置かれた大量の書類を見て部下は背筋を正しビシッ!と敬礼をして部屋を出ていった。
出ていったのを確認し、凶一郎は机にまた書類を追加した。
大量の部下を持つ凶一郎は日々あらゆる作戦の実行権を持ち多忙である。
今日だけでどれだけの書類を捌いてきたか。
だが、まだ終わりではない。
しかし、凶一郎という男はあまりにも仕事が出来る男であった。
ものの一時間で机の上を綺麗にして軍の施設から町に出る。
そしていつもの安寧の地へと向かった。
すれ違う軍の者は凶一郎がまっすぐとある場所に向かうのを見て姿が見えなくなったのを確認し、ヒソヒソと話す。
また、いつものお嬢さんにぞっこんみたいだな、と。
完璧に自分の気持ちを隠し通せていると思っている凶一郎はきい、と戸を開けて喫茶店に入店する。
「あっ!凶一郎くん、いらっしゃい!」
くるり、と入口の方向に振り返った彼女が頬を綻ばせて自分が来てくれたことを喜んだ。
ととと、と小走りに駆け寄ってきていつもの場所空けてるよ、とにこやかに微笑む。
喫茶店の店員の証の給仕服を着て接客する彼女はあきらという。
ここの基地で仕事するようになってから一年、凶一郎は彼女が働く喫茶店にほぼ毎日通い詰めていた。
最初はこの喫茶店の紅茶の味が気に入ったからだったが、彼女の優しい笑みに次第に惹かれいつの間にか彼女に会いに来るのが目的と化してしまった。
いつもの、と注文をして接客をするあきらを見やすい位置の席に座って新聞を取る。
あきらは慌ただしく動き回りつつ他の人にも笑顔で接客している。
看板娘といっても過言ではないようで自分の他複数の男が彼女に視線を向けていた。
………………だが、正直自分の勝ち!だと思う。
何故ならあきらは自分が来た時が一番輝いているからだーーーと凶一郎は届いた紅茶を手に取りふっと笑う。
口に含み、やはりここの紅茶はいいと思った。
……だが、それももう来週までだ。
別の基地に移動することになり、来週にはこことおさらばすることになる。
この紅茶とも、…………あきらとも。
「………………………………」
静かにたゆたう紅茶を眺め凶一郎は思いを吐露すべきか迷った。
出来るなら自分についてきてほしい、と言いたい。
けれど自分と彼女はあくまでも従業員と客の関係性。
先ほどは自分の時が一番輝いていると言ったがいざとなると意気地なしとなってしまう。
言おうとして言えずずるずると延期した結果この様だ。
飲み干さない凶一郎にあきらは不安そうに見つめた。
「凶一郎くん、紅茶…………口に合わなかった……?」
「!いや、そんなことはない」
「…………何か悩み事?私に出来ることならなんでも相談して、凶一郎くんの力になりたいの…………いつもお店に来てくれるから……」
真っ直ぐに見つめてくるあきらに鼓動が高鳴る。
……期待してはいけない、俺はただの客だ、それ以外でもそれ以上でも、ないんだ………………
凶一郎は帽子の唾を被り紅茶を飲み干して立ち上がった。
「…………美味かった、釣りはいらん」
その日以降凶一郎は喫茶店を訪れることはなかった。
基地を離れる当日。
荷物を整理し、宿舎から出ると何とあきらが待っていた。
「なっ!?!」
「あ!凶一郎くん!」
白い息をはいて嬉しそうにあきらが駆け寄ってくる。
いつから待っていたのか鼻を赤くして風邪でも引いてしまいそうなほど頬を染めている。
「今日…………ここ出ていくんだよね……?」
「……!なんでそれを…………」
「えへへ……常連さんの……えっと……綺麗な女性の人がこっそり…………」
白い髪の女が脳裏によぎり凶一郎はいらないお世話を……!!!とぐちる。
「きっと凶一郎くんのことだから私が寂しくならないように隠してくれたんだよね、凶一郎くん……優しいから」
