凶一郎の婚約者さん
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「あきら姉さんが連れ去られた!?!?」
学校から帰宅した太陽は凶一郎からそう聞いて驚愕した。
「ああ、実行犯は……というとある悪徳闇会社でな、あきらがマークしてたんだが……どうやらしくったらしい
そしてたった今脅迫状が届いた
『夜桜六美を引き渡せ
さもなくば五十嵐あきらは殺す』……と
アサガオの件でお前と同様にすれば事が上手く行く……そういった感じだろう」
「そ、そんな!!!今すぐにでも助けにいかないと」
踵を返し部屋を出ようとした太陽を凶一部は待て、と引き留めた。
「助けにはいかない」
「え!?」
「そして当然六美を交換にも出さないしそんな条件はのめない
あきらには自力で脱出してもらうしかないな」
平然と述べる凶一郎に太陽はつめよった。
「凶一郎兄さん!!
条件はともかくとして何もしないんですか!!!」
「俺が守る最優先の対象は六美だ
ここで動いたらあきらに何かあれば六美を手に入れられると周りがとらえかねん」
視線を六美に向けると六美は首を横にふり顔を俯かせた。
恐らく凶一郎に動くのを止められているのだろう。
「……っ!
あきら姉さんは凶一郎兄さんの婚約者なんですよね?」
「ああ、それがどうした?」
「自分の婚約者が危険な目にあって何も思わないんですか!!!!六美だけが大切なんですか!!!」
太陽の言葉に凶一郎は眉をぴくりと動かし、鋼蜘蛛を取り出した。
「凶一郎兄さんが動かないのだったら……俺が助けに行きます!!!!」
「なっ」
「太陽!!!待って!!!あーー……」
しかし六美の制止もむなしく太陽は部屋を飛び出してしまった。
部屋に取り残されたうち二刃はため息をついた。
「全く……せっかちなあのこも困ったもんだけど……事情をちゃんと伝えないからややこしいことになったじゃないか
どうするんだい??凶一郎?」
凶一郎は予定外の事態に眉間を押さえたのだった。
捕まって数時間、来たるその時を静かに待つ。
そんなあきらの元に新しい人質が加わった、太陽である。
助かると啖呵を切ったものの、まだまだ未熟な太陽はあっさりと捕まってしまった。
(太陽……!?!?)
「もごもごごご!!!(助けに来ました!!)」
口を塞がれているからか何を言ってるか分からないが大方助けに来たといっているのだろう。
しかし……
(予定と違うんだけど……凶一郎ちゃんと説明したんだよね……??)
遡ること数日前、凶一郎が闇サイトをチェックしていた時の話だ。
闇サイトには日夜様々な危険な依頼が書き込まれている。
たいがい夜桜家に関する依頼は六美に関することがほとんどだ。
それら全てを揉み消す……というわけではないが、情報を知っておく分には損はない。
と、チェックしていた凶一郎の目にとある依頼が映った。
それはあきらを捕らえるという依頼だった。
仕事上恨みを買われやすいというのもあり、報復などは凶一郎も経験している。
だが、この依頼はあまり目にしたことがない。
そもそも、能力がない六美ならともかく……夜桜家と同等と力を持つあきらを捕らえるのは至難の技でまずそんな依頼を出す裏社会の者はいない。
にもかかわらず、その依頼だけではなくいくつか同じような依頼が多数存在していた。
凶一郎はしばし考え、答えにいきついた。
「フラワー便……か」
太陽が捕まり、六美と交換されられたあの件、裏社会には当然広まっている。
人質の交換が成立してしまった事でもしかしたら成功するかもと希望を抱いてしまった。
人質として交換条件は恐らく凶一郎本人ではなく、六美。
婚約者なら凶一郎も六美を差し出すと踏んでいるのだろう。
ふん、と凶一郎は鼻で笑った。
そもそも第一前提が間違っている、あきらが易々と捕まるわけがない。
問題はこの依頼がいつ止むかだ。
一件一件は大したことはなくとも、それが長期化かつ大量に発生すると流石のあきらも手をこまねくだろう。
そうならぬ為にも周りに捕まえても無駄、と思わさねばならない。
その為には……と浮かんだ案を凶一郎は脳内で却下する。
これが一番効率がいいのは確かだ、しかし……と代案を考えようとした凶一郎に、それは駄目だよ、と声がかかった。
「凶一郎らしくない
これは私が凶一郎の婚約者だから起きた問題、私自身が身を持って証明する必要がある」
「…………」
つらつらとあきらは自信満々に語る。
「要は交渉なんて無駄って思わせる必要があるんでしょ?」
「あきら」
「なら、わざと捕まって凶一郎が交渉を拒否するのが早い
凶一郎にとって最優先すべき人は六美ちゃんでそれは私にとっても同様なこと
凶一郎だって分かってるでしょ?」
ああ……と凶一郎は答えた。
夜桜家にとって守るべきなのは当主である六美。
天秤にかけ選ぶ対象など凶一郎自身も分かりきっていることだ。
六美とあきら、どちらかしか助けられないとなったら迷わず自分は六美を選ぶだろう。
それが自分の役目なのだから。
表情を変えない凶一郎にあきらは大丈夫と声をかける。
「仮に命を落としたとしてもその時が早まったってだけだよ
……覚悟はとっくに決まってるもの」
「なっっ」
予想だにしない回答に男はわなわなと震えた。
『もう一度言う。交渉には応じない』
「お前……何を言っているか分かっているのか!?
