「おはよう五十嵐」
「お……おはよう乾」
「こないだ捻った足の具合はどうだ？」
「乾のおかげでだいぶ良くなったよ、ほら」
捻挫した方の足で片足立ちをすると乾は眉を上げた。
「おいおい完全に治ったわけじゃないんだからあんまり無茶すると……」
と言ったのも束の間あきらの体がぐらりと揺れた。
「わ、わわっ」
言わんこっちゃないと乾は胸であきらの体を受け止めた。
「ほら、こうなっただろ？」
「ご、ごめん……」
「反省出来てればよし、足はなんともないか？」
「う、うん」
あきらは慌てて乾から離れる。
あのお祭りの日以来ずっとこうだ。
まだドキドキが……収まらない。
学校に向かうがてら横で歩く乾をそっと見上げると乾がん？とこちらに微笑んでくる。
あきらは何でもない！とそっぽを向いた。
気持ちを自覚してからというものの何気ない仕草でも発動してしまうらしくしょっちゅう赤くなってしまう。
ああ、夏で良かった。


「あと少しで学校も終わりだな」
「夏期講習とか部活もあるからあんまり休みって感じしないけどね」
「ああ、それと聞いてると思うけど夏休みに入ったらすぐ合宿あるからね」
テニス部全体というのもありどこかの宿泊施設を貸しきって行うらしいが勿論自炊も自分達で行うらしい。
それはマネージャーであるあきらの役割だ。
とはいえ実はマネージャーはあきら一人だけではない。
他に数人いるので分担して行うことになるだろう。
頑張って部員のサポートをしなければと思っていると乾が一言つけたした。
「そうだ、合宿には……
ああ、いやこれは当日まで秘密だったな」
乾はニヤリと笑う。
絶対ろくでない事を企んでいるに違いない。
あきらは合宿が何事もトラブルが起こることなく終われるよう祈った。