晩御飯を食べた後、あきらは留三郎にケーキはどれがいいかと聞いた。


「んーと、チョコレートケーキがいい！」

チョコレートケーキね、とあきらはケーキを皿に移したあと自分が食べるケーキも取り出した。

(あと、3つ残ってるけど明日でもいいか)

「そうだ、飲み物も用意しないと」

留三郎に再度何が飲みたいときくとジュースであれば何でもいいらしい。

冷蔵庫からりんごジュースを取り出した後、自分用にコーヒーマシンで淹れていると留三郎が話しかけてきた。

「それって……ブラックコーヒーってやつ？」

「ん？うん」

もしかして、飲みたいのだろうか。

「俺もそれ飲む！！！ブラックで！！」

やっぱり……。

「コーヒーを飲むのはいいけど、ブラックは苦いから砂糖とか牛乳入れた方がいいよ？」

「け、ケーキが甘いから大丈夫だって！」

何を言っても留三郎は「絶対にブラック！」しか言わない。
ほんと頑固だなあ……。
私が言える事ではないけど。

仕方なくあきらは留三郎の分のコーヒーを入れてテーブルに置いた。

留三郎はじっとコーヒーを見つめた後、覚悟を決めごくりと飲んだ。

「に……」

「に？」

「苦ああああああい！！！！」

そりゃそうだろう、コーヒーでしかもブラックなんだから。

留三郎が苦いと言い出すだろうと予想してた為、予め用意しておいた砂糖とミルクを留三郎の目の前に置いた。

「一応、用意しておいたけど、使う？」

「つか…………使わない！！」

その後、留三郎はケーキとコーヒーを交互に挟みながらブラックの苦さと格闘していた。

何故そんなにむきになって飲んでいるのかと聞くと留三郎はこう答えた。

「だって、文次郎がブラックコーヒー飲んでるっていうから……」

あーーとあきらは納得した。
留三郎は度々文次郎と張り合うことがあるからだ。

「こないだ小学校で文次郎がコーヒー飲んでるって自慢してたんだよ
それであいつに……
留三郎はコーヒーなんか飲めねえよなあ！！お子ちゃまだもんなあ！！ってバカにされて……
俺だってコーヒーくらい飲めるって言いたくて」

ぐすんと留三郎は少し涙目だ。
よほど悔しかったらしい。

(でも、昔誰からか文次郎は砂糖とミルク入れないと飲めないって誰かから聞いたような……
あ、仙蔵か)

そう、あきらは仙蔵の陰口で知っていたが文次郎はコーヒーを飲めると自慢していたが、実は砂糖等を入れないと飲めないのだが、留三郎が勝手にブラックと勘違いしていたのだった。