凶一郎の婚約者さん
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夜桜襲撃からしばらく経ち、開花の反動で筋肉痛となってしまった太陽の疲れを取るべくやる気まんまんじゅうを製作しようとしていた六美だったが、まだ未完成な物を凶一郎がつまんだところ、仮死状態となってしまった。
まんじゅうが完成した後も凶一郎は仮死状態から戻らずずっとあきらが寄り添っているが未だ意識は戻らない。
凶一郎が倒れてからずっと泣いてばかりの姉を六美は心配していた。
あまり眠れていないのかあきらの目元にはクマがある。
「お姉ちゃん、ごめんね、私のせいで……」
「……元はと言えば勝手につまみ食いをする凶一郎が悪いんだけど……このまま起きなかったらどうしよう……」
ずびずびハンカチを持ってあきらは泣き止む気配がない。
そんなあきらに嫌五が助言をした。
「キスすれば起きるんじゃね?」
「嫌五…………もう冗談はやめて」
すると泣いてばかりいたあきらの空気が変わる。
「…………嫌五、茶化すのはやめなさい」
茶化すなとぴりつく空気に嫌五はごめんて、と苦笑いをして病室から出ていった。
「はぁ、嫌五も困ったものね、でもほんとにどうしよう……太陽はあっさり起きたけど……」
「………………こうなったら」
ごそごそとあきらは懐から黒い物体が入った包を取り出した。
「…………それ!失敗作じゃない!」
「ふふ、そう、これを食えば私も仮死状態になる
……このまま凶一郎が目覚めないのなら……いっそ私も……」
「だめー!!!」
六美は慌てて未完成のまんじゅうの欠片を取り上げた。
「そんなことして何になるの!!お兄ちゃんが目覚めた時にどう思うのか考えないの!?」
「っ、じゃあ、どうすればいいのっ
凶一郎が居なくなったら私、私…………」
六美に縋り付いて更にぼろぼろと泣いてしまう(名前)に六美は戸惑っているとむくりと凶一郎が起きた。
「なんだ、騒々しい」
「!凶一郎……!」
「お、お兄ちゃん!良かった…………」
安堵した六美の手から力が抜け、ぽろりとまんじゅうの欠片が落ちる。
そしてその先には……あきらの口があり、欠片があきらの口の中に入った。
びりびりと衝撃が走りあきらは泡を吹いて倒れてしまった。
「お、お姉ちゃーーん!!!しっかりしてー!!!」
パチリと目を覚ますと、辺りは暗く夜になっていた。
気絶する前の記憶があやふやで思い起こそうとするとぬっと暗闇から額にデコピンが当たる。
それが凶一郎の手だということに気づいて目を見開いた。
「……凶一郎?」
「運が良かったな」
接種した量がごく僅かともあって1日寝込む程度で済んだらしいと凶一郎が話す。
「凶一郎はどう?体は大丈夫?」
「……完全というわけじゃないが、問題はない
というか倒れたお前が聞くことじゃない」
分かっているのかと凶一郎はあきらの頬を摘む。
「六美から聞いたぞ、後を追うとかなんとか」
うっ、とあきらは背筋を凍らせて目をそらす。
「……だって、」
「だってじゃない、肝が冷えたんだからな
二度とやるな」
凶一郎に睨まれあきらはしぶしぶ頷く。
「シェイクスピアの劇のような事は勘弁してくれ」
それがロミオとジュリエットの事を指していることにきづく。
凶一郎はあきらの頭を撫で、あきらは分かった、と笑った。
「凶一郎くん!」
ニコニコと笑いこちらに歩いてくるあきらと遠くから感じる視線に凶一郎は顔をしかめる。
「凶一郎くん?」
どうしたの?とあきらは凶一郎を上目遣いでみて凶一郎は胸の奥が高鳴る。
これはそういう狙いでやろうと思っているわけではなく凶一郎の背が高くなりつつあるからだ。
そういうあきらは中学の頃から少女から大人の体に近づきつつあり、時折見せる顔に凶一郎は度々どきまぎさせられていた。
凶一郎は遠くの視線の主を睨みあきらを誰もいない廊下に連れて行く。
「どうかしたの?、凶一郎くん」
きょとんと不思議そうに見つめるあきらに凶一郎は口を開いた。
「その、くんづけ、やめてくれないか」
「え?」
ぱちくりとあきらは目を見開く。
「……え、と、嫌、だった?」
「……嫌、というか…………もうそんな年じゃない」
ここ最近家族の向ける視線が恥ずかしくてたまらない。
特に百から向けられるあの笑みが嫌で嫌で仕方なかった。
「じゃあ、何て呼んだらいいのかな……?凶一郎……さん、とか?」
「さんだと仰々しい、呼び捨てでいい」
分かった、とあきらは深く呼吸をする。
「きょう、いちろう」
「………………」
「あっ、何か変だったら他のでも……!」
「いや、それでいい……それがいい」
少女少女から大人に変わろうとしている二人を遠くから見守っていた百だった。