婚約者を捕まえたと言ったんだ!!しかも夜桜家当主の夫もだ!!!」
『だから言っているだろう、それがどうした?と。
婚約者だろうと俺の守るべき最優先は六美だ
捕まろうと死のうが俺には全く関わりのないことだ
ついでにそこのバカも死んでもらって構わない』
聞いていた情報と違う。
夜桜凶一郎は度を超した妹を溺愛する変質者というのは業界でも有名だ。
しかし、凶一郎には幼い頃からの婚約者がおり、彼女なら流石の長男も動揺するとどこかから情報が入ったのだ。
それを根拠に今回の事件を起こしたのだが……
「いいんだな!!!!殺しても!
言っておくが人質はいつでも……」
と言おうとした男に凶一郎はそれなんだがな……と頭をかいた。
『その人質……とやらはいないみたいだぞ?』
「はっ?」
そんなわけがない、確保するときに武器は全て没収した。
どうせこちらを揺さぶる為のでたらめだろうとモニターに目を映すと……
「い、いない!?!?」
婚約者どころか先ほど捕まえた当主の夫の姿もなく、監視役がただ床に倒れていた。
部屋とは音声を繋げていたはずだが、それらしき音は一切しなかった、いつの間に……と顔を真っ青にする男を凶一郎はふっと口角を上げた。
『さて、話は終わりだな』
「ま、待て!!
くそっ!応答しろ!!!誰か!」
しかし、どの部下に繋いでも誰からも反応はない。
戦闘の音は聞こえず、静まりかえるなか男は叫び続ける。
「誰か……いないのか!!!」
まるで気味の悪いホラー映画のようだ。
そう思った男の後ろにあった自動ドアが音もなく開き、一人の人物が男に向かって歩いていく。
しかし、男はそれに気が付かない。
そしてそのままーーー。
「凶一郎、終わったよ」
床に転がった男を適当にのけてあきらはあーあーとマイクの調子を見る。
『……ご苦労、一応聞いておくが勝手に突っ込んでったバカは死んだか??』
「生きてるよ、死んだとか言わない」
そう答えると凶一郎は残念だ、とやれやれと首を振り側で見守っていた六美に睨まれている。
ついでの仕事も終えたし帰るからそろそろ切るね、通信を切る。
「よし、それじゃあ帰ろっか、太陽」
そう笑うあきらに太陽はいまいち全容が掴めぬまま、はい、と頷いたのだった。
「はあ~~~太陽無事で良かった~~
いやまぁあきらお姉ちゃんついてるし多分大丈夫だとは思ったけど」
「お疲れ様、六美
……凶一郎、心配なのは分かるけどちょっと落ち着きがないよ」
「……まるで意味がわからんな
俺はいつも通りだが???」
そう言う凶一郎だったが、作戦が始まって先ほどの通信の時以外凶一郎は時折椅子を立ったり、座ったり……部屋をどことなく歩き回る……など滅多にしない行動をとっていた。
認めようとしない凶一郎に二刃はやれやれ、と呆れた態度をとる。
「あっ、二人とも帰ってきたみたい」
六美がそう言うと凶一郎はぴたりと不審な動きを止め、急いで座っていた椅子に座り直す。
それからほどなくして、あきらと太陽が部屋に入ってきた。
「ただいまー」
「た、ただいま……」
「おかえり、太陽!大丈夫?怪我はない?」
「あ、ああ、あきら姉さんのお陰で……」
太陽はハハハ、と笑う。
ぶっちゃけその通りなのである。
最初に監視役、そしてその後は順々に敵を倒していくあきらだったが、動きも素早いながらも一切音を立てなかった。
最後にモニター室にいた男も倒される直前まであきらの存在に気付かなかった。
それくらいあきらは気配の消し方が上手かった。
道中、あまりにも素早いのであきらを見失い、後ろから声をかけられた太陽が思わず声を上げそうになって作戦が台無しになるところだった。
「すみません、俺……
作戦だとは知らなくて……足手まといでしたね」
