凶一郎の婚約者さん
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夜が開ける数時間前、夜桜家が出発するよりも家を早く出ようとすると玄関に凶一郎が待ち伏せしていた。
「もう行くのか」
「うん、りん達と合流しなくちゃいけないからね」
「…………怪我だけはするなよ」
「うーーん、出来る限り?」
善処はする、と答えると凶一郎が眉を寄せた。
そしてあきらの顔に手を伸ばしさらりと髪を撫でる。
名残り惜しそうに手を引き凶一郎はあきらの横を通った。
「じゃあ行ってきます」
くるりと振り返って微笑むと凶一郎は後ろを向いたまま、ああ、と答えた。
白骨島に突入後、判明した種まき計画を阻止する為凶一郎と太陽は最新部ゲートに到着した。
これから皮下の逮捕に移る為凶一郎と太陽がそれぞれ攻撃を繰り出し分厚い壁を破壊すると皮下が姿を現した。
皮下は太陽に挑発するがそれは全て罠。
四怨の解析により奴の体にダメージが入ると起爆する仕組みになっているので四怨がシステムを解析し無力化するまで何も手出しすることは出来ない。
が、皮下は一筋罠ではいかない。
ここぞのタイミングで揺さぶるべく傷を負った七悪の姿の映像を凶一郎と太陽に見せた。
実験体の解放をしていた七悪はアイという少女に打ちのめされたと皮下は言う。
家族が一人、また死ぬか、皆もろども死ぬのがいいか?なんて皮下は残酷な事を飄々と喋る。
そんな皮下に太陽は翻弄されることなく真っ直ぐに見抜いた。
それと同じくして七悪の元にヒナギクの翠と王牙が助けに入った。
ようやく後から突入してきたヒナギクがセキュリティが緩和したことにより、助けに回ることが出来た。
凶一郎は七悪が傷ついたと聖司に文句を言うが、様々な者が関わっている以上手続きが複雑で仕方ねえだろと言い訳が帰ってきた。
ヒナギク、スパイ協会、警察……そしてその中にはあきらも混じっている。
「あきら怪我してないだろうな」
『もーー心配しすぎだって……昔じゃあるまいし……
してないよ???それより七悪大丈夫かな?』
「ヒナギクが助けに入ったからな、これで七悪も専念出来る」
「………………」
あきらとの通信を終えると凶一郎は皮下が思い出したと凶悪な笑みを浮かべているのに気づく。
「その通信相手、お前の婚約者だっけか?」
「……それがどうした」
「いやいや、俺もさー全然気にかけてなかったんだけど
そいつ母親が死ぬと同時に開花したんだって?」
皮下は明らかに挑発しようとしている。
「俺も驚いた…………まさかあの計画続いてた、なんてな」
「なっ…………」
計画、計画?何のことだ。
「てっきり戦争やらなんやらで消滅してたと思ってたけど驚いた、驚いた…………聞きたいか?」
聞くなら挑発に乗れ、という皮下に凶一郎はふっと笑う。
「あほ、乗るか」
「ちぇっ、面白くねーーー」
「凶一郎兄さん、さっきの…………」
「太陽俺らは何も聞いていない、わかったな?」
はい、と太陽は頷き、皮下と再度向き合う。
四怨が起爆システムと皮下を分断しこれにより皮下を攻撃することが可能となった。
戦争時代から生きている皮下の不可解さや葉桜とは違う夜桜特有の桜の目の発現。
不明な事は多くあれど太陽を起点に葉桜も無力化に成功、皮下も確保出来て零の遺体も取り戻すことができた。
あきらと合流し零の亡骸を見てあきらは一筋の涙を流した。
「…………零お母さん……」
「ほら、二人とも笑って、はい、チーズ
うん、よく撮れてる」
桜舞う4月、中学の入学式の後あきらは校門の前で零に凶一郎と一緒に写真を撮って貰った。
「ありがとうございます、零さん」
「いいの、いいの……お父さんは?」
「…………来れないそうです、仕事で忙しいからって」
あきらの父はいつも学校の行事に参加しない。
それは昔からでもう諦めていたけれど悲しくないわけではない。
あきらの表情が陰り零はあきらを抱きしめた。
「零、さん!?」
「もう、零さんじゃなくてお母さんって呼んでちょうだいって言ったでしょ?」
「でも、零さんは本当のお母さんじゃ…………」
「将来嫁いでくる上にこーーんなに一緒に住んでるのよ?とっくに娘よ」
微笑む零にあきらはもじもじと手を交差して息を吸った。
「零…………お母さん」
「…………なぁに?」
「大好き!!!」
ぴょん!とジャンプをして零に抱きつくあきらを見て凶一郎も微笑んだ。
「……あきら?」
「……ごめん、昔の事思い出してた」
ごしごしと目を擦りあきらは涙を拭き取る。
これであきらは二人の母を失ったことが確定した。
母という単語に皮下から聞いた話が浮かぶ。
『まさかあの計画続いてた、なんてな』
「……………………………………」
本来覚醒するはずのない遺伝子の発火もとい開花、あきらと関連しているのか??
皮下の言葉など信じたくもないが戦争時に起こっていたという実験と何か繋がりがあるのだろうか。
「凶一郎??どうしたの?帰ろ?」
「ああ、今行く」
疑問はある、だがとりあえず今は平穏を過ごそうと凶一郎はあきらの手をとった。
