凶一郎の婚約者さん
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[ドーナツ]
家族全員でショッピングにきていたあきら達は各々買いたい物がある為自由行動をとり、あきらは凶一郎と共にモール内を回っていた。
凶一郎が取り寄せていた新しい拷問本を受け取り本屋を後にする。
「さて、俺は用事が済んだわけだが……
お前は何か寄りたいところはあるか?」
さして趣味のないあきらはうーーんと悩む。
愛用武器である刀は辛三ほど頻繁に買い替える必要はなく、手入れをすれば長く持つ。
他かぁ、とモールのフロアマップを脳内に思い浮かべていたあきらは、あ、と思い当たり凶一郎の向こう側にあるとある店に視線がいく。
「そうだ、し……」
下着と言いかけて、しまったと口をつむぐ。
ここショッピングモールにおいて女性用下着専門店では裏で裏業界に向けたオーダーメイドの下着を販売している。
かくいうあきらも愛用者であり、何かと入り用なのでそろそろ新しいのを発注しようと思っていた。
「何だ?」
「あ、その…………」
凶一郎は先ほど視線を向けた方向をちらりと見る。
用事はある、あるのだが…………
裏業界向けの商品も扱っているとはいえ、一件普通の女性用下着店である。
流石に男性である凶一郎と一緒には入りにくい。
どうしようと目を泳がせていると、期間限定とでかでかと宣伝ポップが目に入る。
そこには『今だけ!!動物ドーナツ!!』と可愛らしい文字と動物の絵で描かれていた。
ええい、とあきらは凶一郎の腕を掴みスイーツショップに引っ張る。
「!おい」
「え、えっと、お、お腹空いちゃって……
あっちで休憩しない?」
どうしても下着店から遠ざけたいあきらは若干挙動不審になりつつも宣伝用のポップを指さした。
「まぁ、いいだろう
まだ時間もあることだしな」
許諾してくれた凶一郎にあきらはほっと安堵した。
買い物先で休憩がてら限定スイーツを凶一郎と二人で食べようと話になったのだが。
あきらはぷるぷるとスイーツの前で震えている。
紅茶の前に置かれたドーナツを前にあきらは食べることが出来ずにいた。
それというのもそのドーナツがかわいい動物柄であり、その絵柄が黒猫で糸目なことからつい凶一郎を連想してしまい中々手をつけることができなかった。
なお凶一郎といえばあまり気にしないのか、さらりと平らげてしまっている。
一向に食べる気配のないあきらに変に思ったのか凶一郎が気にかけた。
「具合でも悪いのか」
「う、ううん、違うの
何だかこのドーナツの猫さん、凶一郎に見えてきちゃって……」
「…………俺に?」
そうだろうか、と凶一郎は不思議に思う。
チョコでコーティングされた黒猫の目元は確かに細いホワイトチョコペンで描かれており糸目といえなくもないが……
「ごめんね、待たせちゃって
すぐ食べるから」
「別に急いでいるわけじゃない」
ゆっくり食べろと言ったが、あきらはそもそもどこから口をつけたらいいのか迷うらしくドーナツをくるくる回転させている。
「……頭から?それとも……」
「どこから食っても一緒だろう」
「そ、それはそうなんだけど〜〜〜」
食べられない……と嘆くあきらにこれでは埒があかないな、と凶一郎はあきらの手からドーナツをとる。
ひょいとドーナツを取られたあきらは目を白黒させていると開いた口にドーナツを突っ込まれた。
「!?!?」
驚きつつもドーナツを頬張るとすっと凶一郎の手が引きドーナツの姿は円形ではなくなっている。
甘い生地とホロ苦いチョコのドーナツをもぐもぐと咀嚼し、ごくりと飲み飲み息をつく。
「びっくりしたぁ、急に突っ込まないで……」
「こうでもしないとずっと悩み続けるだろう
流石にそこまでは待てん」
「す、すみません……」
謝るとまたドーナツが差し出され、それにかぶりつきドーナツを飲み込む。
…………これは所謂あーんをしていることにならないだろうか。
しかもショッピングモールのこんな大勢がいる前で。
なんだか急に恥ずかしくなってきたあきらはやっぱり自分で食べると凶一郎から再度ドーナツを奪い取る。
「そうか、残念だ」
手が空になった凶一郎は手袋に溶けたチョコを舌で舐めとる。
その光景に顔を赤くしたあきらはせかせかとドーナツを食べ進めるのだった。
[幼い結婚式]
夜桜当主の結婚披露式に業界の親しい人らが招かれるのと同じくその反対もしかりである。