「あはは、流石に今回はひやっとしたかな……
まぁ、いいよ、過ぎた話だし」
そんな風に談笑していると椅子に座っていた凶一郎がカップを机に置いてつかつかとあきらに寄ってきた。
「どう?サイトの方は」
「読み通り大方消えたようだな
まぁ残りのやつらもそのうち削除するだろう
……それより聞く必要はないとは思うが怪我はないだろうな」
「ん?ないよ?」
というと凶一郎はそうか、と答えてあきらの頬を突然軽く引っ張った。
「!?!?ひょ、ひょういちろう??」
いきなりどうしたのだろうと聞こうとしたが、凶一郎が頬をぐにぐに歪ますので聞くに聞けない。
周りの兄弟も何事かと遠巻きに見守っている。
一分ほどだろうか、ようやくあきらの頬から手を離した。
「ど、どうしたの??」
「ふん……気まぐれだ」
と言って凶一郎は出ていってしまった。
あまりにも唐突な事でびっくりしてしまい、ショックを受ける暇もなかったあきらはう~~んと考えた。
(なんだろう……太陽が無傷だったのがよほど嫌だったのかな??)
凶一郎は些細な事で気分を損する事が多い。
まぁ、そんなとこなのかな、と真の理由を気付かないあきらだったが、見守っていた太陽はその理由が何となく分かる気がした。
婿入りしてから日々凶一郎に訓練(という名の嫌がらせも含む)を受け、まだ完全にというわけではないが少しずつ凶一郎の事が分かってきた。
きっと内心は心配だったんだろうなと思い太陽は凶一郎にかけた言葉を思い出した。
『自分の婚約者が危険な目にあって何も思わないんですか!!!!』
(あ……俺、なんてことを
後でちゃんと謝らないと)
そう思った太陽だった。
学校から帰宅した太陽は凶一郎からそう聞いて驚愕した。
「ああ、実行犯は……というとある悪徳闇会社でな、あきらがマークしてたんだが……どうやらしくったらしい
そしてたった今脅迫状が届いた
『夜桜六美を引き渡せ
さもなくば五十嵐あきらは殺す』……と
アサガオの件でお前と同様にすれば事が上手く行く……そういった感じだろう」
「そ、そんな!!!今すぐにでも助けにいかないと」
踵を返し部屋を出ようとした太陽を凶一部は待て、と引き留めた。
「助けにはいかない」
「え!?」
「そして当然六美を交換にも出さないしそんな条件はのめない
あきらには自力で脱出してもらうしかないな」
平然と述べる凶一郎に太陽はつめよった。
「凶一郎兄さん!!
条件はともかくとして何もしないんですか!!!」
「俺が守る最優先の対象は六美だ
ここで動いたらあきらに何かあれば六美を手に入れられると周りがとらえかねん」
視線を六美に向けると六美は首を横にふり顔を俯かせた。
恐らく凶一郎に動くのを止められているのだろう。
「……っ!
あきら姉さんは凶一郎兄さんの婚約者なんですよね?」
「ああ、それがどうした?」
「自分の婚約者が危険な目にあって何も思わないんですか!!!!六美だけが大切なんですか!!!」
太陽の言葉に凶一郎は眉をぴくりと動かし、鋼蜘蛛を取り出した。
「凶一郎兄さんが動かないのだったら……俺が助けに行きます!!!!」
「なっ」
「太陽!!!待って!!!あーー……」
しかし六美の制止もむなしく太陽は部屋を飛び出してしまった。
部屋に取り残されたうち二刃はため息をついた。
「全く……せっかちなあのこも困ったもんだけど……事情をちゃんと伝えないからややこしいことになったじゃないか
どうするんだい??凶一郎?」
凶一郎は予定外の事態に眉間を押さえたのだった。
捕まって数時間、来たるその時を静かに待つ。
そんなあきらの元に新しい人質が加わった、太陽である。
助かると啖呵を切ったものの、まだまだ未熟な太陽はあっさりと捕まってしまった。
(太陽……!?!?)
