任務が終わり家に帰ったら何と太陽が赤ちゃん化していました。
着ていた服は昔凶一郎が着ていた幼児用の子供服である。
唐突な事に混乱するあきらに六美が説明する。
凶一郎達の父である百の動向を探っていたあきら達だったが、ここ数年目撃情報はなく手詰まりかと思われたが一緒に行動しているタンポポを探れば居所を掴めるかもしれない。
そう考え情報をかき集めていた中太陽が単独で噂の列車に乗り込んだ末ハクジャと呼ばれる女性との交戦が行われた。
色々あった末りんと二刃が疲労困憊の太陽を救出し七悪から貰った薬「チビナオール」を飲ませたところ幼児化してしまったらしい。
薬の副作用で約12歳ほど若がっているということだろうか。
小さくなった太陽にあきらはかわいいねーと愛でていたところを凶一郎がふん、と鼻で笑う。
あきら含め他兄弟がチビ太陽に群がっている様子が気に食わないらしい。
　
「いくら姿形が変わろうと所詮はあのダメ婿だろう
　全く何が楽しいのやら……」

凶一郎は鋼蜘蛛で器用にも『バカタイヨウ』と似顔絵を描いていた。
そんな凶一郎を約二歳児に戻ったチビ太陽は当然凶一郎の性格を知らなくらんらんを目を光らせていて凶一郎のあやとり？にきゃっきゃと喜んでいた。
そんなチビ太陽に動じない凶一郎……と思われたがよくよく見ると立ったまま気絶していた。
凶一郎はとにかく末っ子もとい小さい子供に弱い。
憎たらしい太陽といえど効果テキメンだったようで憎しみと愛らしさが混ざりあい脳がバグってしまったと二刃は言う。
誰が太陽を寝かしつけるかジャンケンする中、あきらは一向に気絶したままの凶一郎の頬をつんつんとつく。
　
「きょーいちろーー、立ったままはあぶないよー？
　ねーってば、起きないなぁ」
　
万が一後ろに転倒して頭に何か当たったら危険だなぁとあきらは考えて後ろのソファーが目に映ってそうだ、と思いついた。

「……………………」
ゆっくりと意識が覚醒していく。
うたた寝をしていたような感覚に凶一郎はいつの間に眠ってしまったのかと思った。
普段凶一郎は睡眠をとらない。
ということは何かアクシデントがあって気を失ってしまっていたということだろうか。
ゆっくりと瞼を開けるとあきらと目が合った。
「あ、起きた？おはよう、凶一郎」
ふわりと笑うあきらに凶一郎は今自分が置かれている状況に気付く。
凶一郎はあきらに膝枕された状態でソファに横たわっていた。
にっこりと笑ってこちらを見るあきらに凶一郎は居たたまれず勢いよく頭を起こした。
温もりが無くなって残念に思ったあきらだったが、凶一郎が睡眠を少しでも取れてよかったと安堵する。

「で、何で俺は膝枕などされてたんだ」
「だって凶一郎失神しちゃったから……
　ほら頭打っちゃったら危険でしょ？」
ね？とあきらは名案！と笑う。
確かに理には叶っているだろうが……目が覚めれば膝枕されていて頭に柔らかな太ももの感触がするなど目覚めに悪い。
というがそもそも失神した原因が分からないと言うとあきらは覚えてない？と首を傾げた。

「ほら、たいよ…」
「やめろ、その名を呼ぶな」

悪寒が走り凶一郎はギギギと顔を歪ませる。
脳は思い出すなと警告を出していてどうしても思い出したくなかった。
思い出したら最後精神が壊れそうだ。
はぁ……と凶一郎はため息をついてこの部屋に自分ら二人だけしかいない事に気付く。
他の兄弟は部屋に帰ったのか誰もいない。
何故だか精神的にとても疲れたような気がしてもう一度凶一郎はあきらの膝に戻った。
「きょ、凶一郎！？」
どうしたの、とこちらを見てくるあきらに気にせず凶一郎はごろりとあきらのお腹の方へ転がった。
「疲れた、少し眠らせてくれ」
彼の意外な行動にあきらは驚きつつも柔らかく微笑む。
「うん、分かった」
さらりと彼の髪を撫でると凶一郎が目を閉じた……かは分からないがそんな気がした。


そよそよと風が凪ぐ。
居間にやってきた二刃はソファに座っているあきらに気づき近づくと僅かに微笑んだ。
「なんとまぁ、穏やかに寝ているもんだね」
二刃は毛布をそっと二人にかけ居間を後にした。