凶一郎の婚約者さん
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「あ!!あきらだ!!!ちっちゃい!!アイさんと同じくらい!!」
「わーー懐かし!あんまり記憶には残ってないけど……」
「あきらずっと同じ顔!!!変なの!!!」
夜桜アルバムを広げ昔の写真を見ながらけらけらと笑っていたアイはふと気になってあきらに聞いた。
「そういえばあきらのジッカ?ってどんなの???どんなお家??」
「え」
予想だにもしていなかったあきらはぴたりと固まってしまった。
ジッカ、実家……?こないだアイに自分の境遇を説明したからだろうか。
アイとしては普通に気になって聞いただけなのだろうが………なんと答えればよいのだろうか。
アイとしては楽しい感じと想像しているのかジッカとやらがとにかく知りたいようだった。
かといって正直に答えるわけにもいかない、あきらは硬直した表情から一転作り笑いをして、普通だよ、と微笑んだ。
「ふつうって……どんなの?」
「え、えっとぉ……ふ、普通…………」
ふつうじゃアイさんわかんない!と言われてしまいどう返したらいいのか分からずオロオロしていると後ろからひょいっと嫌五が脅かしてきた。
「わっ!びっくりした……嫌五か……」
「嫌五!!」
「アイさん、そろそろ訓練の時間だぜ」
「あ!ほんとだ!嫌五!ありがとう!」
お安いもんよ、と笑って嫌五はアイの肩をポンと叩く。
アイがパタパタと走り去ってあきらはほっと胸を撫で下ろした。
良かった、これ以上聞かれなくて…………と思って嫌五にお礼を言おうとして口をつぐんでしまった。
あまり家のことに関しては口にしたくない、それが例え感謝でも。
ありがとうと言いたくなる気持ちを押さえてあきらはこちらを見たままの嫌五に用事を思い出したから帰るね、と笑った。
あきらを見送ったその後の嫌五が複雑な表情をしていたことには気づかずに。
俺は昔、あきら姉ちゃんの実家に行ったことがある、それも本人に内緒で。
兄貴の婚約者で血は繋がってないけどほぼ兄弟みたいなものだった。
となれば本当の家、家族が気になるのは必然で気になった俺はしつこく質問したけどいつも返ってくる返事は曖昧なものだった。
それが知られたくないというのが分からずに俺はここ以外に大切な場所があるんだ、そっちの方が楽しいんだ、と勘違いしていて。
それなら内緒で行っちゃえと本人に変装してあきら姉ちゃんの実家に2、3年前行ってしまった。
今から思えば無理に踏み込むべきではなかったと今は思う。
「ここか……」
夜桜家ほどの豪邸ではないけどこれなりに立派な家の前に立って俺は脳内でいつも見る姉ちゃんの様子をシュミレーションをして頭に叩き込む。
よし、変装は完璧だ。
後はいつも通りの振る舞い方をしてこっそりどんな様子を見るだけ。
内緒で拝借した鍵をさしドアノブを回して扉を開く。
「ただいま帰りました!」
いつも通りのほんわかとした笑みを浮かべてハキハキとまではいかないけど柔和な感じをイメージして使用人と思わしき人物に挨拶をした。
すると使用人はあきら(嫌五)を見てとても気味悪がり挨拶を返さないまますっっと蜘蛛の子をちらすように居なくなってしまった。
(?????なんでだ?)