「もごもごごご!!!(助けに来ました!!)」
口を塞がれているからか何を言ってるか分からないが大方助けに来たといっているのだろう。
しかし……
(予定と違うんだけど……凶一郎ちゃんと説明したんだよね……??)
遡ること数日前、凶一郎が闇サイトをチェックしていた時の話だ。
闇サイトには日夜様々な危険な依頼が書き込まれている。
たいがい夜桜家に関する依頼は六美に関することがほとんどだ。
それら全てを揉み消す……というわけではないが、情報を知っておく分には損はない。
と、チェックしていた凶一郎の目にとある依頼が映った。
それはあきらを捕らえるという依頼だった。
仕事上恨みを買われやすいというのもあり、報復などは凶一郎も経験している。
だが、この依頼はあまり目にしたことがない。
そもそも、能力がない六美ならともかく……夜桜家と同等と力を持つあきらを捕らえるのは至難の技でまずそんな依頼を出す裏社会の者はいない。
にもかかわらず、その依頼だけではなくいくつか同じような依頼が多数存在していた。
凶一郎はしばし考え、答えにいきついた。
「フラワー便……か」
太陽が捕まり、六美と交換されられたあの件、裏社会には当然広まっている。
人質の交換が成立してしまった事でもしかしたら成功するかもと希望を抱いてしまった。
人質として交換条件は恐らく凶一郎本人ではなく、六美。
婚約者なら凶一郎も六美を差し出すと踏んでいるのだろう。
ふん、と凶一郎は鼻で笑った。
そもそも第一前提が間違っている、あきらが易々と捕まるわけがない。
問題はこの依頼がいつ止むかだ。
一件一件は大したことはなくとも、それが長期化かつ大量に発生すると流石のあきらも手をこまねくだろう。
そうならぬ為にも周りに捕まえても無駄、と思わさねばならない。
その為には……と浮かんだ案を凶一郎は脳内で却下する。
これが一番効率がいいのは確かだ、しかし……と代案を考えようとした凶一郎に、それは駄目だよ、と声がかかった。
「凶一郎らしくない
これは私が凶一郎の婚約者だから起きた問題、私自身が身を持って証明する必要がある」
「…………」
つらつらとあきらは自信満々に語る。
「要は交渉なんて無駄って思わせる必要があるんでしょ?」
「あきら」
「なら、わざと捕まって凶一郎が交渉を拒否するのが早い
凶一郎にとって最優先すべき人は六美ちゃんでそれは私にとっても同様なこと
凶一郎だって分かってるでしょ?」
ああ……と凶一郎は答えた。
夜桜家にとって守るべきなのは当主である六美。
天秤にかけ選ぶ対象など凶一郎自身も分かりきっていることだ。
六美とあきら、どちらかしか助けられないとなったら迷わず自分は六美を選ぶだろう。
それが自分の役目なのだから。
表情を変えない凶一郎にあきらは大丈夫と声をかける。
「仮に命を落としたとしてもその時が早まったってだけだよ
……覚悟はとっくに決まってるもの」
「なっっ」
予想だにしない回答に男はわなわなと震えた。
『もう一度言う。交渉には応じない』
「お前……何を言っているか分かっているのか!?
婚約者を捕まえたと言ったんだ!!しかも夜桜家当主の夫もだ!!!」
『だから言っているだろう、それがどうした?と。
婚約者だろうと俺の守るべき最優先は六美だ
捕まろうと死のうが俺には全く関わりのないことだ
ついでにそこのバカも死んでもらって構わない』
聞いていた情報と違う。
夜桜凶一郎は度を超した妹を溺愛する変質者というのは業界でも有名だ。
しかし、凶一郎には幼い頃からの婚約者がおり、彼女なら流石の長男も動揺するとどこかから情報が入ったのだ。
それを根拠に今回の事件を起こしたのだが……
「いいんだな!!!!殺しても!
言っておくが人質はいつでも……」
と言おうとした男に凶一郎はそれなんだがな……と頭をかいた。
『その人質……とやらはいないみたいだぞ?』
「はっ?」
そんなわけがない、確保するときに武器は全て没収した。
どうせこちらを揺さぶる為のでたらめだろうとモニターに目を映すと……
「い、いない!?!?」
婚約者どころか先ほど捕まえた当主の夫の姿もなく、監視役がただ床に倒れていた。
部屋とは音声を繋げていたはずだが、それらしき音は一切しなかった、いつの間に……と顔を真っ青にする男を凶一郎はふっと口角を上げた。
『さて、話は終わりだな』
「ま、待て!!