凶一郎がまだ6歳の頃。
零百夫婦が懇意にしていたとあるスパイが結婚式を挙げることとなった。
当然夜桜夫婦も招かれ、子供である凶一郎達も参列し、凶一郎の婚約者となったあきらも同様だ。
無事結婚式は終わり家に着いて、あきらがぽつりと呟いた。
「皆笑ってたね」
「そりゃそうだよ、めでたい日なんだし」
けっこん……とあきらが言う。
「僕らはまだまだ先だけどね」
というとあきらはこくりと頷いたが、どことなく結婚式の事が気にかかっているような気がした。
「……僕らもやってみる?結婚式の予習」
「…………うん、やる」
凶一郎は白い布をとってきてあきらの頭に被せた。
「えーーと、確か……」
先ほど参加した結婚式で神父が言っていた言葉を思い返す。
「その健やかなるときも病めるときも喜びのときも、悲しみのときも富めるときも貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くす ことを誓いますか?…………って言ってたっけ」
「で、そう神父さんが言うから僕らは『誓います』って言うんだよ」
凶一郎の後に続いてあきらも同じ言葉を口にする。
「で、その後は……」
誓いのキスをする、と言いかけて凶一郎の頬が赤く染まる。
「凶一郎くん?後は?」
「え、えと、」
サ、流石に口……はダメだ、と思った。
父さんが口にするのは大きくなってからって言ってたし……
「誓いのキスをするんだ」
「きす?」
「あれ?見てなかったの?」
「風が吹いて目瞑っちゃったから見てない」
というあきらに凶一郎は安堵する。
なら頬にしても大丈夫だろう。
「じゃあ、とるね」
頭にかかった布を取るとあきらがじっっっと見つめてくるので困ってしまった。
そこまで直視されるとやりづらい。
「ごめん、目閉じておいてくれるかな」
「うん」
あきらはすっと目を閉じたのを見て凶一郎はあきらの頬にキスをした。
口を離し凶一郎はてれてれと後ろを向く。
「な、なんだかちょっと恥ずかしいね…………
あきらちゃん?」
返事がないことに不思議に思った凶一郎が振り返るとあきらが赤面したまま硬直していた。
「おーい、あきらちゃん?おーいってば」
なお、あきらがその後1日熱でうなされたのは言うまでもない。
家族全員でショッピングにきていたあきら達は各々買いたい物がある為自由行動をとり、あきらは凶一郎と共にモール内を回っていた。
凶一郎が取り寄せていた新しい拷問本を受け取り本屋を後にする。
「さて、俺は用事が済んだわけだが……
お前は何か寄りたいところはあるか?」
さして趣味のないあきらはうーーんと悩む。
愛用武器である刀は辛三ほど頻繁に買い替える必要はなく、手入れをすれば長く持つ。
他かぁ、とモールのフロアマップを脳内に思い浮かべていたあきらは、あ、と思い当たり凶一郎の向こう側にあるとある店に視線がいく。
「そうだ、し……」
下着と言いかけて、しまったと口をつむぐ。
ここショッピングモールにおいて女性用下着専門店では裏で裏業界に向けたオーダーメイドの下着を販売している。
かくいうあきらも愛用者であり、何かと入り用なのでそろそろ新しいのを発注しようと思っていた。
「何だ?」
「あ、その…………」
凶一郎は先ほど視線を向けた方向をちらりと見る。
用事はある、あるのだが…………
裏業界向けの商品も扱っているとはいえ、一件普通の女性用下着店である。
流石に男性である凶一郎と一緒には入りにくい。
どうしようと目を泳がせていると、期間限定とでかでかと宣伝ポップが目に入る。
そこには『今だけ!!動物ドーナツ!!』と可愛らしい文字と動物の絵で描かれていた。
ええい、とあきらは凶一郎の腕を掴みスイーツショップに引っ張る。
「!おい」
「え、えっと、お、お腹空いちゃって……
あっちで休憩しない?」
どうしても下着店から遠ざけたいあきらは若干挙動不審になりつつも宣伝用のポップを指さした。
「まぁ、いいだろう
まだ時間もあることだしな」
許諾してくれた凶一郎にあきらはほっと安堵した。
買い物先で休憩がてら限定スイーツを凶一郎と二人で食べようと話になったのだが。
あきらはぷるぷるとスイーツの前で震えている。
紅茶の前に置かれたドーナツを前にあきらは食べることが出来ずにいた。
それというのもそのドーナツがかわいい動物柄であり、その絵柄が黒猫で糸目なことからつい凶一郎を連想してしまい中々手をつけることができなかった。
