「五十嵐来週のオフなんだが空いてるか？」
「特に予定はないけど……」
「なら良かった、他校の偵察を手伝ってほしいんだ」


当日あきらと乾は電車で移動し他校の偵察に来ていた。
乾はキャップのついた帽子を被り黙々とデータをノートに纏めている。
5月下旬とはいえこの日差しでは暑いか……と自分も帽子を被ってこなかった事にちょっと公開した。
「ここは一軍、二軍それぞれ分かれて練習しているらしい
五十嵐は2軍の方を頼む
何かめぼしい情報があれば連絡をくれ」
ぶっちゃけ乾が見た方が良さそうだけど……
まぁ一度に両方見れるわけではないし分担すれば時間も短縮できる。
乾ほど精密にデータが取れるわけではないけど自分なりにやってみようと思いあきらは乾と一旦別れた。

ある程度偵察を終えあきらは乾が偵察している予定のコートにやってきたのだが。
乾は誰かと話していた。
「乾、こっちは終わったけど……知り合い？」
「立海高校の柳蓮二だ、貞治とは幼馴染でな
そっちは……見ない顔だな」
「マネージャーの五十嵐だ
蓮二が見かけたことが無かったのは中学時代はマネージャーが居なかったのと五十嵐が高校からの編入学だからだな」
「なるほど、道理で見覚えがないわけだ」
すると乾は突然持っていた荷物を開いたところで柳が口を開いた。
「ちょうど新作の乾汁が出来たところなんだ…………とお前が言う確率90%」
言い当てられた乾は笑いつつ水筒を出した。
「その通りだ、是非試してほしくてね」
「ふっ」
その水筒の中身には何が入っているのか……考えただけであきらの背筋が震えあがった。
ていうかこの人も乾とちょっと同類の匂いがする。
類は友を呼ぶとはいうが……
「そうだ、五十嵐お前も飲まないか……あれ？」
乾の目の前にいたはずのあきらはこつぜんと姿を消しそのかわりメモが置かれていた。
『偵察し忘れた箇所があったからもう一回行ってくる』
「いないな、どうやら貞治は苦手意識を持たれているようだな？」
「俺は結構仲いいと思うんだけど……
飲んで貰えないとは残念だ」