凶一郎の婚約者さん
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「おはようございます……ってまだ誰も起きてないよな……あ」
朝早く起床した太陽がリビングに向かうとちょうどあきらが家を出る所だった。
「おはよう、太陽くん、早起きだね」
「あ……何か今日は早く目が覚めてしまって
あきら姉さんはこれから任務ですか?」
と聞くとあきらは、まぁそんなとこかな、と微笑んだ。
「っと、皆起きてくる前に行かないと
行ってきます」
まだ日も昇らない時間帯にあきらは夜桜邸から出ていくのを見送るとちょうど二刃が起きてきた、まだ眠たいのか欠伸をしている。
「……もしかしてもうあきら出ていったかい?」
「はい、先ほど、何かご用でもあったんですか?」
「まぁそんなとこさね
……全くあの子も困ったもんだね
せっかくの誕生日なのに直接祝いの言葉さえ言わさせてくれないんだから」
と言う二刃に太陽は目を見開き驚いた。
「えっっ、今日あきら姉さんの誕生日なんですか!?
しまった、何にもプレゼントとか用意してない……」
「ああそれなんだけどね
あんまり気の効いた物とか送るくらいなら最悪何も贈らない方がいいよ」
「え……そ、それは流石に……」
二刃はそうだろうね、とため息をつく。
「これはあきらに限ったことなんだけどね
祝うのも最小限にしているのさ
流石に何も贈らないのは気が引けるから何かしらは用意するけれど……」
二刃が言うにはあきらは自分の誕生日を祝われる事が少し嫌なのだとか、最初は盛大に祝っていたらしいがあきらがあんまりにも嬉しそうな表情をしないので年々簡単な物になっているらしい。
「こちら側としてはせめて、おめでとう、とだけでも言いたいんだけど……」
「あの、何でそこまであきら姉さんはそんなに祝われる事に対して嫌がるんですか?」
そう問いかける太陽に二刃は目を伏せた。
「まぁ、そのうち話さなきゃいけないことだしね、本当は本人の口から言うべきだろうけど……
あきらの母はあきらを生んだ日に亡くなってね
つまりあの子の誕生日は母親の命日でもあるわけだよ」
「そうだったんですか……」
「ちなみにこの話はうちと関係ある話でもあってね……」
二刃は自分で淹れたお茶を啜りふう、と息をはいた。
「話はそうさねぇ……
まず何故あきら夜桜に嫁ぐ事になったのか……それから話さなきゃだねぇ
結論から言うとあきらは夜桜の血を引いているんだよ」
「……!つまりご親戚ということなんですね
……て、あれ?」
太陽はふと最初聞いた話を思い出した。
「確か夜桜の血は門外不出……という話では?」
「そうだよ、だからうちは代々婿を取ることになっているんだけど…
わたしのひいおばあちゃんが当主の頃とある子供が生まれてね
聞いただろうけど夜桜の遺伝子を完全に引き継ぐのは当主の子供のみ、そのとある子供は何の因果か何も受け継なかった」
二刃は説明を省いたが、夜桜の超人たる要素は血液に含まれるソメイニンという特殊な物質からきている。
そのソメイニンはほんの微量だが普通の人間にも含まれていたりするのだが……その子供はその普通レベルにまで落ちていた。
「ご存知の通り、うちは裏家業を営んでるわけだけど……
流石に何の能力もない人間に仕事をさせるわけにはいかないからか、しばらく表社会で過ごしていたらしいが……
そんなある日、この人と結婚したいって裏業界じゃない人間を連れてきた、と」
「当時のご当主は許可されたんですか?」
「いいや、いくら能力がなくとも夜桜の一員を外には出すわけにはいかない
けれど最終的には特例として許可を出したらしい」
それは何故ですか?と太陽が問うと二刃はお茶を再び啜った。
「相手が相手にだけに断りきれなかったのさ
夜桜は江戸の忍を起源としていたけれど……その江戸時代、仕え先にもなっていた城主の子孫だけにね」
「今後嫁に出したとして夜桜の遺伝子が発現する可能性がほぼ0と診断された上で嫁に出して……
やがて娘が生まれ、その娘も夜桜らしい特徴はなく何もなかったことで何も問題はない……と思われたんだけど
あきらが生まれたことで状況は一変してね」
これまで何の問題もなく子孫が繁栄する中、突如としてあきらは生まれたのと同時に夜桜としての能力を開花させた。
両目を桜色に染め上げたあきらは産声一つ上げずにこの世に誕生した。
そして何の因果かあきらが生まれると同時にあきらの母は息を引き取ったのだった。
「それにしても何で急にそんな事が起こったんでしょうか……?」
「そうだね、父が言うには恐らく先祖返りだろうと言っていたけど……
そんなわけで夜桜としての力が発現した以上ほっとくわけにもいかなくてね
血をこれ以上広げない為にもうちに嫁ぐことになったのさ」
うちにきてからの話はまた今度にしようかね、と二刃が話をうちきったことで話は終わった。