「あら??あなた帰ってたの」
「…………!!」
恐らく20代と思わしき女性が赤ん坊を抱きこちらを見ていた。
そうか、この人がきっと新しい義母だ。
この家での扱いがどんなものかもしらずに俺はあきら姉の顔でふわりと微笑み義母に近づく。
「御母様、ただいま帰りました
ふふ、可愛らしいですね……お姉ちゃんだよ〜〜」
昔、拙いながらも他妹弟をあやしていた姉に少し笑顔を付け足して笑うと義母は何へらへら笑っているの、気味が悪いとまたしても言い自室に帰ってしまった。
………………おかしい。
俺の変装は完璧なはずだ、何もおかしなところはない。
家で見る姉の様子を隈無く調べ上げ再現したはず。
それなのに…………この扱いはなんだ……??この違和感は……と俺はあきら姉ちゃんの自室に入り思案していた。
…………それにしてもこの部屋あまりにも暗いような……気の所為だろうか。
いやそれだけではない家全体がどことなく空気が重いような……
「…………考えすぎだって、よく考えりゃ兄貴の事だって完全に理解できるわけじゃないし……兄貴の婚約者のあきら姉ちゃんも似たようなもんだよな、きっとそうだ」
けれどそれは簡単にも崩れ去った。
たまたま訪れた時間が夕方だったので気づけば夜になっていてしまった、家(夜桜家)に帰って夕飯を食べねば。
しかし今の自分はあきらだ、でも本人に代わって夕食を食べるわけにもいかない。
ここは使用人に外で食べてくると言い本人には正直に変装して行ってしまいましたと伝えよう。
そう決めて伝えたのだが使用人はこいつは何を言っているんだ?と不思議そうな表情であまりにも度し難い言葉を言い放った。
「…………夕食はいらないもなにも……あなたの分はありませんよ、今さら何を言っているんです??」
「……………………は?」
「全く……今日はよく笑いますね、明日雪でも降るのかしら」
変装している事も忘れ嫌五は怒りの混じった疑問声を上げた。
お前の分はない?だと?今さら?と胸の底から怒りが湧き上がってくる。
こんな……こんな酷い仕打ちをうけていたのか?ずっと?しかもこの言い振りだと黙ってそれに従っていたかのような……とふと嫌五は棚に飾られている写真立てが目に入った。
容姿と義母がいることから約1年前に撮られた家族写真だろうか、それに映ったあきらの表情を見て嫌五は何故使用人達が気味悪そうに見てくる理由がわかった。
写真の中のあきらは普段知るあきらとは別人だった。
ニコニコ笑い、いつも優しげな笑みを浮かべていた姉とは異なる人がそこに写っていた。
感情が気薄とかそんな感じではない、感情を押し殺して無を貫き暗く闇の中にいるような……そんな目をしていた。
だから周りは笑顔で気味が悪いと言っていたのだ。
(ずっと……??ずっとこんな感じなのかよ)
きっと家や自分を知られたくなくてあれだけ聞いても答えてくれなかったんだ、くっと目頭が熱くなってしまって涙を拭いた。
…………あまりここに長居するのはよくない、それとあきら姉にこの事を打ち明けるのも躊躇ってしまった。
すぐ帰ろうと玄関を出るとたまたま帰宅してきたあきらの父と出くわしてしまった。
まずい、確かあきらの父と凶一郎は面識があったはず。
バレないようにしないと……と演技を先ほど見た写真を元にアップデートさせて簡単に、おかえりなさい、と無表情で会釈をする。
すると…………
「君は……そうか、凶一郎くんの弟くんだな?
…………娘が大変お世話になっています」
「え?」
「また会うこともあるだろうけど……勝手に人の家に入っちゃ駄目だよ」
気さくに肩にポン、と手を置かれてあきらの父は家に入っていった。
一方嫌五はポカン……と口を開けて呆気にとられたままだった。
なお、変装してこっそり入ったことは凶一郎づてに知られてしまい凶一郎や二刃達からこってりと絞られた。
肝心のあきらは特に気にしていなさそうな感じに見えたがちょっとだけ笑顔がぎこちない気がした。
そうだ、あきら姉ちゃんの父に会ったけどあっさり変装見破られたわ、と言うと信じられないような目をして、そんなはずがない……とぽつりと呟くのが聞こえてしまった。
