居候が始まって数週間が経った。
ようやく距離感の取り方に慣れこうして居間に一緒に居ても平気になったと言ってもいいだろう。(それでも若干気まずくなる時もあるが)
千空はパソコンで調べものをしつつコーヒーを飲んでいる。(部屋でやらないのかと聞くと精密機器がたくさんある自室で万が一の事が起きないよう熱い飲み物を飲む時は部屋を変えるらしい)
一方あきらは本を片手に読書だ。
なんて優雅な休日。
ただ時間が流れる……かと思いきやその時はやってきた。

「千空ーー！！！」
ピンポンとチャイムが鳴ると同時に玄関の方から大きな声が飛んできた。
あきらはびっくりして呼ばれた本人を見るともっとびっくりしていた。
「やべぇ、すっかり忘れてた……」
「千空今のって」
「……説明は後だ…………！
そっこーで五十嵐の痕跡を消さなきゃなんねぇ」
恐らく声の主は千空の友達だろう。
この慌てよう、多分遊びにきたか何かだ。
ということは上がってきた友達は千空宅にいるあきらを見ることになる。
……そうなったら友人がどう思うか……
下手に誤魔化しても変に思われるだけだ。
玄関に友人がいる以上あきらはこの家から出ることはできない。
幸い石神宅は2階だが、飛び降りるのは良い策とは言えないだろう。
「わかった、とりあえず服とか片付けて部屋に籠っとく」
「俺はそれまで時間稼ぎだな
終わったら電話してくれ」
と言うと千空は玄関に向かっていった。

「っとさっさと片付けなきゃ」
ベランダに干した服、歯ブラシ……etc……
思い付くものはだいたい部屋に移せただろうか。
一つ一つの部屋をチェックし、見て回ったが特に変に思うような物はこれでもうないだろう。
千空が玄関で時間稼ぎしているはずだがあまり長時間話し込むと疑われると思うのでそろそろ自室に退散するとしよう。
自室に戻り鍵をかけてあきらは千空のスマホへ電話をかけた。