凶一郎の婚約者さん
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「よろしくお願いします…………!あきら姉さん……!」
「じゃあ早速始めようか」
こくりと太陽は竹刀を構え、あきらも竹刀を手にしている。
太陽は現在辛三に剣術の指導を受けていたがなるべく経験は多いに越した事はないので、あきらにも手解きをしてもらえないのか聞いてみたところ快く引き受けてくれた。
…………さて、あきらの任務?に付き添った事がある太陽だがこうして間近で直に剣術を扱うところは見たことがない。
こないだのは不意打ちで戦いという区分ではない。
辛三の戦闘パターンとは全く異なるだろうが……
ごくりと生唾を飲み込み太陽はあきらを見据えた。
あきらが動きひゅっと姿が消え竹刀が遅いかかってくる。
「…………っ!」
こないだまで全然見えなかった動きが辛うじて見えるレベルになり、後手に回りつつ竹刀で攻撃を食い止める。
辛三ほどの力強さはないものの、スピードは確実にあきらの方が上だ。
(竹刀なら多少当たっても大丈夫だろうし……)
が、攻撃を受けながら窓からじっと見ている人物が気にかかりちらりとよそ見をすると鋭い突きが突き当たった。
「太陽、よそ見しない」
「は、はい……すみません……」
さあ、もう一本、と竹刀を構えるあきらを凶一郎は紅茶を飲みながら静観していた。
「近くで見なくていいのかい」
「もう見張っていなくても大丈夫だろう
昔に比べてマシになったしな」
「そうさね、昔に比べたらだいぶコントロールできるようになったもんだ」
二刃は任務に出始めた頃のあきらの様子を思い出した。
あの頃はとにかく自分の身を守るという意思がなく頻繁に怪我をしたり、凶一郎のみならず他の兄弟の前に無理矢理立ち塞がろうとして何度止めたことか。
年齢が上がる事にその傾向は徐々に薄まり、今では以前のように着替えに困ることもなくなった。
「じゃあ何で必要ないのに訓練見守ってるんだい?」
「ふっこれはあの馬鹿の悲鳴を聞く為だ」
凶一郎は万が一で何かあったらなんて思ってないからな、と紅茶を啜る。
素直じゃない兄に二刃はやれやれとため息をついたのだった。
「はぁっはぁっご、ご指導……ありがとう……ございました…………」
ペタンと太陽は地面に崩れ落ちる。
「あーー午前中に辛三とも訓練してたもんね
ごめんね?キツかった?」
キツかった、それはもうキツかった。
どちらかというと肉体面よりも精神的にきた。
辛三は肉体的なスパルタだったがあきらはメンタルにくるスパルタだった。
容赦ない攻撃に加えて、時折飛んでくるアドバイスはとても辛辣でズバズバと言われグサッときた。
こういう所を見るとあの人の婚約者だけあるな……と太陽は思った。
いやあきらはあくまでも善意で言っているつもりらしく嫌味などは感じられなかったのだが。
こう、容赦がないと落ち込んでしまう。
そんな太陽にあきらは思いついた。
「そうだ、昨日買ってたばかりのお菓子あるんだよ
せっかくなら紅茶でも淹れて休憩しよう、六美も一緒にね」
太陽を連れ今に入るとテーブルに飲み終わったティーカップが置かれていたのに気づいた。
これは凶一郎の愛用のティーカップである。
机に触れると僅かに温かい。
ここに凶一郎がさっきまで居た証拠だ。
窓を見ればちょうど訓練を行っていたところが見えた。
もしかしてこっそり見ていたのだろうか……
なんてね、と思ってあきらは菓子を取りに戻ったのだった。
【凶一郎の瞳】
「?あきらちゃんどうかしたの?」
あきらはじーーーーっと凶一郎の顔をみている。
「凶一郎くんってずっと目閉じてるのにどうやって見てるのかなって」
閉じてるわけじゃないんだけどな…………と凶一郎はうーんと困ったような素振りを見せる。
「別に目を閉じてるわけじゃないよ
薄目で見てるだけで」
あきらも同様にしようとしたが、瞬きをした後出来ないと言ったのに凶一郎は思わず笑ってしまった。
「じゃあ凶一郎くんは目を開いたらどうなるの?」
「ど、どうなるって言われても……困るな」
あんまり目を開きたくない凶一郎は返答に困った。
家族でさえ凶一郎は普段から目を見開かないまま接している。
理由としてはやはり恥ずかしいからである。
なんというか目を開いた自分を見るとどことなく幼いように感じてしまってここしばらくは瞳を誰にも見せていない。
「見たいの?」
「うん」
「どうしても?」
「見たい」
じゃなきゃずっと見続けると言わんばかりにあきらの瞳が直視してくる。
「…………い、一回だけだから、一回だけだからね」
と言って凶一郎は目に手を当てて瞳をあきらに見せた。
あきらはどう返答したらいいのか迷ってこう答えた。
「か、」
「か?」
「かっこ、いい……」
きっとこの感情を表すのにふさわしいのはこの言葉なのだろう、あきらは頬を赤らめて言う。
想像していた言葉ではなくて凶一郎は呆然としてやがて微笑んだ。
…………やっぱり恥ずかしいけれどあきらちゃんの前だったら時々見せてもいいかなと思った凶一郎だった。
