謀略だらけの御前試合で銀狼は色々顔面が酷い有り様になっていたものの、何とかアルゴに勝利した。

しかし、急にお腹を押さえたかと思うとものすごいスピードで茂みの中へと入っていった。

何だろう、何となく様子を見ないようがいいような気がしてあきらは茂みから距離をとった。

原因は材料を生で食べていたのと大量に摂取による腹痛だ。

「もう、銀狼元気ないんだよ……」

下痢で体力を使い果たした銀狼にはもうマグマと戦う力はないだろう。

「ん？ってなると……」

あと残っているのは千空、クロムの二人しかいないではないか。

「どうするの、千空」

ぶっちゃけ戦闘に期待出来る面々はいないのだが、千空は何か策を取っているのだろうか。

千空もクロムもマグマに太刀打ち出来るとは思えない。

「…………、そうだな」

どうシュミレーションしても千空自身もマグマに勝つ勝算など見込めなかった。

「おう、気にすんな！！
マグマはこの天才科学使いのクロムがぶっ倒すから何の心配もいらねぇよ」

「クロム……」

コハクが心配そうにクロムを見る。

(マグマに勝って…………
ルリを救うんだ……！！)

クロムは一番奥で試合の様子をはらはら見守っているルリに誓う。

(ぜってーー勝つからな、ルリ！)


(クロム…………)

村に太鼓のような大きい音が響き渡る。

「準決勝！マグマ対クロム！！」

クロムは後ろにいるルリを少し振り返った。

マグマを決勝に進ませたらルリも科学王国の
未来もなくなってしまう。

ここで、クロムが勝つ以外に選択肢は、ない。

ルリはクロムの視線を感じそっと彼の無事を
祈った。