後で兄貴に聞いたけどあきら姉ちゃんは自分自身の父について良い印象は抱いていないらしい。
本人曰く無表情で冷たくて自分に関心がない人だと。
聞く話とさっき出会った人物が違いすぎてまたもや混乱した。
俺の会った人は本当に同一人物なのか……?と。
その疑問を解消したくて再び赴きたくもあったけれど……あきら姉ちゃんはあまり踏み込んでほしくなさそうに見えたから俺は本人が自分から言い出すまでそっとしておくことにした。
俺としては……心苦しいけど。
でも今になって隠したい気持ちもわかってしまった。
親父のこと、俺は太陽に真っ正直に何もかも曝け出すことはきっと出来ない。
言ってしまったら太陽との関係が壊れてしまうような気がして、きっとそれと同じなんだ。
兄弟としての楔が断ち切られてしまうような予感がして怖いんだ。
けれど……………………
嫌五は凶一郎と話す姉を見守って心のなかでつぶやいた。
(俺はあきら姉ちゃんの味方だからさ)
「わーー懐かし!あんまり記憶には残ってないけど……」
「あきらずっと同じ顔!!!変なの!!!」
夜桜アルバムを広げ昔の写真を見ながらけらけらと笑っていたアイはふと気になってあきらに聞いた。
「そういえばあきらのジッカ?ってどんなの???どんなお家??」
「え」
予想だにもしていなかったあきらはぴたりと固まってしまった。
ジッカ、実家……?こないだアイに自分の境遇を説明したからだろうか。
アイとしては普通に気になって聞いただけなのだろうが………なんと答えればよいのだろうか。
アイとしては楽しい感じと想像しているのかジッカとやらがとにかく知りたいようだった。
かといって正直に答えるわけにもいかない、あきらは硬直した表情から一転作り笑いをして、普通だよ、と微笑んだ。
「ふつうって……どんなの?」
「え、えっとぉ……ふ、普通…………」
ふつうじゃアイさんわかんない!と言われてしまいどう返したらいいのか分からずオロオロしていると後ろからひょいっと嫌五が脅かしてきた。
「わっ!びっくりした……嫌五か……」
「嫌五!!」
「アイさん、そろそろ訓練の時間だぜ」
「あ!ほんとだ!嫌五!ありがとう!」
お安いもんよ、と笑って嫌五はアイの肩をポンと叩く。
アイがパタパタと走り去ってあきらはほっと胸を撫で下ろした。
良かった、これ以上聞かれなくて…………と思って嫌五にお礼を言おうとして口をつぐんでしまった。
あまり家のことに関しては口にしたくない、それが例え感謝でも。
ありがとうと言いたくなる気持ちを押さえてあきらはこちらを見たままの嫌五に用事を思い出したから帰るね、と笑った。
あきらを見送ったその後の嫌五が複雑な表情をしていたことには気づかずに。
俺は昔、あきら姉ちゃんの実家に行ったことがある、それも本人に内緒で。
兄貴の婚約者で血は繋がってないけどほぼ兄弟みたいなものだった。
となれば本当の家、家族が気になるのは必然で気になった俺はしつこく質問したけどいつも返ってくる返事は曖昧なものだった。
それが知られたくないというのが分からずに俺はここ以外に大切な場所があるんだ、そっちの方が楽しいんだ、と勘違いしていて。
それなら内緒で行っちゃえと本人に変装してあきら姉ちゃんの実家に2、3年前行ってしまった。
今から思えば無理に踏み込むべきではなかったと今は思う。
「ここか……」
夜桜家ほどの豪邸ではないけどこれなりに立派な家の前に立って俺は脳内でいつも見る姉ちゃんの様子をシュミレーションをして頭に叩き込む。
よし、変装は完璧だ。
後はいつも通りの振る舞い方をしてこっそりどんな様子を見るだけ。
内緒で拝借した鍵をさしドアノブを回して扉を開く。
「ただいま帰りました!」
いつも通りのほんわかとした笑みを浮かべてハキハキとまではいかないけど柔和な感じをイメージして使用人と思わしき人物に挨拶をした。
すると使用人はあきら(嫌五)を見てとても気味悪がり挨拶を返さないまますっっと蜘蛛の子をちらすように居なくなってしまった。
(?????なんでだ?)
