(呼吸を整えろ……！！)

千空は60秒と言ったがそれはあくまで理想値だ、水面が波うてば秒数も変わる。

後はクロム次第だ。

(勝って……ルリを救う……！！)

千空の科学、ゲンのマジック、クロムの執念。

三人の力が合わさり、光はそこに火を点す。

チリリと焦げるような音がしてマグマは何だと言った。


「はたけ」

千空の言う通りマグマはパンパンと服を叩くと一気に全身に火が燃え広がった。

マグマは慌てたがクロムは人殺しはする気はねぇとマグマに近寄る。

そして、マグマの急所をつきその衝撃でマグマは湖へと落ちていった。

選手の退場……つまり。

「勝者！！！クロム！！！」

クロムの勝ちかつ科学王国側の勝利が
決まった。

王国民はクロムの健闘を称え喜んだ。

「じゃあ、俺はひとまず村から出とくね」

御前試合のお祭り騒ぎを利用し潜り込んだとはいえよそ者である自分がいたら
金狼の立場が危うくなると踏んでゲンは村を後にした。

ゲンは別の用件で村を訪れたが、それは後日という事になった。

クロムが勝利し活気づいた村を見つつルリは銀狼にこそっと優勝はクロムになると伝えた。

ルリがクロムの事を思っているのは分かっていると銀狼は言う。

(クロム…………)

本当はクロムと一緒になりたいと言いたい。

しかし、後ろに父が見ていた。

「いえ、私にはそのような恣意はありません
あくまで神の御前
御前試合の優勝者と……」

想いを封じ形だけの言葉を告げる。

しかし、銀狼はん？と首を傾げた。

「えっ、じゃあ、相手は誰でもいいって事？？」

「えっ？は、はい……」

銀狼はあろうことか自分が長になってもいいのだと勘違いしてしまった。