凶一郎の婚約者さん
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「六美ちゃんの料理美味しいなあ」
「ふふふ、当たり前だろう、六美の作る料理は世界一!!!!だからな!!!!」
まるで我が事の様に喜ぶ凶一郎を横目にあきらは六美が作った料理を口を運び微笑んだ。
時々こうして食事に混ぜてもらうことがあるが本当に六美は料理上手だ。
これはいい奥さんになるなあ、いやもうしてたね、ともらしたら隣に座っていた凶一郎は機嫌の良かった様子から一変しギギギ、と顔を凹ませた。
「……」
無言で太陽を睨んでくる凶一郎に太陽は冷や汗を大量にかき何とか話題を別に変えようとした。
「そ、そういえばあきら姉さんは凶一郎兄さんに手料理とか作ったりするんですか?」
凶一郎に似て愛の重い人だ、六美に負けずと張り切って作るのかな?と予想していた太陽はあきらの空気がどんよりと陰っていくのを見て、ええ!?と驚いた。
「あんまり……しない……かな……」
何故か夜桜兄妹の全員があきらから目を背けていた。
も、もしやこれは……と太陽は話題を間違えてしまったか……??と更に冷や汗をかくのだった。
「別にね、こう、下手……とかではないと思うんだよ」
次の日、太陽はエプロンに身を包んだあきらと六美と共に台所に立っていた。
太陽はこっそり六美に聞く。
「実際どうなんだ?」
「いや、それがね、実際のところ私もよく知らないの
凶一郎お兄ちゃんが絶対に料理はさせるなってきつく言われてて見たことがなくて……
あきらお姉ちゃん自体が進んですることもないから機会がなかったんだけど……」
それなのに何故厨房に立っているかと言うと凶一郎曰く一回は体験しておいた方がいいだろうと許しが出たからだ。
ちなみにその料理のどさくさで太陽が死んだりするかもしれない、と微笑んでいた。(怖い)
そして凶一郎本人は仕事の為不在である。
「じゃ、じゃあ、早速始めようか!」
「う、うん!よろしく!六美先生!」
「まずはこれかな、カレーライス!」
「カレーライスか」
「うん、これならどんな人でも作りやすいかなって思って
基本ルーに書かれた手順守ればいいだけだからね、ね、お姉……ちゃん?」
あきらは何故か虚ろな目でカレーライス……と呟いていた。
「ごめん、続けて」
「う、うん
まずは材料切りからだね」
が、そこが鬼門だった。
「最初に玉ねぎをみじん切りにして……
ってええ!?!?」
六美は凄まじい早さで事細かにされる玉ねぎを見て驚いた。
「いや、これはみじん切りというレベルか!?!?ミキサー並だぞ!最早!!」
「お、お姉ちゃん、そこまでしなくてもいいんだよ!?」
ズドドドドと叩きつけられる食材達、包丁の動きは早すぎて見えず、そして何故無事なのかまな板……突っ込みたい要素がたくさんだ。
そしてあきらは全ての食材を同じように切ってしまった。
「玉ねぎはいいとして、人参とかお肉とかもあんなに細かくされちゃうとはなあ……」
「ごめんね……あんなに細かくする必要はないって分かってるのにどうしても包丁握るとああなっちゃって……
実はカレーライス自体は中学校の頃に調理実習で経験してて作ったことはあるんだけど……成長してないなぁ、私……」
六美に中学校の頃ってもしかしてお兄ちゃんと?と聞かれあきらは頷いた。
そう、中学校の頃凶一郎、現在刑事の仏山、ヒナギクのリンと一緒に班が組まれたことがあった。
その時も大変なことになり(あきら以外も料理が出来ず大惨事になった)終了後顔をひきつらせた凶一郎に怒られた為それからあきらは料理をしたことがない。
そしてカレーライスの他様々な料理に挑戦したが食材を切る時点で同じような事になってしまいあきらは塞ぎこんでしまった。
「こんなんじゃお嫁……いや婚約者失格だよ……」
「お、お姉ちゃん、まだ頑張ろう!?凶一郎お兄ちゃんに美味しいって言わせよ!?」
「そうですよ、努力は裏切りませんって!」
凶一郎と聞いたあきらはやる気を上げるかと思いきや。
「……六美、太陽、手伝ってくれてありがとう
私に料理は無理だよ
それに……凶一郎は私が料理作っても喜ばないと思うし……」
「お姉ちゃん……」
何ていうか迷った太陽だったが突然後頭部に何かが激突し床に落ちた。
「太陽!?大丈夫!?」
「な、何とか……いてて……これは……本?」
「ほんとだ、料理っていうかお菓子の本だけど……あ、付箋がしてある」
六美は付箋がしてあるページを開きこれだ!!と叫んだ。
「お姉ちゃん、まだ希望はあるよ!」
「む、六美気遣いは嬉しいんだけど……
私が切っちゃうと……」
躊躇うあきらをよそに六美はまな板の上にとある材料を置いた。
「それでいいの!さ!これを切って!」
「え、ええ?
そ、そこまで言うなら……」
あきらは黒い塊を粉々にしていく。
太陽は特有の匂いにその食材がなんであるか気づいた。
「これ、チョコレートか?」
「そう、チョコレートの中でも特に硬度が高い特別なやつなの
すっっごく固くて使うときは専用のお店に頼むんだけど、その代わり栄養価も美味しさも格別なんだよ
溶かす時は細かいほどいいからあきらお姉ちゃんにはぴったりだね」
「それにしてもあの本は一体誰が投げたんだ?」
「さー?一体どこの誰かなー?」
と言いつつ六美は天井に視線を向けた。
それから粉々にしたチョコレートを溶かしその他の材料を組み合わせて冷やせば完成だ。
「後は食べやすいように切れば……
あっ、これは私がやっとくね」
「う、うん、お願い」
六美によってカットされたチョコを食べあきらは美味しい……と呟いた。
「これで凶一郎お兄ちゃんにも食べてもらえるね」
「う、うん」
しかしあきらの表情にはまだ不安が残っていた。
凶一郎はまだ仕事のようだし他の弟妹達に配ってしまってしまおうか……?と頭によぎった時すっとあきらの後ろから手が伸びた。
ひょいとかけらの一つを摘まみ口に放りこんだ人物は仕事に出かけていたはずの凶一郎だった。
「うんまーーーい!流石六美だな!!
単なるチョコを溶かして作っただけの物だが六美が作っただけで天上の供物……!」
「はいはい、それ私が作ったんじゃないからね
あきらお姉ちゃんが作ったんだよ」
「ん?そうか」
六美が作ったわけではないと知った凶一郎は落胆する様子もなく平然としていた。
「あ、あの、凶一郎、お仕事終わってたの?」
「ああ、さっきな
いち早く六美の顔が見たくてダッシュで帰ってきた
ところでこれ全部貰っていいか?」
「え、う、うん
元々凶一郎の為に作ったものだから……」
余り甘い物を食べるイメージがなかった凶一郎の様子にあきらは少し驚きつつも自分の作った物を食べたいと言われ顔を綻ばせた。