凶一郎の婚約者さん
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なんでこんなことに……と太陽は困惑していた。
朝起きたら六美がウェディング姿になっているし、自分もタキシードに無理やり着替えさせられた。
二刃が言うにはこれから裏業界用の結婚披露宴が行われるらしい。
急な事に思考が追い付かない太陽を横に六美は二刃にこそりと聞いた。
「凶一郎お兄ちゃんは?今朝だいぶ泣いてたけど……」
「流石にもう会場に向かったよ、あきらと一緒にね」
やれやれ、と二刃は凶一郎の過度な六美愛にうんざりする様子をとった。
忙しい業界人に合わせる為急遽決まった披露宴だが、何を思ったか凶一郎は年齢に合わずだだをこね六美他妹弟を困らせていた。
特にウェディング姿を太陽に見せたくなかったらしくそれはもう酷い有り様だった。
そんな凶一郎は伝統に従い、長子が着る「めで鯛スーツ」を着用し、一足先に会場入りしていた。
その隣には婚約者であるあきらも控えている。
そんな二人を招待客であるスパイゴシップ誌を発行しているスパイデーの記者二人が観察していた。
「緊張しますね……先輩」
「ああ……本来なら編集長が来るところだったんだが……」
生憎急用が入り、代役として選ばれたのだ。
「そういえばあの二人はいつ結婚するんでしょうか?」
「さぁな、噂ではそろそろじゃないかと言われてるが……」
「あ、じゃあ、僕聞いてきますよ!」
「ちょ、待て!!」
先輩の静止もむなしく新入社員は意気揚々とあきらの元へと近付いていく。
それがどんなに危険な事であるかも知らずに。
「あのーー!!すみません!
あきらさんよろしいですか……あれ?」
さっきまで凶一郎と話していたあきらの姿がない。
確かにさっきまでいたはずなのに……と思った新入社員はぞくりと悪寒が走るのを感じた。
ひゅっと音もなく冷たいナニかが首元に当たるのを感じたその時、背後に迫った人物の手を凶一郎の鋼蜘蛛の糸が絡めとった。
「全く、せっかくの披露宴を台無しにする気か?あきら」
はぁ……とため息をついた凶一郎に新入社員がえ!?え!?と混乱する中、慌てた様子で先輩が来た。
「すみません!!!うちのが迷惑をかけました!
婚約者には極力近付くなって言っただろうかが……」
「こちらこそすまん、ほら連れていけ」
記者が離れたのを確認し、拘束を解く。
あきらはスパイデーのみならず、ゴシップ業界における要注意人物とされている。
というのもゴシップ業界というものは好き勝手にあることない事を書きたい放題で、凶一郎もそう書かれる事が多い。
そんなゴシップ業界をあきらはそれはもう嫌っており、嫌うだけならいいのだが取材しにくる記者を度々襲うようになってしまった。
そんな事もあって現在取材したくないスパイナンバーワンに輝いてしまっている。
とはいえ、下手に暴れると返って夜桜家の地位を落とすことになるので本人もなるべく押さえようとは思っているようで。
「ごめんなさい、凶一郎……」
しゅん……と落ち込むあきらの頭を凶一郎はぽんぽんと撫でる。
「その為に俺がそばでついてるんだろうが
気にするな
ほら、そろそろ始まるぞ」
という凶一郎にあきらはふと凶一郎のネクタイの色に触れた。
「あれ?ネクタイその色じゃ不味くない……?」
「ん?ああ、しかしもう時間がないから仕方ないな、けっっっしてわざとではないならな」
うん……、と意図を察したあきらはこれ以上追及せず披露宴の方に集中することにした。
披露宴は無事段取りよく進むと思われたが案の定凶一郎が暴走している。
このままでは太陽の命が危ない、そろそろ止めようかと思ったその時、懐かしい声が聞こえた。
その声がした方を向けば、大きな画面にとある女性が映っていた。
そう、凶一郎達の母である夜桜零である。
どうやら、将来六美の披露宴で凶一郎が暴走した際に止めれるよう十数年前にビデオレターを撮っていて、二刃に預けていたらしい。
同じくビデオに映っている凶一郎達も当然幼い、……があきらの姿はなかった。
まぁ、こういう未来に向けたビデオレターは家族で撮るのが当たり前だよね、と自身を宥める。
それにしてもビデオの中の凶一郎達はとても楽しそうに笑っていて、皆懐かしくもどこか寂しそうな表情で見ていた。
……あれからもう4、5年。
時が経つのは早くて、皆ようやく前を向けるようにはなったけれど、傷が癒えたわけではない。
かくいうあきらも母のように慕っていた零が亡くなったと聞いた時には酷くショックを受けた。
(でも皆の方がずっと辛いよね)
そう考えているとふと客席の方から零の旦那、つまり凶一郎達の父の話が聞こえ、ぴくり、と凶一郎の眉が僅かに動いた気がした。
六美の旦那、太陽に向けたメッセージがしめくくられ、披露宴は終わりに近付いた。
後は太陽と六美がバージンロードを歩き終わるまで弾幕を二人から守るのみだ。
「いくぞ、あきら」
「う、うん」
少し考え事をしていて、一歩遅れて護衛に回る。
そして、銃弾の嵐の中、二人を守りながらあきらは先ほどの凶一郎の表情について考えていた。
何事もないように振る舞っていていたが、何も思っているはずがない。
あの日、おそらくなにかがあった。
現在、夜桜家では父に関する話題は禁句とされている中、それを聞こうとは思わないし、凶一郎も話したくはないのだろう。
けれど、もし凶一郎が話したいと思うのなら。
あのどこか孤独そうな背中に寄り添えるのなら。
(私はいつでも力になるから、凶一郎)
そう誓ったのだった。
朝起きたら六美がウェディング姿になっているし、自分もタキシードに無理やり着替えさせられた。
二刃が言うにはこれから裏業界用の結婚披露宴が行われるらしい。
急な事に思考が追い付かない太陽を横に六美は二刃にこそりと聞いた。
「凶一郎お兄ちゃんは?今朝だいぶ泣いてたけど……」
「流石にもう会場に向かったよ、あきらと一緒にね」
やれやれ、と二刃は凶一郎の過度な六美愛にうんざりする様子をとった。
忙しい業界人に合わせる為急遽決まった披露宴だが、何を思ったか凶一郎は年齢に合わずだだをこね六美他妹弟を困らせていた。
特にウェディング姿を太陽に見せたくなかったらしくそれはもう酷い有り様だった。
そんな凶一郎は伝統に従い、長子が着る「めで鯛スーツ」を着用し、一足先に会場入りしていた。
その隣には婚約者であるあきらも控えている。
そんな二人を招待客であるスパイゴシップ誌を発行しているスパイデーの記者二人が観察していた。
「緊張しますね……先輩」
「ああ……本来なら編集長が来るところだったんだが……」
生憎急用が入り、代役として選ばれたのだ。
「そういえばあの二人はいつ結婚するんでしょうか?」
「さぁな、噂ではそろそろじゃないかと言われてるが……」
「あ、じゃあ、僕聞いてきますよ!」
「ちょ、待て!!」
先輩の静止もむなしく新入社員は意気揚々とあきらの元へと近付いていく。
それがどんなに危険な事であるかも知らずに。
「あのーー!!すみません!