とある墓地にて一人あきらは墓の前で佇んでいる。
その表情は暗く、今にも雨が降りそうな空と似ていた。
スマホの震動であきらははっと我にかえり、画面を見てみれば六美からのメッセージだった。
返信を返し、ため息をつく。
やはりここに来るとどうも暗い気持ちになって考え事をしてしまう。
そうしているうちにとっくに日は暮れてしまいには雨まで降ってきてしまった。
ポツポツと雨が顔に当たったが傘をさす気が起こらずそのままうたれてようか、なんて頭をよぎった時、当たっていた雨が止んだ。
「?……!」
「やはりここにいたか」
「凶一郎……」
後ろを見ると凶一郎が傘をさして立っていた。
どうやらわざわざ迎えに来てくれたらしい。
「そろそろ帰るぞ、六美達が待ってる」
「うん」
頷き鞄から折り畳み傘を出そうとすると凶一郎に止められた。
「傘一本あれば十分だろう」
「え……いやでも」
それでは相合傘となってしまうと離れようとしたあきらの手を凶一郎が掴み無理やり傘の中に入らせた。
ぐっと距離が縮まったのと手を繋いでるのであきらの顔が朱に染まった。
「さ、帰るぞ」
「や、で、でも、誰かにみ、見られたら」
夜桜家はスパイ業界内で有名な存在だ。
何かしらスキャンダルでもあればこぞって記者が記事にしてしまう。
それを危惧したのだが凶一郎は特に困ることはないだろうと全く気にしていなかった。
「別に記事なんていくらでも書かせればいいだろう、俺とお前は婚約者なんだからな」
「そ、それはそうなんだけど……」
手を繋ぐ必要性はないのに、と頭がこんがらがる。
こんなこと滅多にしないのに何で???と思考が滅茶苦茶になっていると凶一郎が口を開いた。
「こうでもしないと更に落ち込むだろう」
わたわたしていたあきらはぴたりと動きをとめた。
「自分を責めてしまう気持ちは分かるが、お前のせいじゃない」
「…………うん、分かってる、分かってるの
でも……」
分かってるけどこの日が来る度にそう思ってしまう、私が生まれたせいで母は死んでしまったのだと。
周りに責めなくてもいいと言われても尚その気持ちが消えない。
そんな自分が素直に誕生日を祝われてもいいのだろうか、と思ってしまう。
そんな事を考えていると繋いでいた手にぎゅっと力が込められた、まるで気にしなくていい、と言われているみたいに。
まだ全然消えたわけではないけれど、この時だけは少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
朝早く起床した太陽がリビングに向かうとちょうどあきらが家を出る所だった。
「おはよう、太陽くん、早起きだね」
「あ……何か今日は早く目が覚めてしまって
あきら姉さんはこれから任務ですか?」
と聞くとあきらは、まぁそんなとこかな、と微笑んだ。
「っと、皆起きてくる前に行かないと
行ってきます」
まだ日も昇らない時間帯にあきらは夜桜邸から出ていくのを見送るとちょうど二刃が起きてきた、まだ眠たいのか欠伸をしている。
「……もしかしてもうあきら出ていったかい?」
「はい、先ほど、何かご用でもあったんですか?」
「まぁそんなとこさね
……全くあの子も困ったもんだね
せっかくの誕生日なのに直接祝いの言葉さえ言わさせてくれないんだから」
と言う二刃に太陽は目を見開き驚いた。
「えっっ、今日あきら姉さんの誕生日なんですか!?
しまった、何にもプレゼントとか用意してない……」
「ああそれなんだけどね
あんまり気の効いた物とか送るくらいなら最悪何も贈らない方がいいよ」
「え……そ、それは流石に……」
二刃はそうだろうね、とため息をつく。
「これはあきらに限ったことなんだけどね
祝うのも最小限にしているのさ
流石に何も贈らないのは気が引けるから何かしらは用意するけれど……」
二刃が言うにはあきらは自分の誕生日を祝われる事が少し嫌なのだとか、最初は盛大に祝っていたらしいがあきらがあんまりにも嬉しそうな表情をしないので年々簡単な物になっているらしい。
「こちら側としてはせめて、おめでとう、とだけでも言いたいんだけど……」
「あの、何でそこまであきら姉さんはそんなに祝われる事に対して嫌がるんですか?」
そう問いかける太陽に二刃は目を伏せた。
「まぁ、そのうち話さなきゃいけないことだしね、本当は本人の口から言うべきだろうけど……
あきらの母はあきらを生んだ日に亡くなってね
つまりあの子の誕生日は母親の命日でもあるわけだよ」
「そうだったんですか……」
「ちなみにこの話はうちと関係ある話でもあってね……」
二刃は自分で淹れたお茶を啜りふう、と息をはいた。
「話はそうさねぇ……
まず何故あきら夜桜に嫁ぐ事になったのか……それから話さなきゃだねぇ
結論から言うとあきらは夜桜の血を引いているんだよ」
「……!つまりご親戚ということなんですね
