凶一郎の婚約者さん
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零は将来六美が結婚披露式を上げた時ようのビデオテープを取り終え、立ち上がった零を凶一郎が引き止めた。
「母さん、どこ行くの?」
「ちょっとあきらの様子見にね」
訳あって夜桜家としての才能を発揮してしまったあきらは一般社会の人間としては生きていけない。
裏社会で生きていく為にあきらは夜桜家の指導の元スパイとしての技術を学んでいた。
……が、開花の影響かあきらは自身の体の疲れに気づきにくく既に体が悲鳴を上げていても特訓を続けてしまうので目を見張っていないと今日のように熱を出してしまう。
念の為他妹弟に風邪を移さぬ様、自室で寝かせておりそろそろ様子を見に行く時間だ。
「俺も行く」
「それはいいけど……皆に風邪移さない為に凶一郎も夜桜汁飲むって言うんならね」
夜桜汁と聞いて凶一郎は固まった。
夜桜汁、夜桜家に伝わる滋養に聞く特性ドリンクだ。
これを飲めば大抵の風邪はすぐ治る、ただし味が強烈に不味いのが難点だ。
凶一郎含めとの妹弟もこれだけは苦手である。
正直飲みたくない、けど……
「……飲む、から着いて行ってもいい?」
「いいよ」
コンコンとノックがしてあきらは目を開けた。
入るよ、と声をかけてから零がドアを開けるとむくりとあきらが見を起こす。
「あきらちゃんお見舞いにきたよ」
「調子はどう?」
「……元気、もう大丈夫」
「うそ、おっしゃい
まだ顔真っ赤じゃない」
零が諭すとあきらは元気なのに……と呟く。
それもそのはず、今だ体の感覚が正常ではなく自分が風邪を引いているという感覚すらこの時のあきらには無かった。
「さて、疲れからきてるとは言え風邪直さなくちゃね
はい、夜桜汁、残さず全部飲むのよ」
零はごぼごぼと音を立てながら沸騰している黒い液体が入ったコップを渡す。
凶一郎は思わず強烈な味を思い出してしまい口を押さえた。
「……いただきます」
あきらはじっと夜桜汁を見つめグビグビと一気飲みした。
「……ごちそうさまでした」
「美味しかった?」
零がそう聞く。
オイシイ、美味しい。
凶一郎達が零の料理を食べてよく言う言葉。
あきらはその美味しいという言葉がわからなかった。
きっと零が作るモノはオイシイのだろう。
「……オイシイ」
ぽつりと言うと凶一郎はええーーと嘘を言っていると目で訴えかけてくる。
「あきらちゃんいつも平気そうに飲むけど我慢してるだけだよね、だってそれすっごく、不味いもん」
「……マズくないよ」
「嘘だー!!!」
けれどあきらは嘘を言っているわけではない。
味覚が機能せず、不味いものも美味しいものも認識出来ていないだけである。
「ねぇ、いつもの違うことはあった?」
「……そういえば舌が変」
変、ね。と零が呟く。
少しずつ感覚が働いている証拠だろうと凶一郎に手を握られて少し頬を赤らめているあきらを見て零はそう思ったのだった。
数年前。凶一郎がまだ3歳の頃。
一人の男が夜桜邸を訪れた。
「……よく来てくれた、さぞ不安だっただろう
さぁ、どうぞ」
百の出迎えに男は娘を抱え、ペコリと頭を下げた。
「……で、その子が例の子か
誕生する時に桜色の目だったと聞いたが……」
凶一郎はあまり一般社会の子供と接する機会がないのか、珍しそうにちょっかいを出しているがあきらは無反応だった。
「はい、今は普通です。ですが……」
あきらの父は娘をどこか気味の悪いものでも見るような視線で答えた。
「全くと言っていいほど、感情をあらわにしません
赤子の頃から泣きもせず、笑いもせず……
更には……」
と男が続けようとすると凶一郎はわ!!と驚いた。
「母さん、あきらちゃん吐いちゃった」
「吐いちゃったって……凶一郎用の飲み物飲ませちゃ駄目よ!?凶一郎用の毒が入っているんだから……
ごめんね、辛かったよね、苦しかったよね」
とあやそうとした零はあきらの様子に気づく。
あきらの瞳は全くの無感情だった。
自分が苦しくて吐いているという認識がなく、表情も全く動かない。
おかしい、明らかにおかしい。
体は異常反応を起こしているのに心に全く響いていない。
「痛覚、もか」
「はい……」
百はあくまでもコレはわたしの予測にすぎないのだが、と答えた。
「恐らく誕生の時の開花が原因だ
感情、痛覚含めそれを伝える機能が止まっている
それが誕生の時に起こった為、心が成長しないのだろう」
「……では、娘は一生あのまま、と」
指を汲み、項垂れたあきらの父に百が肩に手を置いた。
「方法はある……気が遠くなるほど時間はかかるだろうが……しばらくうちに預けてくれないだろうか」
そう諭す百にあきらの父はぐっと涙を堪え、よろしくお願いしますと再度頭を下げたのだった。
『止まっていると言っても頑丈な氷に包まれているようなものだと思えばいい
そして止まった原因がソメイニンによるものなら……また氷を溶かすのもソメイニンだ』
百の言ったとおり、凶一郎達と共に暮らすようになってから、あきらは少しずつ感情を学んでいった。
分からない感情と痛覚はまだ完全に機能していないので、まだまだ時間はかかるだろうが確実に進展している。
「母さん、どうしたの?」
「ん?あーーそういえば凶一郎夜桜汁飲むって言ってたのに飲んでないなーって」
ぎくりと凶一郎がしまった、と言うも遅い。
「男に二言はないわよ?凶一郎」
「…………うえええん、やっぱやだー!!」
飲みたくない、と暴れる凶一郎をその理由が分からないあきらは首を傾げたのだった。
※ここからはアニメ夜桜さんちのミニアニメネタです。
本編が原作寄りな為あくまでもネタです。
決戦に挑む為英気を養うお花見が夜桜邸で開かれていた。
夜桜兄弟含め、他スパイ達も集められ宴会は進んでいく。
そんな中六美が歌おうとしたので、それを阻止すべくなんやかんやで凶一郎が歌うことになったのだが。
最初こそ普通に聞き入っていた観衆だったが、その歌の内容が妹である六美に向けた物であると判明した途端会場の空気は地獄と化した。
が、しかしその中で唯一凶一郎の歌にドン引きせず、うっとりと眺めている者がいた。
そう、凶一郎の婚約者ことあきらである。
よくよく見れば目に『好き♡』と書いてある。
「あきら姉さん、自分のことでもないのになんであんなに頬赤らめてるだろう……」
妹によって地下に落とされた凶一郎はおかしいという。
「俺はただ六美への愛を歌っただけなのになんだこの視線は!!!」
「なんだじゃねーよ、このシスコン
せっっかくの宴会のムードブチ壊しやがって」
ブーブーと周りから非難の声が飛び交い、凶一郎は幸せそうなあきらの下へと歌った。
「くっ、なぁ、あきら俺の歌どうだった?」
「?かっこよかったよ!」
「そうだろう!!六美への愛はどうだった?」
「うん、すっごく純愛!全米も大号泣だよ!」
「引いてないよな?」
「全く!」
そうかそうか〜〜と喜ぶ凶一郎を六美は偽りの笑顔で見つめる。
「つーかそれあきらねーちゃんの純愛範囲ががっばがばなだけだろ、どんだけストライクゾーン広いんだよ」
「逆にどこだったら許せないんだろうな……」
と話す四怨と嫌五だった。