「……………………」
「でも、お店に来てくれなかったのは……寂しいよ
お別れも言えないなんて……」
「………………すまない」
謝るとあきらはいいの、と首を横に降り三つ編みが揺れた。
「………………だから」
あきらの声が震える。
気づけば白い雪が待っていた。
「げん、き、でね、凶一郎、くん」
「!」
悲しませないように無理やり笑顔を作るあきらだが声は震え涙が溢れた。
「あ、あれ?おかしいな、ごめんね、目にゴミが入ったみたい、やだな、ちゃんと笑顔で見送るって決めてー」
と言うあきらを凶一郎は抱きしめた。
「きょう、いちろう、くん」
「あきら、俺と結婚してくれ、一緒についてきてほしい」
「………………っ、はい……」
凶一郎に抱きしめられたあきらは堰が切れたように涙をぽろぽろと流した。
それから着任した先で毎朝元給仕の奥さんに紅茶を淹れてもらっているベタ惚れ旦那がいるとまた新しい噂が流れたのだった。
[モブ目線]
「いつもご来店ありがとうございます!◯◯さん!」
喫茶店に入りにこやかに挨拶をしてくれるあきらさんに俺は思わず頬を緩めてしまう。
ここに通うようになって数年、1年ほど前に新しく入った新人のあきらさんに俺は心を奪われていた。
軍隊という厳しい職場の中、彼女の笑顔が俺の心を慰めてくれる。
彼女の笑顔があればどんな怖い上司だろうとなんだろうと乗り切れる気がした。
そんな中基地にとある男が赴任してきた。
異例の若さでの昇進、周りの女子達がカッコいいと囃し立てるそんな年下の上司の男に俺は思わず自分の存在意義を見失ってしまったがそんな事はどうでもいい。
俺にはあきらさんがいるのだから…………!
と思っていたのだが。
(何で上司まで喫茶店の常連になってるんだ!!!)
しかもあきらさんと良い感じになっているし!!!!!
いや、落ち着け、俺。
あきらさんはどの人でも笑顔で接する人だ、決してあの男の事が好きなわけではない!!!!!
何か最近あきらさんがいつもあの男が訪れる時間になるとそわそわし始めるのは関係ないんだ、そうに決まってる…………
そしていつも通り喫茶店を訪れた忌々しい上司が退店していくとすすす、となんとあきらさんが俺に近寄ってきてこっそり耳打してきたではないか。
「あの…………◯◯さん閉店後にまた来てくれますか?」
「え?………………えっ!?!?」
浮つく心を抑えて閉店後の喫茶店を訪れるとあきらさんが待ってました、と笑う。
「実は…………最近紅茶の淹れ方を勉強してまして……
昔からの常連の◯◯さんに飲んでいただきたいんです」
「そうだったんですか……」
逢引のお誘いではなかったことに少し残念に思いつつあきらさんが紅茶を淹れるのを眺める。
ともあれ俺が一番最初に彼女の紅茶を飲める事はとても嬉しい。
「でもどうして自分で紅茶を淹れようと思ったんですか?」
そう聞くとあきらさんの顔が徐々に真っ赤に染まった。
すると店の奥からマスターが出てきてニヤニヤとあきらさんを囃し立てる。
「こいつな、最近店にやってくる軍人の大将とやらが好きらしいんだよ
紅茶が好きらしくてな、頑張って美味しい紅茶を飲んでもらいたいんだとさ」
「ま、マスター!!しー!!しー!」
あきらさんは黙っててください……!と困った様子で人差し指を口に当てる。
ことん、と机にティーカップが置かれる。
「お口に合わないかもしれませんが……どうぞ」
差し出された紅茶を飲み、感想を聞かれた俺は。
「………………渋いです」
ぽろりと涙を流しつつ恋に別れを告げた。
[軍パロその後]
軍隊を辞めて凶一郎とあきらはひっそりと喫茶店を開いた。
一階が店になっていて昼は喫茶店で夜になるとバーになる。
