凶一郎の婚約者さん
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うだるような夏のとある日。
エアコンが故障したことにより夜桜邸は灼熱と化していた。
「…………暑い……」
「六美、大丈夫か?ほら、スポーツドリンクだ」
「太陽も暑いのにありがとう……」
「いや、俺はまだ平気だから大丈夫だよ」
六美は扇風機の前に陣取って少しでも涼を取ろうとしている。
他の兄弟は血筋のせいか耐性はあるらしいが、流石に汗はかいているようだ。
いつもゴスロリ姿の二刃も今日は身軽な服装に着替えている。
「くそっっ、全然パソコン動かねぇ……」
終わりだ、終わりと四怨もやる気が起きないようで居間でだらけている。
それもそのはず、パソコン等精密機械は暑いと本来の性能を発揮出来ないからだ。
その他の面々も何かと理由をつけて居間に居座っている。
そこにエアコンを調整していた凶一郎が加わる。
「あ、お兄ちゃんエアコンの調子どう?」
七悪が聞くと凶一郎は首を横に振る。
「すまん、もう少しかかりそうだ」
「お兄ちゃんごめんね、せっかくの休日なのに……」
「ふっ、妹が困っているんだ、なにもしないわけにはいかないだろう」
しかし、いくら耐性のある凶一郎ともいえどもこのじめじめとした湿度には若干嫌気がさしていた。
六美も他の姉兄にサポートはしてもらっているが、この昼間だけでも他の場所に避難するべきではと凶一郎は思い始めていた。
「六美、体調に変化はない?
何かあったらすぐ言ってね」
「ありがとう……あきらお姉ちゃん」
「あ、凶一郎。お疲れ様」
暑いねーとシャツの一番上のボタンを開いた状態でパタパタ手を仰ぐあきらの後ろ姿を見て凶一郎は固まる。
透けている、汗で濡れたシャツが透け中に着ているブラが透けて見えていた。
あきらは凶一郎が黒の服を着ている事もあり、色を合わせる事が多かった。
よって透けている下着の色も黒色である。
「?凶一郎?」
あきらが近寄り凶一郎は思わず唾を飲み込む。
当然前も透けている。
「……に行こう」
「?どこに?」
「…………プールだ!!!!」
「はああああ!!!涼しー!!生き返るーー」
「六美、堂々と寛いでていいのか?」
「んー?ここはね裏業界御用達のリゾートプールなの
多少暴れてもいいし……
私も皆が一緒にいれば襲われる心配もないしねー」
そうか、と太陽はぐるりと周囲を見渡す。
広々としたリゾートプールは室温が一定に保たれていて心地よい。
とりあえず気温が下がるまでこのプールで過ごそうということになった。
それにしても……と太陽はベンチで寝っ転がっている六美をチラ見する。
「?なーに?太陽」
「あ、いや、何でもない」
「んー??何ですかな?」
ニヤニヤと嫌五、四怨がこちらを見てくる。
水着、似合っててかわいいぞと言おうとすると間からにゅっと凶一郎が出てきた。
「うわ!!!」
「びっくりした……もうお兄ちゃん脅かさないでよ……
っていうかエアコンの修理は?」
「後回しだ、六美とプールで遊べるのにあんなことやってられるか!!
それにしても六美、水着似合ってるぞ♡」
「お兄ちゃんに褒められても何も嬉しくない」
冷たい六美に凶一郎はショックを受けている様子に太陽は苦笑いする。
でも遊ぶというわりには凶一郎は水着には着替えていない。
比較的軽装ではあるものの、泳ぐ格好ではなかった。
「凶一郎兄さんは泳がないんですか?」
「当たり前だ、六美の警護で忙しいからな
…………とあきらの姿が見えないがどこにいるんだ?」
「あ、まだお姉ちゃん出てきてないんだ」
もーーと六美は再度脱衣所に向う。
「ほら、お姉ちゃん、いい加減出てきなよ」
「いや、でも…………」
「大丈夫だって」
中々出て来ないあきらに二刃が強制的に脱衣所から追い出す。
「ほら、他のお客さんの迷惑だよ」
「ふ、二刃〜〜〜〜〜」
勢いあまり、人にぶつかってしまう。
「あ、ごめんなさい、きょ、凶一郎」
ぶつかった相手は凶一郎だった。
凶一郎はあきらの水着を直視してしまい、思考が停止しその姿に釘付けになる。
やはり水着も黒色らしく、ワンピースビキニ姿のあきらに凶一郎は跳ね上がる鼓動を押さえつけた。
「っ、気にするな」
「う、うん、ありがとう…………」
凶一郎に見られて恥ずかしいあきらは手を前に組みもじもじと顔を赤く染める。
その二人の様子に他の妹弟(主に四怨、嫌五)はニヤニヤと見守っていたのだった。
「四怨姉さんは泳がないんですか?」
「…………インドア舐めんなこら」
それが泳げないからとは知らない太陽に嫌五がスライダー乗ろうぜと誘う。
いいよ、と返事をした太陽はそのスライダーを見て絶句する。
「どした?太陽?」
「いや、いやいやいやいや!!!!
