千空は困っていた。
というのもかれこれ視線を感じているからである。
視線の主はもちろんあきら。
さっきから遠くの角から顔を少しだしてこちらを見ているが、視線が合えば逃げるしただ千空を盗み見るのみだ。
こちらをちろちろ見るだけで何も行動を起こさないのにいい加減痺れを切らした千空は自らあきらに近づいた。
こちらに近づいてくると思ったのかあきらがまた逃げようとするので手首を掴む。

「五十嵐言いたい事あるならさっさと言いやがれ」
「あ、あの……さっきはごめん」
千空はあーーあれか、と数時間前の出来事を思い返した。
「謝るつーなら、こっちの方だろ」
「いや、でも石神だって見たくない物見たら嫌かなって……」
「洗濯のルール細かく決めてなかったのも原因だ、どっちに非があるとかんな事より
次どうしたら同じ事が起こらないか、を話すべきだろ」
謝るよりそっちが先だ、と千空は怒る様子もなく淡々と話した。
「気にしてない……？」
「気にしてねぇよ、生憎色事絡みは興味ねぇんでな」
全く気にされてないというのもそれはそれで癪にさわるような……とあきらは思ったがここは素直に喜ぶべきだろう。
話し合いの末、次回以降下着類はコインランドリーにて洗濯する事が決まった。
曜日毎に分けてもいいのだが、同居を周囲に伏せてる以上ベランダに女性特有の物が干してあるとバレてしまうだろう。
下着以外の服なら千空も視界の内に入っても問題ないはずだ。
「じゃ、決まりだな」
「うん、あーーえっと、石神
そろそろ手離してくれる？」
と言われて千空はあきらの手首を掴んだままだと気付きぱっと手を離した。
「あ”ーー……悪い]」
「そこまで強い力じゃなかったし気にしてないよ」
「そうか…研究あっから部屋戻るわ」

そそくさと部屋に戻った千空だったが……
ああ言いつつも若干下着を見てしまった事に動揺したのか。
時折その事が脳内をちらつきその日の研究はあまり身が入らなかったのは秘密だ。