「それと……」

コハクは村の方向を指差す。

「先ほど君にちょっかいを出した男がいるだろう？
黒髪の方が金狼、私と同じ髪をしたやつが銀狼という
二人は兄弟でな、村に部外者が入らぬよう門番を任されている」

倉庫の方からは橋は見えないが、見張っているらしい。

「すまない、こればかりは村の掟でな
銀狼はともかく金狼は頭が固い」

やれやれとコハクは首を横に振った。

「後はカセキじーさんだけどよ……
まぁ、それは明日でいいだろ」

クロムは日中の行動で腹を空かしそろそろ焼けそうな魚を食いたがっている。

「そうだな、いい焼け具合だ
食べながらここで何してんのか、話すが……
全部話す時間はねぇ、手短に話すぞ」

千空に渡された焼き魚を手にしてあきらは頷いた。

「まず、俺と司だが……敵対しているのは分かってるな？」

「司が言うには思想の違いって言ってけど」

人類を全員救いたい千空と思想が別れ敵対するのは概ね分かっている。

「で、今俺は死んでる……と思わせているわけだが、司を止める以上
科学を発展させる必要がある
それには人手が必要だ」

「それでこの村に？もう皆味方なの？」

千空は否定する。

「クロムやコハク達は一員だがな
まだ村全体ではねぇ
いずれ村ごと頂くがな」

クククとほくそ笑む千空だが、何か悪役にしか見えない。

魚を頬張りながら千空の話に耳を傾ける。

何とも素朴な味だ。

かつて自分の祖先はこういう食事をしていたのだろうか。

「村を頂く手段だがな……
この村の巫女、ルリっていう女がいる
コハクの姉だ」

千空は目線でコハクに話を振った。

「ん、ああ、姉者はな昔から病を患っていてな……
千空に教わって今は薬作りをしている最中だ」

「抗生物質…病原菌をぶっ潰す薬を飲ましてルリを治し……それで俺たちは一躍救世主になるーつー事だ」

ああ、助ける代わりに味方になれ、とのことらしい。

「っと、もうこんな時間か」

千空は夜空を見上げて呟いた。

時計がないから正しい時間は分からないが、千空は星空を見て分かるらしい。

「そろそろ寝るか……」

火を消した千空にコハクが声をかけた。
「待て、あきらはどうするのだ
私の家では寝かせられんぞ」

「あ」

どうする、私。