昼は賑わいを見せる親しみやすい喫茶店な一方夜は落ち着きのあるバーに変化し、幸運なことにどちらも一定層の人々に好かれている。
元々喫茶店で働いていたあきらはウェイトレスとして凶一郎は主にバーテンダーとして働いているが喫茶店の時はあきらが、バーの時は凶一郎に異性の目が集まりやすい為自ずと常に店にいる状態となってしまった。
「ねぇあきらちゃんサービスしてくれないかしら?」
「うーーん、ちょっと聞いてきますねー」
ととと、とカウンターに寄ってくるあきらに凶一郎は✕、と腕で合図を送る。
気前が良いと客の受けがいいものの、あまり頻繁にやっていては経営が傾いてしまう。
あの頃通っていた喫茶店のマスターが時折ため息をついていたのを思い出す。
「でもでも、あのお客さんは常連さんだし…………」
「こないだもやっていただろう」
「……………………マスター……駄目……?」
カウンター越しにじっと見つめられ凶一郎はうっ、顔をそらした。
この頃あきらは自分の武器を自覚したらしくおねだりで弱い所をついてくる。
自分がベタ惚れなのを利用しての行動に凶一郎は指でくいっ、とこっちに来るように促した。
てっきり許可を得たと喜んだあきらは上機嫌で凶一郎に近づくと凶一郎はあきらの腰に手を回して耳元で囁いた。
ぼふん、と湯気が立ちみるみる真っ赤になったあきらはとぼのぼと客の方に向かった。
「…………駄目でした……」
「あらあら、そんなに顔赤くして……!今度は何言われたの??」
「な、内緒です…………!」
「きゃー!!!」
バシバシと奥さんはうちもあんなこと言われたいわー!ときゃっきゃ、と旦那を叩いた。
これでしばらくは落ち着くだろう、と凶一郎はあきらお手製の紅茶を含みながら新聞を眺めた。
時間は過ぎ夜が更けた頃、店の雰囲気はガラリと変わる。
喫茶店とはうってかわってカウンターに座る客が多く、凶一郎は客に酒を提供するバーテンダーに姿を変える。
客のほとんどは男性が多いが凶一郎目当ての女性客も多く、その様子にあきらはちょっと嫌なようで少し拗ねているのが分かった。(あまり態度には出さないが)
その分たっぶりと愛情を注いでいるつもりなのだが……
が、こちらとしては普段から嫉妬しているのであきらも嫉妬してくれていると思うと少し嬉しくも思う。
では夜の経営を辞めるか?と聞くとバーテンダーをやっている姿がかっこよくて好きなので辞めないで欲しいと言われた、そう言われてしまっては仕方がない。
客から注文されたカクテルを差し出すと常連の男に奥さんは?と聞かれたので奥に居ると顎でさす。
最初は表に立っていたあきらだが、酔っ払い客に絡まれてついにはあきらに手を出そうとする輩まで出てきて凶一郎の堪忍袋がキレてしまい今は厨房でバー用のつまみ料理を作っている。
とはいえ完全に出てこないわけではなく、客が入ってこれないカウンター内には時折出没したりするのだが。
客側からはレアキャラだと何故か噂されている。
閉店時間になり店から客が居なくなると二人きりの時間がやってくる。
二階に上がろうとしたあきらを引き止めて少し飲まないか?と凶一郎は誘った。
「滅多にカウンター席に座らないから何だか新鮮だな」
「ふっ、そうだな、お客さん、ご注文は?」
「んーー凶一郎くんに任せる、好きなようにしていいよ」
凶一郎は手早くカクテルを作るとグラスを置きカウンターの座るあきらの髪をさらりと撫でる。
「そういう言い方だと違う意味に捉えてしまうが?」
「………………!」
あきらはカクテルを煽り、酒のせいか頬を赤くして目線をそらす。
「反論がないということは返事はイエスでいいな?」
「…………」
あきらは凶一郎の手を取り指で掌をなぞる。
三文字のアルファベットを順々に書いて返事を貰った凶一郎は笑みを浮かべて掌を重ねた。
