「千空ーー！！！！」
「うるせぇな、何だデカブツ」
「昨日またあきらが出てたぞ！！」
「“あ～～知ってる」
大樹はそうか！！千空も見てたんだな！！と言うが実際は違う。
先日あきらにテレビに出てみたらどうだと薦めたのは千空だ。
あの後取材を受けてみると連絡があったのでそろそろ放映されると予想はしていた。
すごいなーー！！と耳元で叫ぶ大樹をあしらいつつ千空はいつも通り実験を続けた。


「来週の勉強会なしにしてくれ？」
「うん、本当にごめん
どうしても予定合わなくて……
新しいお弟子さんの説明もしなきゃいけないし……」
「しゃあねぇな
まぁ期末までまだ期間空いてるし問題ねぇか」
慌ただしそうに帰るあきらを千空はまぁ頑張れと特に思うことなく玄関口から見送った。
そうこの頃までは。
一週間置きだったのが二週間置きになりあきらと会う機会はますます少なくなっていった。
会ってもあきらが分からない問題を教えるだけでたわいもない会話をする暇さえない。
中学も違えば家が近所というわけでもないあきらとは勉強会だけが唯一会える機会だった。
今頃あいつは何をしているのか……とつい思考を巡らせてしまい千空は溜め息をついた。
と考えていると家の固定電話が鳴ったので出ると相手はあきらだった。
久しぶりに聴いたあきらの声に千空は僅かに喜んだが。
その喜びはすぐに地に落ちた。
「ああ、……分かった
あ？気にすんな、……頑張れよ」
がちゃりと受話器を下ろし千空はベッドに倒れこんだ。
先ほどのあきらとの会話が蘇る。
『あのさ、勉強会なんだけど
そのお父さんがもう赤点じゃないんだからやめたらどうだって……
本当に千空には申し訳ないんだけど……』
「……」
確かに最近は赤点をとることもなくなった。
そう、だから無理に千空の家に行って勉強を教えてもらう必要はないのだ。
剣道等が忙しくなれば自ずと優先順位は下がる。
「……くそ」
結論を言えばあきらと会う機会が無くなっただけの事。
勉強会が無くなった今あきらと会う必要性も理由をつけて会う必要もない。
はずなのに千空はどうしてこんなに心がもやもやするのかまるで理由が分からなかった。