一方5年生もバレンタインデーに向けて対策会議を開いていた。

「正直……俺貰えない気がするんだけど……」

そう呟いた八左ヱ門は既に諦めムード満々だ。

「ばっかやろう！！」

三郎は何故か八左ヱ門をグーで殴った。

「痛ってえ！！何だよ！！
それともお前は貰えるってのかあ！！」

じんじん痛む頬を擦りながら、八左ヱ門は三郎の服を掴んだ。

「じゃあ、そうやって最初から諦めてたら手に入るチョコなんて無いだろうが！！」

三郎の言葉に八左ヱ門がハッとした。

「俺が間違ってた……そうだよな
始めから負け勝負だと意識してたらそりゃ貰えないよな！」

うおおおおおと、熱くなっている二人に対し
勘右衛門は気はすんだ？と聞いた。

「うん」

そう、このやりとり、毎年やっているのである


「あのさーー、それ毎年やる意味あんの？」

勘右衛門の問いに二人はへへっと何故か誇らしげだ。
(何かむしゃくしゃするので凄く殴りたい、あと時間の無駄だし)

「いやー、これやるとこう……ぎゅっと気持ちが引き締まるんだよな！な？三郎？」
「ああ……何故か分からない……
でも、やる気は出る」

勘右衛門はへーと適当に相槌をうち、で？成果は？と聞くと
一気に場の空気の雰囲気が重くなった。

「じゃあ、それ効果ないじゃん」

最もな意見を言うと、八左ヱ門が抗議した。

「去年成果が無かったとかじゃないんだよ！！
今年貰える可能性はあるかもしれないだろ！！
そういう勘ヱ衛門はどうなんだよ」

勘ヱ衛門は勝ち誇った笑みで答えた。

「チロルチョコ貰った」

「チロルチョコはないだろ！！
どうみても義理だろ！！！」

「チロルチョコのどこが駄目なんですかー！！
チロルチョコ美味しいだろうがっ！！！」

このままだと喧嘩になりそうなので雷蔵は慌てて止めた。

「ち、チロルチョコ僕も好きだよ
ほら、喧嘩やめてー」
「そういえば、雷蔵は？」

三郎が聞くと雷蔵は記憶を辿った。

「僕？うーん、くのたまから何個か貰ったかな？」
「複数か！？！？このやろう！！」
「ちょ、ぎ、義理だと思うよ！！
それにあきら先輩から貰えないと実質0個みたいなもんだし」

あきらの事が好きな雷蔵だが、ストーカーしてる為本人から凄く嫌がられている。
雷蔵の溜息に周りはあーーーと察した。
(これまで一回も貰ったことないのか……
そりゃ、普通くれないよなあ……あの反応じゃ……)
他の5年は雷蔵を哀れに思った。