……て、あれ?」
太陽はふと最初聞いた話を思い出した。
「確か夜桜の血は門外不出……という話では?」
「そうだよ、だからうちは代々婿を取ることになっているんだけど…
わたしのひいおばあちゃんが当主の頃とある子供が生まれてね
聞いただろうけど夜桜の遺伝子を完全に引き継ぐのは当主の子供のみ、そのとある子供は何の因果か何も受け継なかった」
二刃は説明を省いたが、夜桜の超人たる要素は血液に含まれるソメイニンという特殊な物質からきている。
そのソメイニンはほんの微量だが普通の人間にも含まれていたりするのだが……その子供はその普通レベルにまで落ちていた。
「ご存知の通り、うちは裏家業を営んでるわけだけど……
流石に何の能力もない人間に仕事をさせるわけにはいかないからか、しばらく表社会で過ごしていたらしいが……
そんなある日、この人と結婚したいって裏業界じゃない人間を連れてきた、と」
「当時のご当主は許可されたんですか?」
「いいや、いくら能力がなくとも夜桜の一員を外には出すわけにはいかない
けれど最終的には特例として許可を出したらしい」
それは何故ですか?と太陽が問うと二刃はお茶を再び啜った。
「相手が相手にだけに断りきれなかったのさ
夜桜は江戸の忍を起源としていたけれど……その江戸時代、仕え先にもなっていた城主の子孫だけにね」
「今後嫁に出したとして夜桜の遺伝子が発現する可能性がほぼ0と診断された上で嫁に出して……
やがて娘が生まれ、その娘も夜桜らしい特徴はなく何もなかったことで何も問題はない……と思われたんだけど
あきらが生まれたことで状況は一変してね」
これまで何の問題もなく子孫が繁栄する中、突如としてあきらは生まれたのと同時に夜桜としての能力を開花させた。
両目を桜色に染め上げたあきらは産声一つ上げずにこの世に誕生した。
そして何の因果かあきらが生まれると同時にあきらの母は息を引き取ったのだった。
「それにしても何で急にそんな事が起こったんでしょうか……?」
「そうだね、父が言うには恐らく先祖返りだろうと言っていたけど……
そんなわけで夜桜としての力が発現した以上ほっとくわけにもいかなくてね
血をこれ以上広げない為にもうちに嫁ぐことになったのさ」
うちにきてからの話はまた今度にしようかね、と二刃が話をうちきったことで話は終わった。
とある墓地にて一人あきらは墓の前で佇んでいる。
その表情は暗く、今にも雨が降りそうな空と似ていた。
スマホの震動であきらははっと我にかえり、画面を見てみれば六美からのメッセージだった。
返信を返し、ため息をつく。
やはりここに来るとどうも暗い気持ちになって考え事をしてしまう。
そうしているうちにとっくに日は暮れてしまいには雨まで降ってきてしまった。
ポツポツと雨が顔に当たったが傘をさす気が起こらずそのままうたれてようか、なんて頭をよぎった時、当たっていた雨が止んだ。
「?……!」
「やはりここにいたか」
「凶一郎……」
後ろを見ると凶一郎が傘をさして立っていた。
どうやらわざわざ迎えに来てくれたらしい。
「そろそろ帰るぞ、六美達が待ってる」
「うん」
頷き鞄から折り畳み傘を出そうとすると凶一郎に止められた。
「傘一本あれば十分だろう」
「え……いやでも」
それでは相合傘となってしまうと離れようとしたあきらの手を凶一郎が掴み無理やり傘の中に入らせた。
ぐっと距離が縮まったのと手を繋いでるのであきらの顔が朱に染まった。
「さ、帰るぞ」
「や、で、でも、誰かにみ、見られたら」
夜桜家はスパイ業界内で有名な存在だ。
何かしらスキャンダルでもあればこぞって記者が記事にしてしまう。
それを危惧したのだが凶一郎は特に困ることはないだろうと全く気にしていなかった。
「別に記事なんていくらでも書かせればいいだろう、俺とお前は婚約者なんだからな」
「そ、それはそうなんだけど……」
手を繋ぐ必要性はないのに、と頭がこんがらがる。
こんなこと滅多にしないのに何で???と思考が滅茶苦茶になっていると凶一郎が口を開いた。
「こうでもしないと更に落ち込むだろう」
わたわたしていたあきらはぴたりと動きをとめた。
「自分を責めてしまう気持ちは分かるが、お前のせいじゃない」
「…………うん、分かってる、分かってるの
でも……」
分かってるけどこの日が来る度にそう思ってしまう、私が生まれたせいで母は死んでしまったのだと。
周りに責めなくてもいいと言われても尚その気持ちが消えない。
そんな自分が素直に誕生日を祝われてもいいのだろうか、と思ってしまう。
そんな事を考えていると繋いでいた手にぎゅっと力が込められた、まるで気にしなくていい、と言われているみたいに。
まだ全然消えたわけではないけれど、この時だけは少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。