「石神何かおとしたよ」
「あ”？」
「ん？」
千空と百夜が同時に振り返る。
しまったここには石神が二人いた。
すみません、百夜さんじゃないんですと謝ると百夜は何かを思い付いたような顔をした。

「せっかくだし二人とも名前呼びに変えたらどうだ？」
「は？？」
「えっ」
余計なこと言いやがると千空は顔を歪めあきらも困惑した。
「同じ石神が二人いると紛らわしいだろ？」
それはそうなのだが急に呼び方を変えるとは言っても……
「私の方はいいですけど……」
チラリと横をみると千空は顔をしかめている。
「つっても困んのは百夜がいる時だけじゃねぇか」
「まぁ無理にとは言わねぇよ」


千空は再び百夜を自室に引っ張りだした。
「おい百夜ついこないだ手出すなとか言ってたのはどうしたんだよ」
「別に名前呼ぶくらいふつーだろ？？
それで何か変わるわけじゃああるまいし
それとも何だ？千空は名前呼びでも緊張するタイプか？」
「んなことねぇわ、バリバリに名前呼んでるわ」
「お～～なら安心して名前呼べるな」
つい歯車にのせられてしまい千空は舌打ちした。
「まぁ……何だ
居候とはいえどもよ一緒に暮らしてる仲なんだ
苗字で呼びあうのは些か寂しいもんじゃねぇかってな」
要するに苗字呼びでは親しくなってないのでは……と心配しているらしい。
まったく仲良くするなと言ったり仲良くしろ、と忙しい父親だと千空はククと笑った。
「あ”～～～分かったよ」


夕食後百夜は再びアメリカに帰っていった。
「あっという間だったね」
「ああ」
「次いつ帰ってくるかな？」
「さあな」
なんて千空は言っているがこの口元は僅かに緩んでいた。
やっばり父親と久々に会えて嬉しいのだ。
その後片付けをしていると千空が洗い場にやってきた。
「あきら、皿洗い俺もやる」
「ありがとう、いしが……えっ！？」
思わず千空の方を見る。
「んだよ、そんなに驚くことか」
「う、ううん、嬉しい
ありがとう……千空」
そのあとは照れてお互い無言のままお皿を洗うという変な光景と化してしまったが千空と少し仲良くなれた気がして胸の奥が暖かくなった。