あきらが夜空を見上げていた頃、千空も星を眺めていた。

コハクに連れられ村にやってきてしばらく経つ。

クロムの科学倉庫で普段は寝泊まりしているが、眠れず星を眺めている最中だ。

現在ルリの病を治す為の抗生物質を作りだす為、動き足した所である。

が、夜は真っ暗闇のため何もすることがないので、クロム等に現代話を
するか星を眺めるくらいしか出来ない。


千空は、現代では決して見る事のない夜空を見てあきらを思う。

かつて明りが少ない地域に行って観察をしたことはあるが、石化後の何もなくなった世界の夜空には勝てるまい。

(そういや、いつかみせてやるって約束したな…)

今、あきらは何をしているのだろう、そもそも復活しているのか、
それすら千空には知る手段がない。

大樹、杠とは既に再開し(こないだ別れたばっかだが)、
まだあきらの声を聞いていない。

千空は石化前のあきらの姿と会話、あった出来事を頭の中で繰り返す。

(声が、聴きてえ)

ただ、そう思った。

名前を呼ばれたいとも思った。

早くーーと。

(くそ、記憶があいまいになっちまう)

千空は自分の脳などそんなに秀でていないと自覚している。

どんなに脳内でリピートしてようが薄れるものは薄れる。


千空は空に向かって手を伸ばす。

そしてぎゅっと手を握り締めた。

(まあ、こんなところで願っても叶わねーからな)

その為には村を味方につけねばならない、千空はそっと気持ちに蓋をして寝床についた。

せめてー夢の中で会えるよう、密かに思いながら。