次の日、千空はツボにたまった硝酸を取るついでにあきらの石像の前まで一人で来ていた。


「よお、あきら、起きてっか？
まぁ、起きててもこっちの声は一切聞こえねぇだろうがな」


クククと懐かしむように千空は石像を見ながら、3700年と少し前の事を思い出した。



「あ？家庭教師をやってほしい？」

中学に入り日々科学の実験を繰り返していた千空は父に頼まれるや否や怪訝な顔をした。

「父さんの知りあいの子どもさんがな、理数系が駄目らしいんだよ
で、千空の事を時々話してたらな
お前に勉強見てやってほしいとさ」

(普通に塾行かせりゃいいのに、何で俺なんだ)

「家庭教師やるバイト代は払うらしいからどうだ？」

んーと千空は考え、OKした。

「…………ちょうどロケット代が足りなかったからな、週一でならいいぜ」

「そうか！！
じゃあ今度の日曜空けとけよ」

千空はああと返事をした。



「千空、前言ってた父さんの知りあいの五十嵐と、その娘さんのあきらちゃんだ」

父に紹介された千空は口をあんぐりと空けて、驚いた。


(じょ、女子じゃねえか！！！！)


「ほら、あきら挨拶しなさい」

「……五十嵐あきらです
突然ですが、教わらなくても困らないので家庭教師の件は結構です。」

そう言った後、あきらが急に帰ろうとするのを慌てて父親が止めた。

「あきら！！いい加減にしなさい！
困らないわけないだろう！
すまない、娘が勝手に……」

全くやけに素直だなと思ったらこれか！とあきらの父親は憤慨している。

「じゃあ、聞くけどこれから先、理科とか学んで訳に立つの？？」

あきらの父親はうっと返答に困った。
勉強しろと言いながら自分も文系かつ剣道家である為、人の事が言えないのだ。

「科学は嫌いか？」

ずっと沈黙していた千空が口を開いた。

「そりゃあ、もちろん、難しい事だらけだし……」

キライな物はキライと、あきらはそっぽを向いた。

（こりゃあ、また難癖ありそうなやつだな）
「ククク、なら………………」

「なら、俺がキライを好きに変えてやるよ、
そそるぜこれは」