なお凶一郎といえばあまり気にしないのか、さらりと平らげてしまっている。
一向に食べる気配のないあきらに変に思ったのか凶一郎が気にかけた。
「具合でも悪いのか」
「う、ううん、違うの
何だかこのドーナツの猫さん、凶一郎に見えてきちゃって……」
「…………俺に?」
そうだろうか、と凶一郎は不思議に思う。
チョコでコーティングされた黒猫の目元は確かに細いホワイトチョコペンで描かれており糸目といえなくもないが……
「ごめんね、待たせちゃって
すぐ食べるから」
「別に急いでいるわけじゃない」
ゆっくり食べろと言ったが、あきらはそもそもどこから口をつけたらいいのか迷うらしくドーナツをくるくる回転させている。
「……頭から?それとも……」
「どこから食っても一緒だろう」
「そ、それはそうなんだけど〜〜〜」
食べられない……と嘆くあきらにこれでは埒があかないな、と凶一郎はあきらの手からドーナツをとる。
ひょいとドーナツを取られたあきらは目を白黒させていると開いた口にドーナツを突っ込まれた。
「!?!?」
驚きつつもドーナツを頬張るとすっと凶一郎の手が引きドーナツの姿は円形ではなくなっている。
甘い生地とホロ苦いチョコのドーナツをもぐもぐと咀嚼し、ごくりと飲み飲み息をつく。
「びっくりしたぁ、急に突っ込まないで……」
「こうでもしないとずっと悩み続けるだろう
流石にそこまでは待てん」
「す、すみません……」
謝るとまたドーナツが差し出され、それにかぶりつきドーナツを飲み込む。
…………これは所謂あーんをしていることにならないだろうか。
しかもショッピングモールのこんな大勢がいる前で。
なんだか急に恥ずかしくなってきたあきらはやっぱり自分で食べると凶一郎から再度ドーナツを奪い取る。
「そうか、残念だ」
手が空になった凶一郎は手袋に溶けたチョコを舌で舐めとる。
その光景に顔を赤くしたあきらはせかせかとドーナツを食べ進めるのだった。
[幼い結婚式]
夜桜当主の結婚披露式に業界の親しい人らが招かれるのと同じくその反対もしかりである。
凶一郎がまだ6歳の頃。
零百夫婦が懇意にしていたとあるスパイが結婚式を挙げることとなった。
当然夜桜夫婦も招かれ、子供である凶一郎達も参列し、凶一郎の婚約者となったあきらも同様だ。
無事結婚式は終わり家に着いて、あきらがぽつりと呟いた。
「皆笑ってたね」
「そりゃそうだよ、めでたい日なんだし」
けっこん……とあきらが言う。
「僕らはまだまだ先だけどね」
というとあきらはこくりと頷いたが、どことなく結婚式の事が気にかかっているような気がした。
「……僕らもやってみる?結婚式の予習」
「…………うん、やる」
凶一郎は白い布をとってきてあきらの頭に被せた。
「えーーと、確か……」
先ほど参加した結婚式で神父が言っていた言葉を思い返す。
「その健やかなるときも病めるときも喜びのときも、悲しみのときも富めるときも貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くす ことを誓いますか?…………って言ってたっけ」
「で、そう神父さんが言うから僕らは『誓います』って言うんだよ」
凶一郎の後に続いてあきらも同じ言葉を口にする。
「で、その後は……」
誓いのキスをする、と言いかけて凶一郎の頬が赤く染まる。
「凶一郎くん?後は?」
「え、えと、」
サ、流石に口……はダメだ、と思った。
父さんが口にするのは大きくなってからって言ってたし……
「誓いのキスをするんだ」
「きす?」
「あれ?見てなかったの?」
「風が吹いて目瞑っちゃったから見てない」
というあきらに凶一郎は安堵する。
なら頬にしても大丈夫だろう。
「じゃあ、とるね」
頭にかかった布を取るとあきらがじっっっと見つめてくるので困ってしまった。
そこまで直視されるとやりづらい。
「ごめん、目閉じておいてくれるかな」
「うん」
あきらはすっと目を閉じたのを見て凶一郎はあきらの頬にキスをした。
口を離し凶一郎はてれてれと後ろを向く。
「な、なんだかちょっと恥ずかしいね…………
あきらちゃん?」
返事がないことに不思議に思った凶一郎が振り返るとあきらが赤面したまま硬直していた。
「おーい、あきらちゃん?おーいってば」
なお、あきらがその後1日熱でうなされたのは言うまでもない。