「千空、昨日のテレビのニュースであきらが映ってたぞ！！！」
「へぇ、そうか」
聞くとこの間の大会で優勝しそのインタビューが放送されていたらしい。
「千空知らなかったのか？
てっきり知ってると思ってたんだが」
「……いや、聞かされてねぇな」
きっとうっかり教えるの忘れていたんだな！という大樹に対し千空は眉間に皺を寄せた。


次の週の日曜日いつもと同じように勉強会にきていたあきらだったが妙に暗かった。
(まぁ、あんだけこっぴどく振ってりゃな)
と思いつつもどうした、と聞くと帰ってきた返答は予想とは異なるものだった。
「いや、あのね……道場無くなるかも」
「はっ！？」
「前々からちょっと経営危うかったらしいんだけど数年前に比べて人も減ったからって……お父さん言ってるの聞こえちゃったんだよね……
ごめん、こんな話して」
あきらは筆記用具をまとめ鞄にいれようとしたがうっかり鞄を落としてしまった。
「あっ」
「ったく、何やってんだ」
散乱した中身を千空も拾い集めていたところ一枚の名刺をみつけた。
「名刺？」
「あ、それこないだのインタビューの時に渡されたんだよね、テレビに出てみませんかって
あんまり気乗りしなかったから鞄に入れてて忘れてたよ」
あきらは落とした中身を鞄に入れ直し名刺は捨てようか迷っていると。
「ワンチャンテレビ出てみたらどうだ」
と千空にすすめられた。
「えっ、いや、柄じゃないよ、そういうの」
「情報は大事だ、テレビに出て話題性を掴んだら道場に生徒増えるかもしんねぇぞ」
「でも……」
「何にもチャレンジしないまま終わるつもりか？」
「っ」
そこで諦めるのか、と千空の赤い瞳が訴えかける。
「やりたいこと、あんだろ
なら、利用出来るもんは出来るだけ利用しといた方がいい」
「………………」
あきらはこの間見た父の背中を思い出す。
もうあの背中は見たくないと自分の手を握りしめた。

「分かった、やれるだけやってみる」
「やーーっといつもの顔に戻ったな
てめぇにゃ暗い顔は似合わねぇ」
まっすぐ千空を見ると千空は口角を上げて笑った。