あきらさんよろしいですか……あれ?」
さっきまで凶一郎と話していたあきらの姿がない。
確かにさっきまでいたはずなのに……と思った新入社員はぞくりと悪寒が走るのを感じた。
ひゅっと音もなく冷たいナニかが首元に当たるのを感じたその時、背後に迫った人物の手を凶一郎の鋼蜘蛛の糸が絡めとった。
「全く、せっかくの披露宴を台無しにする気か?あきら」
はぁ……とため息をついた凶一郎に新入社員がえ!?え!?と混乱する中、慌てた様子で先輩が来た。
「すみません!!!うちのが迷惑をかけました!
婚約者には極力近付くなって言っただろうかが……」
「こちらこそすまん、ほら連れていけ」
記者が離れたのを確認し、拘束を解く。
あきらはスパイデーのみならず、ゴシップ業界における要注意人物とされている。
というのもゴシップ業界というものは好き勝手にあることない事を書きたい放題で、凶一郎もそう書かれる事が多い。
そんなゴシップ業界をあきらはそれはもう嫌っており、嫌うだけならいいのだが取材しにくる記者を度々襲うようになってしまった。
そんな事もあって現在取材したくないスパイナンバーワンに輝いてしまっている。
とはいえ、下手に暴れると返って夜桜家の地位を落とすことになるので本人もなるべく押さえようとは思っているようで。
「ごめんなさい、凶一郎……」
しゅん……と落ち込むあきらの頭を凶一郎はぽんぽんと撫でる。
「その為に俺がそばでついてるんだろうが
気にするな
ほら、そろそろ始まるぞ」
という凶一郎にあきらはふと凶一郎のネクタイの色に触れた。
「あれ?ネクタイその色じゃ不味くない……?」
「ん?ああ、しかしもう時間がないから仕方ないな、けっっっしてわざとではないならな」
うん……、と意図を察したあきらはこれ以上追及せず披露宴の方に集中することにした。
披露宴は無事段取りよく進むと思われたが案の定凶一郎が暴走している。
このままでは太陽の命が危ない、そろそろ止めようかと思ったその時、懐かしい声が聞こえた。
その声がした方を向けば、大きな画面にとある女性が映っていた。
そう、凶一郎達の母である夜桜零である。
どうやら、将来六美の披露宴で凶一郎が暴走した際に止めれるよう十数年前にビデオレターを撮っていて、二刃に預けていたらしい。
同じくビデオに映っている凶一郎達も当然幼い、……があきらの姿はなかった。
まぁ、こういう未来に向けたビデオレターは家族で撮るのが当たり前だよね、と自身を宥める。
それにしてもビデオの中の凶一郎達はとても楽しそうに笑っていて、皆懐かしくもどこか寂しそうな表情で見ていた。
……あれからもう4、5年。
時が経つのは早くて、皆ようやく前を向けるようにはなったけれど、傷が癒えたわけではない。
かくいうあきらも母のように慕っていた零が亡くなったと聞いた時には酷くショックを受けた。
(でも皆の方がずっと辛いよね)
そう考えているとふと客席の方から零の旦那、つまり凶一郎達の父の話が聞こえ、ぴくり、と凶一郎の眉が僅かに動いた気がした。
六美の旦那、太陽に向けたメッセージがしめくくられ、披露宴は終わりに近付いた。
後は太陽と六美がバージンロードを歩き終わるまで弾幕を二人から守るのみだ。
「いくぞ、あきら」
「う、うん」
少し考え事をしていて、一歩遅れて護衛に回る。
そして、銃弾の嵐の中、二人を守りながらあきらは先ほどの凶一郎の表情について考えていた。
何事もないように振る舞っていていたが、何も思っているはずがない。
あの日、おそらくなにかがあった。
現在、夜桜家では父に関する話題は禁句とされている中、それを聞こうとは思わないし、凶一郎も話したくはないのだろう。
けれど、もし凶一郎が話したいと思うのなら。
あのどこか孤独そうな背中に寄り添えるのなら。
(私はいつでも力になるから、凶一郎)
そう誓ったのだった。