千空が村にやってきて数ヶ月始めて村に下り立つ日が来た。


出場資格を持っていないあきらは当然橋の外で待機だ。

千空が橋に足を踏み入れようとした時にあきらが服を引っ張った。

「あ“？何だ、勝てるかどうか心配か？」

「いや、それはないけど」

ないのかよ、と千空は思ったが自分に戦力はないので納得した。

(じゃあ、何で引っ張ってーー)

「怪我……怪我だけはしないでね？」

(そーゆーこったか)

千空は小指を差し出して言った。

「指切り拳万だ、無事に帰ってくるから待ってやがれ」

「うん」

指切った。

じゃあ、行ってくると千空を橋のむこうから見送った。


(何も出来ないのがもどかしいな……)

だが、入るなと言われている以上その掟を破る事は出来ない。

と思ったらあっさり帰ってきた。

「あれ？もう終わり？」

「違ぇ、さっきのはトーナメントの確認だ、何だが……」

やけに全員暗い顔をしている。

「俺らの狙いは妨害で疲弊しきったマグマを……本命の金狼が決勝で倒す……と踏んでいたんだが……」

千空は頭を抱えてどうしてこうなった、と唸る。

「その本命の金狼とマグマがいきなり一回戦で当たってしまったのだ」

「あちゃーー」

これは分が悪い、めちゃくちゃ悪いパターンじゃないか。

「運が悪いというか何というか……
そういえば、千空神社で凶引いてたっけ」

「何年前の事引っ張り出してきやがんだ
そもそも俺は科学者だ、おみくじなんか当てにしねぇよ」

まぁ理にはかなっているけど。

「って言ってさあ、凶引いたら引いたで落ち込む癖に」

薄ら笑いをするあきらに千空は余計なお世話だと笑った。

「さて、おちおち落ち込んでられねぇぞ
勝つためには……ドーピングだ！！！」

まーた、気が遠くなるワードが…………。

でも、中身は至って自然の植物などを使っていて特に危険性はないらしい。

が、しかし、金狼が飲むはずだったドーピングを何故か銀狼が全て飲み干してしまった。

当然金狼は怒り銀狼の頭にでかいたんこぶが出来る。

「だってぇ………金狼が負けたらさあ……！
僕が戦うになるんだよぉ！？」

だからと言って何も材料まで食わなくてもとクロムは呆れた。

「あ、その草スイカ生えてるとこ知ってるんだよ！！」

ハイハイと手を上げ自分が採りにいくとスイカは張り切った。

そしてごろごろ転がるスイカを誰かが見ている事は誰も知らない。