くそっ!応答しろ!!!誰か!」
しかし、どの部下に繋いでも誰からも反応はない。
戦闘の音は聞こえず、静まりかえるなか男は叫び続ける。
「誰か……いないのか!!!」
まるで気味の悪いホラー映画のようだ。
そう思った男の後ろにあった自動ドアが音もなく開き、一人の人物が男に向かって歩いていく。
しかし、男はそれに気が付かない。
そしてそのままーーー。
「凶一郎、終わったよ」
床に転がった男を適当にのけてあきらはあーあーとマイクの調子を見る。
『……ご苦労、一応聞いておくが勝手に突っ込んでったバカは死んだか??』
「生きてるよ、死んだとか言わない」
そう答えると凶一郎は残念だ、とやれやれと首を振り側で見守っていた六美に睨まれている。
ついでの仕事も終えたし帰るからそろそろ切るね、通信を切る。
「よし、それじゃあ帰ろっか、太陽」
そう笑うあきらに太陽はいまいち全容が掴めぬまま、はい、と頷いたのだった。
「はあ~~~太陽無事で良かった~~
いやまぁあきらお姉ちゃんついてるし多分大丈夫だとは思ったけど」
「お疲れ様、六美
……凶一郎、心配なのは分かるけどちょっと落ち着きがないよ」
「……まるで意味がわからんな
俺はいつも通りだが???」
そう言う凶一郎だったが、作戦が始まって先ほどの通信の時以外凶一郎は時折椅子を立ったり、座ったり……部屋をどことなく歩き回る……など滅多にしない行動をとっていた。
認めようとしない凶一郎に二刃はやれやれ、と呆れた態度をとる。
「あっ、二人とも帰ってきたみたい」
六美がそう言うと凶一郎はぴたりと不審な動きを止め、急いで座っていた椅子に座り直す。
それからほどなくして、あきらと太陽が部屋に入ってきた。
「ただいまー」
「た、ただいま……」
「おかえり、太陽!大丈夫?怪我はない?」
「あ、ああ、あきら姉さんのお陰で……」
太陽はハハハ、と笑う。
ぶっちゃけその通りなのである。
最初に監視役、そしてその後は順々に敵を倒していくあきらだったが、動きも素早いながらも一切音を立てなかった。
最後にモニター室にいた男も倒される直前まであきらの存在に気付かなかった。
それくらいあきらは気配の消し方が上手かった。
道中、あまりにも素早いのであきらを見失い、後ろから声をかけられた太陽が思わず声を上げそうになって作戦が台無しになるところだった。
「すみません、俺……
作戦だとは知らなくて……足手まといでしたね」
「あはは、流石に今回はひやっとしたかな……
まぁ、いいよ、過ぎた話だし」
そんな風に談笑していると椅子に座っていた凶一郎がカップを机に置いてつかつかとあきらに寄ってきた。
「どう?サイトの方は」
「読み通り大方消えたようだな
まぁ残りのやつらもそのうち削除するだろう
……それより聞く必要はないとは思うが怪我はないだろうな」
「ん?ないよ?」
というと凶一郎はそうか、と答えてあきらの頬を突然軽く引っ張った。
「!?!?ひょ、ひょういちろう??」
いきなりどうしたのだろうと聞こうとしたが、凶一郎が頬をぐにぐに歪ますので聞くに聞けない。
周りの兄弟も何事かと遠巻きに見守っている。
一分ほどだろうか、ようやくあきらの頬から手を離した。
「ど、どうしたの??」
「ふん……気まぐれだ」
と言って凶一郎は出ていってしまった。
あまりにも唐突な事でびっくりしてしまい、ショックを受ける暇もなかったあきらはう~~んと考えた。
(なんだろう……太陽が無傷だったのがよほど嫌だったのかな??)
凶一郎は些細な事で気分を損する事が多い。
まぁ、そんなとこなのかな、と真の理由を気付かないあきらだったが、見守っていた太陽はその理由が何となく分かる気がした。
婿入りしてから日々凶一郎に訓練(という名の嫌がらせも含む)を受け、まだ完全にというわけではないが少しずつ凶一郎の事が分かってきた。
きっと内心は心配だったんだろうなと思い太陽は凶一郎にかけた言葉を思い出した。
『自分の婚約者が危険な目にあって何も思わないんですか!!!!』
(あ……俺、なんてことを
後でちゃんと謝らないと)
そう思った太陽だった。