翌日があきらはいつも通り練習場所に向かったのだがそこには意外な先客が立っていた。
「海堂？」
日課のランニングだろうか。
でも海堂の手にはラケットが握られている。
「打ち合いすんぞ」
と言うと海堂はがあきらから距離を取りテニスボールを掴んだ。
「えっ」
困惑するがあきらに対し海堂は容赦なくテニスボールをラケットで打ち込んでくる。
向かってくるボールを見て慌ててがあきらはラケットを構えた。
「ねぇ」
「あ？」
ラリーをしながら軽く会話をする。
「何で相手してくれたの？」
「……壁だけじゃ上手くなれねぇだろ
強くなりたいんじゃねぇのか」
「うん」
海堂の放つ球は重い。
加減してくれてるのだろうが男子の力はやっぱり強い。
踏ん張って何とか返しつつがあきらは海堂に感謝した。
「ありがとう
海堂は……やさしいね」
「………………！」
誉められた海堂は照れたのかラケットを大きく振り抜いた。
海堂が放った球は大きくカーブを描き地面に落ちた。
海堂の技を見たがあきらは目を見開き驚いた。
「さっきの、バギーホイップショットだよね！」
「さっきのはそれに改良版を加えたスネイクだ」
「あ、言われてみれば」
スネイク、かっこいいね技だね、と言うと海堂はそっぽを向いてしまった。
そんなこんなで打ち合いを続けているとがあきらの携帯が鳴り出した。
終了の合図のアラートだ。
「あーーもう時間かーー」
名残惜しそうに呟くがあきらに海堂が近づいた。
「また、今度相手してやる」
「いや、遠慮しとくよ
元々のランニングの分削って時間作ってくれたんでしょ？何か申し訳ないし……」
「言っとくが別に五十嵐の為なんかじゃねぇ、全部俺の為だ
負けて悔しいのは俺も同じだ」
「海堂……分かった
でも毎日はあれだから週に一回でどうかな？」
「ふん……好きにしろ」
こうして海堂と週に一回一緒にテニスすることが決まった。