千空は燃えた調味料のつぼの底から何かをとってきた。

それは糖の結晶だ。

金狼、銀狼の二人係でわたあめ機についた紐を交互に引っ張り高速で回転させる。

あきらは懐かしい甘い匂いに夏祭りの記憶を蘇らせた。

千空がくるくると小枝にわたあめを纏わせた。

とりあえずはわたあめを食した事のない村人に順番に手渡していった。

ふわふわの物体を口に含むと。

コハク、ルリ、スイカは衝撃のあまり喜びの声を上げた。

甘い物は苦手な部類はあれどわたあめという糖そのものは有無を言わさぬ理屈を越えた脳を揺るがす快楽だった。

ゲンが火事で材料を作ってくれたほむらに感謝だねと言うと千空はほむらと聞いてある事を言った。

「ゲン
ほむらっつうのはどういうタイプの女か分かるか」

千空が他の女子の事を聞いているだけなのに胸がざわつく。

(どういう意図なの？？)

銀狼はすぐさま反応し肘でグリグリしてからかったが、クロムとコハクは否定した。

「いやそういう話じゃねぇと思うぞ」

「君らは千空を知らなさすぎる
……まぁ、千空はタイプとかそういうのではないだろう？？」

「好きになった人がタイプとかでしょ？
千空ちゃん？？」

「えっ、どういう事？？」

思わず聞いてしまったが、千空は話題をそらした。

「あのほむらっつう女に今も監視されてんだよ
遠く離れたとこでな」

(監視……)

それはこちらの行動が筒抜けという事だ。

「詳細はわかんねぇだろうが、大きな事が起これば向こうにバレちまう
例えば大人数で移動……とかな」

銀狼はいざとなったら逃げようと思っていたが、不可能と知り苦い顔をした。

冬備えや老人の面も考えてコクヨウは逃亡など無謀だと言いコハクも賛成した。

ゲンが言うにはほむらは絶対的な氷月信者であり、命令はきっちり守り。

そして監視だけで特に害を及ぼす事はないが、裏切るのは難しいと言う。

そして、何と千空は金狼、銀狼を引き連れほむらにわたあめをプレゼントしにいった。

「甘味で敵を揺さぶるつもり？」

「そうだ、ほむらを通じて帝国にわたあめの話が伝わりゃ揺らぐやつが出るかもな」

ほくそ笑む千空に周りは相変わらず思考がゲスいと言った。

「もちろん、戦略的な意味もあるのでしょうけれど
きっと……」

ルリはせっかく作ったからおすそわけなんじゃないかと千空に聞こえないように言う。

「千空は……優しいからね」

あきらは少し悲しそうに呟いた。