(何か話してる……？？)

おにぎり頭のような容姿をした村の男と千空、クロムが話している。

いかんせん橋から遠いので会話が聞き取れないが、雰囲気から察して
あまりよい状態とは言えないだろう。

そこにコハクが加わり数分間話し込んだ後、
凄まじいスピードでコハクが村の外に向かって走り始めた。

「あきら！！コハク止めろ！！」

「えっ！？」

止めろって言ったって……。

とりあえず両腕を広げてコハクの行く手を塞ごうとしたが、コハクは高くジャンプして軽々メクルクルを飛び越してしまった。

「すまない！！あきら！説明は千空に聞いてくれ！！」

橋を走って千空が息を切らして渡ってきた。

「っ、無理だったか」

「何かあったの？」

コハクの様子からしてただならぬ事態が起きたと予想はしていたが。

「さっきやってきた男……マントルつーんだが
そいつが言うにはスイカが溺れている所を見たってな」

…………！。ドーピングの材料を採りに向かうのはあきらも見ていた。

「それ……本当？」

「嘘に決まってんだろ、コハクを出場させないようについた出任せだ
だが…………」

千空の読みではスイカは溺れていない事は確かだが、何らかの妨害に合っている事は間違いない。

それを聞いてコハクは万が一にも本当の事だったら……と心配してスイカを探しに行ってしまった。

「このまま、俺とコハクの試合で間に合わないようだったら不戦勝で俺が勝つことになっちまう」

「流石に私が代わりに出る訳にはいかないよね」

村のルールは以外と厳しく僅かに遅れていようが問答無用だ。

「コハクにあきらに任せたらどうだって言ったんだけどよお、あきらでは駄目だってよ。」

「クロム」

でも、コハクの言う事は分かる。

昨日来たばかりの私はこの村周辺の地理には疎い。

スピードや諸々を考えてもコハクが良いだろう。
「もう行っちまったんならしょうがねぇ
そろそろ金狼とマグマの試合が始まる」

この試合の結果によって科学王国の、
いや、一人の人間の命の運命が決める事になるのだ。