「はあ～～～～疲れた～～～」
予定していた特訓が終わり銀狼は仰向けに倒れて突っ伏した。
「あきら、もう少し手合わせしてくれないか」
「いいよ」
「すまない」
しかし、銀狼の兄、金狼はまだ特訓を続けるつもりらしい。
銀狼はよくやるなあ……と引いている。
自分なら追加で特訓などありえないからだ。
「あきらもよく根気よく付き合うよねぇ～～
あ～～～やだやだ、これだから真面目系はさあ」
あきらも金狼も銀狼に対して容赦がない。
それに加えて鬼教官のコハクもいる。
これがしばらく続くのかと銀狼はげっそりと嫌な顔をした。
「それにしても最近金狼、あきらとよく話してるなあ」
真面目同士気が合うのか少し仲良くなったようだ。
「まぁ、いいや
見てると特訓に付き合わされそうだし…………」
そそくさと銀狼はその場から離れて村に帰った。


「ってなわけなんだけどさあ、我らが村長さん」
電球の製作に取りかかっていた千空は振り返らずに答えた。
「それがどうした」
「いや僕的には別に気にとめることでもないけどさあ？
千空的にはどうかなって」
「仲良くなれてんなら問題はねぇ」
千空は特に気にしていない様子だ。
「じゃあさ、もしあきらと金狼がもっと仲良くなってもいいって事？」
「…………………………」
千空は手をピタリと止め沈黙した。
「千空がいいって言うんならこれ以上何も言わないけど……
あんまりほっとくと知らないよ？」
銀狼は発破をかけてサボりから鍛練に戻った。
一方引き続き製作に戻った千空は。
「はあ、ったく」
お節介にも程があると悪態を着きつつこの後どうするか、と思考を巡らした。
その日の夕暮れ、鍛練を終えたあきらは刀の手入れをしていた。
最後の一本を終えたその時、千空がやってきた。

「ちょっといいか」
「いいけど、何か頼みごと？」
「あ”ーーー、いや別に何かあるつーわけでもないんだが……」
妙に歯切れの悪い千空を見てあきらは首を捻る。
千空がわざわざやってくるなど何か頼みごとがあるとしか思えない。
クラフト関係の事かとも思ったがそうでもないらしい。

「村の連中とはどうだ」
「どうって……まぁ、上手くやれてるんじゃないかな？」
どうやらあきらが上手く石神村の人々と打ち解けているかを聞きにきたらしい。
「全員と仲良く出来てるかっていったらそれはまた別だけど……
コハク、金狼、銀狼はこの最近よく手合わせするようになったから仲良くなったよ」
特に金狼とは気が合うとか手合わせ以外でも会話するようになった、
と言うと急に千空の表情が厳しくなった。
「そうかよ、そりゃ良かったな」
(んん？)
言葉とは裏腹になぜか千空の機嫌が悪いように見えるのだが…………
何か機嫌にさわるような事を言った覚えはないし……とあきらは再度首を捻る。
千空は少し沈黙したあとこう言った。

「金狼の事どう思ってんだ」
何故金狼に絞って聞かれるかは分からないが一応答えておく。
「どうって……強いていうなら……弟子に欲しいかな」
「は？弟子？」
「うん、弟子
金狼真面目だし筋もいいし……
弟子にほしいってちょっぴり思っちゃった
あ、本人には言ってないよ」
金狼はあくまでも槍が本命みたいだし、とあきらは付け足した。
「それだけか」
とそこまで話が進んだところであきらは意図に気付いた。
なるほど、そういうことか、道理で歯切れが悪いわけだ。
「いや、別に金狼が気になってるってわけじゃないよ、なんていうか……友達……でもないか
仲間って感じかな？」
司帝国と相対するまであと半年未満。
今は一丸となって携帯を作らねばならない。
そんな時に中から崩壊したのでは元も子もない。
おそらく千空は恋愛絡みで何かしらトラブルになって内輪揉めするのを
避けたいのだろう。

「大丈夫だって千空、そんないざこざ起きないからきっと」
と言うと千空は、ならいい、と返した。

そこで二人の会話は終った。
あきらは千空が密かに嫉妬していた事は知らず
千空も話そうはしなかった為、その会話は発展することなく。
１日は終わりを告げた。