「あきらちゃん、ちょっと話してもいいかな？」

あきらは突如話しかけてきた男に対し睨みつけた。


「誰？」

「やだな～～俺だよ、前一緒に共演したでしょ？」

あさぎりゲンと名乗られあきらはとある番組の出来事を思い出した。

「ああ、あの時の…」



番組の休憩中たまたま近くにいたあきらにゲンが話しかけたのだが、集中していたあきらに話しかけるなと一喝されたのである。

「いや、その時はごめんね？つい可愛い子が近くにいたから話しかけちゃってさー」

謝るゲンを見て流石に悪いと思ったのかあきなも誤った。

「こっちもピリピリしてたとは言えごめんなさい、…あの、何か用？」

「ああ、そうこっちの用件忘れるとこだった、あきらちゃん最近痩せたでしょ？」

図星だ、確かに最近色々と悩んでいてあまり食欲がなく食べる量も少なくなっていた。

痩せてるというか、杠からはやつれてない？と今日方心配されたばかりである。


「周囲からも何か元気ないって聞いてるし、俺がカウンセリングしたらどうかって頼まれたんだよね」

司が指示したのだろうか、とは言え今抱えてる物を話した所で何か変わるとは思えないとあきらは思った。

「…余計なお世話、カウンセリングなんて要らないから」

その場を離れようとしたあきらだったがゲンに手を掴まれた。


「そんな事言わずにさ。ちょっとだけでいいから」


無理やり離そうとすれば出来たのだが、解く気力も湧かないほどあきらは本当に疲れていた。

「ちょっとだけなら」

「じゃあ、あっちで話そうか」

あまり人気がない場所に誘導し移動した二人をたまたま通りかかった大樹含め、数人が見ていたのをゲンは横目で確認したがあきらは気づかなかった。

しばらく歩く事数分、あきらは気が付くと川の手前に来ていた。


「立話も何だからそこの岩でも座って話そうか？」

あきらはゲンと距離を取って座ろうとしたが、何故かゲンはぴったりくっついて側に座った。

近い。

無言の圧力をかけるとゲンは申し訳なさそうにした。

「いやあねぇ？
カウンセリングってのはこう近くで話した方がいいからさ～」

あきらはほんとなんだろうか、と怪しみつつ自分は詳しくないのであまり突っ込めなかった。

「じゃあ、本題に入るけど……
あきらちゃん大切な人を無くしたばっかりで辛いでしょ？
俺が解決法を教えてあげようと思ってさ」

ゲンはあきらにだけ聞こえるよう声を小さくし言うとあきら
は驚愕した。

(何でそれを知ってるの……？)

どう考えても千空の事を言っているようにしか思えないが、そもそも千空との関係性を知っているのは大樹、杠と事の発端である司だけである。

周りの人には一切伝えていないから何故知っているのか分からない。

すると、ゲンはいきなりあきらの腰に手を回して耳に顔を近づけた。

「ーーーーー、でーーーーー」

「………………………………………………」


様子を伺っていたその他の人間たちは会話を聞こうとしたが、川の流れる音で全く聞こえず何を話しているのかはわからなかった。

すると、バチン！と音が鳴りあきらがゲンを平手打ちしているのが見えた。

あきらはサイテーと吐き捨てた後、眉間に皺を寄せその場を去っていった。


その様子を見ていた集団はゲンがカウンセリングついでに親しくなろうとしてこっぴどくフラれたーと受け取ったのをゲンは引っ張ったかれた頬を擦り心の中でほくそ笑んだ。