「む、帰ってきたな」
隠れてこっこり帰ろうと思っていたが、そうは行かずあっさりと見つかってしまった。
「おうおう、千空よぉ
一人だけとはずりーじゃねぇか」
スイカたちもわらわら千空に群がっている。
「千空、せっかくだから今度皆で観に行こうよ、星空
夜は暇だし」
「“あーーそうだな」
しかし、クロムは首を傾げた。
どこか会話がずれているような気がする。
同じく違和感に気付いたゲンはあきらに問いかけた。
「ねぇねぇ、どうだった？」
「うん、キレイだったよ
やっぱ前とは比べてよく星が見えた」
やっぱりね、とゲンは心の中で呟いた。
てっきり千空の演奏を聴いているのかと思っていたのだが、それは違っていたらしい。
「さてと、ちーと研究所に用があるから先寝といてくれ」
そそくさと居なくなったのを見てコハクはずいと乗りだしてあきらに聴いた。
「で、どうだったのだ？
ギターを弾いて貰ったのだろう？」
「あーー、ちょい待って、コハクちゃん
多分ね、聴いてない」
あきらの方を見ると何の事だか分かっていない様子だった。
「ギター？？」
「しかし、微かに何か音が聴こえたぞ」
微かすぎて歌声は聞こえなかったが千空以外ありえない。
「へぇ、千空ギター弾いてたの
結論から言うと聴いてないよ、全く
私途中で寝ちゃってたみたいだから」
星空を見ていたら段々と眠気が襲ってきた辺りまでは記憶はあるが、その後は全く覚えていない。
「それってさあ……」
眠ったのって千空ちゃんの仕業じゃないとゲンは言った。
「だろうな」
よほど聴かれたくなかったのだろう。
しかしあきらは特に怒る様子もなかった。
「聴きたかったのだろう？」
「まぁ、聴きたいっちゃあ聴きたいけど
無理強いさせる訳にもいかないしね」
それに、とあきらは続けた。
誰かは分からないけど優しい人が頭を撫でてもらう夢を見た。
その夢はとてもとても幸せな夢だった。
「今はいいや、いい夢を見たから」