「ここが白夜さん達のお墓……」

墓石がずらりと並んでいて真ん中の石に月夜の明かりが差している。

「水瓶なんか持ってきてどうすんだ」

先ほど水を汲んできて持ってきたあきらに千空が何をするのか聞くと。

「そりゃあ、お墓の掃除だよ
汚れっぱなしは駄目だからね」

とりあえず白夜さんのだけ掃除しておこう。
他の人はまた今度で。
石に水をかけて布で拭う。

「後は線香もあれば良かったんだけど……」

「線香か、まぁ作れなくもないがちと時間がかかるからな」

作れるんだと、返事をしつつ摘んできた花を壺に入れて石の前に置く。
お供えも置いてもいいが、動物に食べられてしまうかもしれないから、やめた。
あきらは膝をつき目を閉じて合掌した。
千空はそんなあきらをじっと見つめていた。
そろそろ墓から移動しようとした時あきらは千空が何かを堪えているような感じがした。

「千空？」

(あ“ーくそ、らしくねぇ)

ここによると不意にどうしようもない気持ちになる。

「……先、行っといてくれ」

すぐ後追うから、と千空は言うがあきらは千空を一人にするのは……と躊躇った。
村からそんなに距離は離れていないが、少し心配だ。
あきらは千空から顔が見えないよう後ろを向いて座り耳を手で塞ぎ目を瞑った。

「私は今何も見えないし何を聞こえないから」

あきらは千空の様子を察してひらすら黙った。

(あきら…………)

千空はしゃがんだあきらの背後に座り込んだ。
泣く姿も聴かれるのも嫌とは全くめんどいやつである。
プライドが高くてみっともない姿を見せるのはカッコ悪いとでも思ってるんだろう。

でも、そんな千空が好きなのだ。そしてほっとけない。
数分間そのままの姿勢で千空は一言も言わずにただじっとしていた。
そして、すっと千空はあきらから離れた。

「帰るか」

「うん」

腰に手を当てて笑みを浮かべたいつも通りの千空を見てあきらは安堵し笑った。