スマホのアラームが鳴り千空は目を覚ました。
体を起こし背伸びをして半覚醒な脳を出来るだけ元の状態に戻そうとすると居間の方からパンが焼けるような匂いがした。
「百夜か？」
帰ってくると連絡を受けていないが……
いや、ほんと時たまにサプライズで連絡なしで帰ってくる事もあった。
お早いお帰りじゃねぇか、とドアを開けて言おうとしたのだが、居間にいる人物を見て千空は固まった。
「おはよう、石神」
皿を持っていた人物は父親の百夜ではなく同級生のあきらだった。
あーそういやそうだったわと昨日の事を思い出した。
「“あ～～着替えてくるわ」
あきらは制服なのに対し千空はつい寝巻きのまま出てきてしまった。
着なれた学ランに袖を通してもう一度戸を開けた。
「おはよう、五十嵐」
「おはよう、ごはん出来てるよ」
机には朝食が既に置かれていた。
今日の朝はあきらが当番だ。
「夜は俺だったな」
「うん、お願い」
ちなみに昼はまだ当番を決めていない。
いや、弁当にするならお互いメニューが被らないよう配慮しなければならない。
同じような弁当を持っていればそれこそ感づかれる。
「「頂きます」」
手を合わせてから更に手を伸ばした。
「昨日の約束覚えてるか？」
「うん、家を出るタイミングをずらすって話だったよね」
幼馴染みの大樹が家にやってくる前にあきらが出るかそれか千空が出てからあきらが出るかどちらしかない。
帰宅も同様にずらす必要がある。
朝食を食べ終わって皿を洗っているとチャイムが鳴った。
顔を見合せ頷いた。
「先行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」
鞄を持ちドアを開けると大樹が待っていた。
「千空！！！おはよう！！」
「うるせぇ、ほら、とっとと行くぞ」
千空は少しでも早く家から遠ざかるべく歩いた。
大樹はそんな千空にどこか引っ掛かったが特には気にしなかった。


教室に着きクラスメイトと話しているととある女子が教室に入ってきた。
そいつは俺には目もくれずただ横を素通りして自身の席へと向かった。
『家以外では他人の振り』
まさにその通りだった。
徹底してやがると思いつい口が緩んだ。
「どったの、千空ちゃん」
「あーー、なんでもねぇよ
研究のあれだ、つい顔に出ちまってな」