水のスピード速すぎない!?!?」
「そーか?あ、ちなみに途中誤って浮き輪から外れると血だらけになるから注意な」
「あ、俺、ちょっと用事を思い出して……」
と後ずさる太陽は後ろにいた人にぶつかった。
「あ、すみませ…………」
「ほら、滑るならさっさとしろ、後ろがつかえているだろう?」
この人俺をすべらす為に絶対割り込みしたと太陽は冷や汗をかく。
何故なら凶一郎の後ろの者達は全員こめかみに青筋を浮かべていたからだ。
ちなみに歯向かったところで勝ち目はないので皆ぐっと堪えている。
そして凶一郎をおってきたあきらがペコペコと頭を下げている。
「きょ、凶一郎兄さん、六美の警護は?」
「ん?ああ、二刃達がついている
さあ、安心して滑っていいぞ、太陽」
「ぎゃあああああ!!!!」
とん、と太陽の体を押し太陽はスライダーの奥へと吸い込まれていった。
ふう、といい顔をした凶一郎があきらがひそひそと小声で話す。
「私達も滑ろう、割り込みしちゃったんだから……
ついでだし、一緒でいいよね?」
「え、あ、いや、しかし……」
「後使えてるから!」
妙に歯切れの悪い凶一郎をぐいぐいと押し、あきらは前に座った凶一郎にしがみつくと一瞬身じろいだような気がした。
「係員さん、流して貰って大丈夫です!」
「はーい、イッてらっしゃーい」
係員の合図と共に浮き輪が流される。
このスライダーは激流だ、ちゃんとしがみついていないと下に落ちてしまう。
必死にしがみついている後、終着地点までたどり着き水に沈み込んだ後水面から起き上がりプールサイドへと上がる。
「速かったね、凶一郎」
「ああ」
濡れた髪を払うと凶一郎が視線を外す。
「?」
不思議に思ったあきらは次に流れてきた人のあおりを受け勢いよく水しぶきを浴びてしまった。
「あーびっくりし…………」
結び方が甘かったのか、はらりと胸元の水着がゆっくりと落ちていく。
「わっっ!!!!」
慌てて胸元を抑えなんとか人前で晒すことは免れたものの、これでは水着を元に戻すことが出来ない。
「きょ、凶一郎、ほんとに申し訳ないんだけど……
後ろの紐直して貰って良い……?」
「お前は……全く」
何をしているんだ、と凶一郎は呆れている。
「ごめん、紐の結び方甘かったみたいで……」
「ほら、後ろを向け」
うん、とあきらが後ろを向くとまっさらの背中が目についた。
先ほどのスライダーで肌に水が滴っている。
「凶一郎?」
あきらの呼びかけに凶一郎ははっと我に返り水着の紐に手をかける。
緊張しているのか、いつも鋼蜘蛛を編むように器用に出来ず少し時間がかかってしまった。
終えられたと安堵しつつできたぞと声をかけるとあきらが振り返る。
「凶一郎、ありがとう」
そういって笑うあきらに凶一郎は胸の奥が締め付けられる。
「この後どうする?六美ちゃんのとこ戻る?」
「…………いや、もう少しだけ泳ごう」
凶一郎はあきらの手を引き、流れるプールへと向かっていく。
そして視線を向けないまま。
「それと、その水着よく似合っているぞ」
と言ってあきらの目が大きく見開かれみるみるうちに顔が赤く染まっていく。
「あ、ありがとう……」
そう言って彼の手を握り返したあきらだった。