「あら??あなた帰ってたの」
「…………!!」
恐らく20代と思わしき女性が赤ん坊を抱きこちらを見ていた。
そうか、この人がきっと新しい義母だ。
この家での扱いがどんなものかもしらずに俺はあきら姉の顔でふわりと微笑み義母に近づく。
「御母様、ただいま帰りました
ふふ、可愛らしいですね……お姉ちゃんだよ〜〜」
昔、拙いながらも他妹弟をあやしていた姉に少し笑顔を付け足して笑うと義母は何へらへら笑っているの、気味が悪いとまたしても言い自室に帰ってしまった。
………………おかしい。
俺の変装は完璧なはずだ、何もおかしなところはない。
家で見る姉の様子を隈無く調べ上げ再現したはず。
それなのに…………この扱いはなんだ……??この違和感は……と俺はあきら姉ちゃんの自室に入り思案していた。
…………それにしてもこの部屋あまりにも暗いような……気の所為だろうか。
いやそれだけではない家全体がどことなく空気が重いような……
「…………考えすぎだって、よく考えりゃ兄貴の事だって完全に理解できるわけじゃないし……兄貴の婚約者のあきら姉ちゃんも似たようなもんだよな、きっとそうだ」
けれどそれは簡単にも崩れ去った。
たまたま訪れた時間が夕方だったので気づけば夜になっていてしまった、家(夜桜家)に帰って夕飯を食べねば。
しかし今の自分はあきらだ、でも本人に代わって夕食を食べるわけにもいかない。
ここは使用人に外で食べてくると言い本人には正直に変装して行ってしまいましたと伝えよう。
そう決めて伝えたのだが使用人はこいつは何を言っているんだ?と不思議そうな表情であまりにも度し難い言葉を言い放った。
「…………夕食はいらないもなにも……あなたの分はありませんよ、今さら何を言っているんです??」
「……………………は?」
「全く……今日はよく笑いますね、明日雪でも降るのかしら」
変装している事も忘れ嫌五は怒りの混じった疑問声を上げた。
お前の分はない?だと?今さら?と胸の底から怒りが湧き上がってくる。
こんな……こんな酷い仕打ちをうけていたのか?ずっと?しかもこの言い振りだと黙ってそれに従っていたかのような……とふと嫌五は棚に飾られている写真立てが目に入った。
容姿と義母がいることから約1年前に撮られた家族写真だろうか、それに映ったあきらの表情を見て嫌五は何故使用人達が気味悪そうに見てくる理由がわかった。
写真の中のあきらは普段知るあきらとは別人だった。
ニコニコ笑い、いつも優しげな笑みを浮かべていた姉とは異なる人がそこに写っていた。
感情が気薄とかそんな感じではない、感情を押し殺して無を貫き暗く闇の中にいるような……そんな目をしていた。
だから周りは笑顔で気味が悪いと言っていたのだ。
(ずっと……??ずっとこんな感じなのかよ)
きっと家や自分を知られたくなくてあれだけ聞いても答えてくれなかったんだ、くっと目頭が熱くなってしまって涙を拭いた。
…………あまりここに長居するのはよくない、それとあきら姉にこの事を打ち明けるのも躊躇ってしまった。
すぐ帰ろうと玄関を出るとたまたま帰宅してきたあきらの父と出くわしてしまった。
まずい、確かあきらの父と凶一郎は面識があったはず。
バレないようにしないと……と演技を先ほど見た写真を元にアップデートさせて簡単に、おかえりなさい、と無表情で会釈をする。
すると…………
「君は……そうか、凶一郎くんの弟くんだな?
…………娘が大変お世話になっています」
「え?」
「また会うこともあるだろうけど……勝手に人の家に入っちゃ駄目だよ」
気さくに肩にポン、と手を置かれてあきらの父は家に入っていった。
一方嫌五はポカン……と口を開けて呆気にとられたままだった。
なお、変装してこっそり入ったことは凶一郎づてに知られてしまい凶一郎や二刃達からこってりと絞られた。
肝心のあきらは特に気にしていなさそうな感じに見えたがちょっとだけ笑顔がぎこちない気がした。
そうだ、あきら姉ちゃんの父に会ったけどあっさり変装見破られたわ、と言うと信じられないような目をして、そんなはずがない……とぽつりと呟くのが聞こえてしまった。
後で兄貴に聞いたけどあきら姉ちゃんは自分自身の父について良い印象は抱いていないらしい。
本人曰く無表情で冷たくて自分に関心がない人だと。
聞く話とさっき出会った人物が違いすぎてまたもや混乱した。
俺の会った人は本当に同一人物なのか……?と。
その疑問を解消したくて再び赴きたくもあったけれど……あきら姉ちゃんはあまり踏み込んでほしくなさそうに見えたから俺は本人が自分から言い出すまでそっとしておくことにした。
俺としては……心苦しいけど。
でも今になって隠したい気持ちもわかってしまった。
親父のこと、俺は太陽に真っ正直に何もかも曝け出すことはきっと出来ない。
言ってしまったら太陽との関係が壊れてしまうような気がして、きっとそれと同じなんだ。
兄弟としての楔が断ち切られてしまうような予感がして怖いんだ。
けれど……………………
嫌五は凶一郎と話す姉を見守って心のなかでつぶやいた。
(俺はあきら姉ちゃんの味方だからさ)