朝になり起床したあきらはいつも通り身支度をすませ外に出ると勢いよく風が吹き身を震わせた。
カレンダーがないのであまり実感はわかないが11月に半袖はもう寒いな……と思っているとコハクが現れた。
「すまない、あきらちょっと来てくれ」
コハクに言われるがまま着いていくと、そこにはルリが待っていた。

「あきらさん、ちょっとこれを着てくれませんか？」
ルリから手渡された物は服だった。
それに袖を通しルリが問題なさそうだと頷いた。

「これって……」
「ああ、もうじき冬だからな」
ようするに防寒着である。
暦的にはまだ秋だが夜になるとちょっぴり寒くなってきたのでありがたい。

「っていうかいつの間に……」
「あきらさんはコハクと背丈がほぼ一緒でしたから……
採寸を採るのも時間を取るかと思いまして」
それくらいいいのだがまだ若干遠慮されているのだろう。

「ありがとうございます、ルリさん」
改めて礼を言うとルリはこのくらいしか出来ませんから……と謙遜している。
そんなルリの横にはまだいくつか冬服が置かれていた。
気になって見ていたのがわかったのかルリは千空とゲンの分だと教えてくれた。

「もう出来たか」
と後ろからルリに声をかけてきたのは千空だった。
同じくコハクに呼び止められやってきたらしい。
千空は悪ぃな、とルリに礼を言って手渡された服を羽織り問題なさそうだと頷いた。
あきらはそんな千空を横目で見ていたが千空がこちらの方に顔を向けようとすると慌てて冬服の方に目を向けた。
……どうもあれから千空とは上手く話せていない。
あきらから千空に話しにいくこともあまりないしまた、向こうからもない。
話題がないわけではないが避けられているような気がしてつい話しかけるのを躊躇ってしまう。
空を見上げればどんよりと曇が覆い被さり曇っていて、ああ、自分の心みたいだ、とあきらは思った。