凶一郎の婚約者さん
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始めまして、私切崎殺香とお申します。
縁あって太陽様を鍛えるべく夜桜家のメイドとなりました。
それからしばらくの事です。
私は六美様のお使いでお買い物に出かけていたのですが…………
なんと!!凶一郎様の婚約者であられるあきら様が別の殿方とデートしているのを発見してしまったのです……!!
「ということでして……殿方はヒナギクでもなさそうでしたので一体どこのどなたなのでしょうか…?」
よよよよ、と涙を流す殺香。
「ふん、どうせ他人のクリソツとかだろう
あきらが俺以外の男とデートするはずがない
そもそも証拠はあるのか?」
と凶一郎がそう言うので殺香は先ほど盗撮したお写真を見せると凶一郎は倒れてしまった。
「お兄ちゃん!?」
凶一郎の脳内にあきらとの思い出がフラッシュバックする。
「わ、わあ…………」
「泣いちゃった……」
メソメソ泣く凶一郎に二刃が喝を入れる。
「全く、大の男が床に寝っ転がって泣くなんてみっともないよ、ほらもっとしゃっきっとしな」
「知らない……あんな男は知らない、誰なんだ……」
ぐすんぐすんと涙を流す凶一郎に六美は励ました。
「き、きっと大丈夫だよ!お兄ちゃん!
あきらお姉ちゃんがお兄ちゃん以外の人を好きになるはずがないもん、ほら元気だして」
「む、六美〜〜〜〜〜」
その傍らスマホで情報収集していた四怨はおっ、こいつかと空中にデータを映す。
「こいつ大企業の息子だな、でもこの企業は裏社会とは何も関わりねぇんだが……
息子のアカウントはっけーん
……『企業の娘さんとお見合い中……お見合い中!?』」
四怨が驚愕する。
その企業の名前は、あきらの父が経営している企業の名前である。つまり…………
「お、お、おみみみみみああああいいいいいい」
「お兄ちゃんしっかりして!」
ブルブルと震えて凶一郎が壊れてしまった。
「む、むつみ」
「お兄ちゃん、大丈夫だよきっと、何かの間違いだよ
私に出来ることなら何でもするから」
「六美…………
じゃあ、代わりにお兄ちゃんとけっこ…」
と言おうとした凶一郎を二刃が締め、四怨が更に投稿を読み上げる。
「シスコン兄貴、まだまだ足りねーみてーだな
『あきらさんはあった瞬間一目惚れしたようですぐに結婚したいと言っている』」
「ごべえ!!!!!」
「『お近づきにとプレゼントを贈ったが貰ったプレゼントの中で一番嬉しいと言っている』」
「びゃあ!!!」
四怨が読み上げるごとに凶一郎から悲鳴が上がる。
「全く……そんなに嫌なのかい」
「嫌に決まってるだろう!!!!あきらが俺以外を好きになるなんて許さん!!!ぐすっ」
おいおい泣く長男に何で本人に本音言わねーのかな、と呆れつつ四怨は再度文章を眺める。
あきらは凶一郎他自分と親しい者以外には意外と非情である。
そんなあきらとかけ離れた描写に四怨は頭を傾げたのだった。
「………あきらさん聞いてる?」
「あ……はい……」
「俺に見惚れるのはいいけどさぁ〜〜〜
話を聞いてくれないのは悲しいなぁ〜〜〜」
じゃあその右手に持っているスマホを操作するのはやめろと言いたくなるがぐっと堪える。
ちなみに凶一郎も時折六美の保護の為よくスマホを見ているのだがそこは全く気にしていないあきらだった。
というか見惚れもいないし、この会話が退屈なだけだ。
早くこの場所から逃げてしまいたい、あきらはどうしてこうなったのか、と発端となった人物を恨んだ。
夜桜邸とまではいかないが、世間一般では豪邸と呼ばれる屋敷の前にあきらが立っている。
そう、ここはあきらの生まれた家だ。
最近ここ数年はこの家に帰る頻度は少なくあまり帰ることも無いが、たまたま用事が出来てしまったので帰らざるをおえなくなってしまった。
深呼吸をして、屋敷に入る決心をし家の中に入ると自分よりも少し年上の女性が現れた。
「おかえりなさい」
「……ただいま戻りました、お義母様」
あきらから母と呼ばれるこの女性はあきらが17歳の時に父と再婚した新しい義理の母である。
「……それでお話とはなんですか」
普段夜桜家の家族と接する時とは考えられないほど感情のこもっていない目で義理の母を見る。
あきらがこの家にわざわざ帰宅したのはこの母がどうしても話したいことがあると呼びつけた為である。
「そうそう、用なのだけれど……お見合いしてみない?」
「………………はい?」
お見合い?
「……お義母様、私には凶一郎さんという婚約者がいるのはご存知ですよね」
「ええ」
「それなら何故……」
意図が分からないとあきらは母を思わず睨んでしまった。
「そんな怖い目で見つめないでちょうだい
わたくしは心配しているのよ、あなたが無事結婚出来るのかって」
「心配せずとも結婚しま」
「そういってあれから何年が経ったのかしらね?」
「………………!!!」
かつりと母があきらの後ろが通る。
そう本当ならばお互い18歳を超えた時、結婚するはすだった。
けれど…………あの事件が起きたことで白紙に戻り婚約破棄はされなかったものの、明確にいつ籍に入れるかなどは今も決まっていない。
「……か、彼の、家が大変だったんです」
「でももう五年よ?本当に結婚する気があるの?」
「…………あるに決まってるじゃないですか」
一瞬言葉が出なかった。
「それなら確実に結婚出来る人と結婚した方がいいに決まってる
ねぇ、私の親戚にちょうどあなたとお見合いをしたい人がいるの、あってみない?」
「ですから……お見合いをするつもりなんてありません」
この人は私の心配なんてしていない。
早く私をここから追い出したいだけだ。
もし結婚出来ないとすると必然的に家を継ぐのは私になる。
この女は自分の息子を確実に跡継ぎにする為に邪魔な存在を消したいだけだ。
決心は変わらないと言うと母はそう…とため息をつく…
これで諦めてくれたかと安堵していると母は恐ろしい言葉を吐いた。
「しょうがない、私から早く結婚するように聞いておきましょう」
「え」
「早速連絡を……」
「っ、や、やめてください、それだけは」
どうかそれだけは頭を下げる。
凶一郎にはその話だけはしたことはない。
決して急かしたくはないのだ。
「どうか……っ!!!」
「分かったわ、でもお見合いはしたくないのね
しょうがない、会うだけ会ってみてくれないかしら?」
「…………合うだけなら」
そう言ってあきらは母の条件を飲んだ。
会うだけ、あくまでも親戚の付き合い、そのはずだったのに。
何故か男の方は完全に見合いのつもりでいている。
嵌められた、とあきらは内心舌打ちをついた。
下手をするとこの見合いの事をダシに脅しをかけられるかもしれない。
何とか打開策を打たなくては……と考えた。
結局、良い案は浮かばかったものの夜桜凶一郎という男は知らないものの、あきらに婚約者がいるという事は知っていたみたいで。
あまり知らない見合い相手が凶一郎の事を間接的に悪口をいった為激高したあきらが水をぶっかけて良いか悪いかはともかくお見合いは終了した。
流石に相手を怒られせて返してしまったので住処には帰れず夜桜邸にも帰りづらかったので皆が寝静まっている夜更けにこっそりと帰ることにした。
居間を開け、クタクタになったソファに腰掛けるとパチンと電気がつけられる。
「おかえり、見合いは楽しかったか?」
そこには冷たい笑みを浮かべている凶一郎が立っていた。