声をかけられあきらは夢から覚めた。
目を閉じたままそのまま惰眠をぬさぼろうとした所体を揺さぶられた。
気持ちよく寝ているところに何だとちょっとイラッとする。
せっかくの休日、ゆっくりと寝させてほしいのに……と手を追い払った。
「おい……」
……しつこい……
あきらは勢いよく起きて相手を睨んだ。
「あーー、もう起きるってばお母さん！！…………あ……え？」
相手の男は気まずそうに頭をかいた。
「目は覚めたか？五十嵐」


トーストされたパンを手に取りジャムを塗って頬張った。
「で、誰がお母さん、だって？」
「っ」
千空の発言に思わずむせた。
千空はというとニヤニヤしてこちらの反応を楽しんでいる。
「それはさっき言い間違えたって言ったでしょう！」
石神家に居候する事になってから初めての休日でうっかり自分の家にいるもんだと錯覚してしまったのだろうか。
思いっきり恥をかいてしまった。
寝ぼけていたとはいえ同級生の男子を母と間違えるなど穴があったら入りたいし記憶をまず消したい。
「石神も言い間違えた事ないの？」
「ねぇな」
きっぱりと即答された。
完璧人間めとあきらはパンをかじった。
しかし、あきらは知らない。
あきらがやってきた翌日千空が百夜が帰ってきたと勘違いして名前を呼びそうになった事を。

「ほんとに？」
「……ああ」
僅かに間を置いた千空をあきらは怪しんだ。
千空はあきらの気を引くべく最後のベーコンを取った。
「あっ」
「ククク、食べたいなら先約をとっておくんだったな」
ぐぬぬぬとあきらが震えているがともかくさっきの話題は追及されないだろう。
千空は安堵した。